ゆうきまさみが描くマンガ版『機動警察パトレイバー』は、1988年に連載がスタートしました。

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ゆうきまさみ

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『機動警察パトレイバー』は、メディアミックスを前提とした企画で、OVA、TVアニメ、劇場版などのアニメーション作品としても展開しており、マンガ版はそのひとつ。
だから原作でもコミカライズでもなく、「マンガ版」である、というのが、この作品の基本情報です。

アニメ『機動警察パトレイバー』は、いわゆる「巨大ロボットアニメ」と呼ばれるジャンルの作品です。
マンガ版は「ロボットアニメ」の世界観をコミックというフォーマットで表現した作品ということになるでしょう。

では連載がスタートした1988年において、その「ロボットアニメ」というものは、どういう存在感だったんでしょうか。
WIkipediaのアニメ年表と、私の子供時代のあやふやな記憶をたよりに、思い出してみましょう。

1988年放送のロボットアニメ


Wikipedia:1988年(昭和63年)のTVアニメ作品一覧

これを見る限り、「巨大ロボットアニメ」は、わずかに以下の作品のみです。
  • 『トランスフォーマー 超神マスターフォース』
  • 『魔神英雄伝ワタル』

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田中真弓、林原めぐみ 他

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しかも、二作品とも『機動戦士ガンダム』に代表されるような、俗にいう「リアルロボットアニメ」ではあありません。ターゲット層は、かなり低めの年齢層に設定されています。

ちなみに前年の1987年を見れば、『機甲戦記ドラグナー』が放送されています。
ただ、この作品を最後に『戦闘メカ ザブングル』、『聖戦士ダンバイン』、『機動戦士Ζガンダム』などを生んだ、名古屋テレビ土曜17:30~のリアルロボットアニメの流れは終了しています。

1988年をTVアニメという観点で見ると、「リアルロボットアニメ不在の年」だったんですね。

1988年のTV以外のロボットアニメ


では1988年のテレビアニメ以外のロボットアニメを見てみましょうか。
  • 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(映画)
  • 『New Story of Aura Battler DUNBINE』(OVA)
  • 『六神合体ゴッドマーズ 十七歳の伝説』(OVA)
  • 『トップをねらえ!』(OVA)
  • 『宇宙の戦士』(OVA)
  • 『機甲猟兵メロウリンク』(OVA)
  • 『機動警察パトレイバー』(OVA)

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冨永みーな、古川登志夫 他

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『機動警察パトレイバー』自身の初期OVAシリーズもここでスタートしています。

『ゴッドマーズ』や、正確にはパワードスーツの『宇宙の戦士』、主人公がロボットに乗らない『メロウリンク』を除外しても、『逆シャア』『トップ』『パトレイバー』と、なかなか充実したラインナップです。

OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)という形式も手伝って、TVアニメの『トランスフォーマー』や『ワタル』と違い、高めの年齢層がターゲットになっています。
関連の玩具ではなく、「映像」そのもの、さらにいえば「ロボットアニメ」というジャンルそのものに価値を感じて、ソフトを購入(レンタル)するような年齢層向けです。

こうして見ても、1988年の「リアルロボットアニメ」はすでに、TVアニメとして放送し、不特定多数の幅広い層が楽しむジャンルではどうやらなかったようですね。

1988年に生まれた、1998年の物語


TVアニメから「リアルロボットアニメ」が消える中、OVAを舞台にして展開されたのが、SFや特撮・アニメのパロディをふんだんに盛り込んだ『トップをねらえ!』。

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日髙のり子、佐久間レイ 他

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そして現実と地続きの世界に現れる、桜の代紋をつけたパトカーロボット『機動警察パトレイバー』。

いずれも、パロディ化したり、面白おかしさを追求してみたり、現実の風景に直結してみたり、豊かな遊び心でロボットアニメを相対化して、自らのジャンルに対して自己批評的でもあります。

両作品ともロボットアニメとしての魅力に満ち溢れているのですが、真正面からではなく、パロディ的な相対化、批評性を持ったアプローチでなされました。

それはOVAを見るような目の肥えたアニメファンのためでもあるでしょうし、リアルロボットがひととおりのバリエーション展開を終えてTVから消えたような時代に、作り手側がロボットものをするために必要なプロセスでもあったのでしょう。

例えばゲームで言えば、『ドラゴンクエスト』的な勇者による魔王討伐の物語が、まずはそのまま受け入れられ、のちに、ツッコミが入れられ、パロディにされ、解体され、「勇者と魔王」という要素で批評的に新しいゲーム(物語)が作られていく。
ジャンルの発展と消費の大きな流れという意味では、こういったものと似たような感じかな、と思います。

ともあれ、このような状況のもと、マンガ版『機動警察パトレイバー』は、1988年に連載をスタートしました。

物語の舞台は、アニメ版での「この物語はフィクションである。…が、10年後においては定かではない」が示すとおり、連載時より10年先の1998年。

それは現代の私たちから見て、15年以上過去の「近未来」の物語。

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ゆうき まさみ

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というわけでは、シリーズ企画として『機動警察パトレイバー』について、複数の記事を書いてみようと思います。今回はその第1回というか第0回に相当します。

普段は、うんざりする長文を何ヶ月かに1度書くのが、このブログのパターンですが、今回の『パトレイバー』シリーズ記事では、1つの作品キーワードに対して短文テキストを量産する形を取ります。

キーワードは、「泉野明」「篠原遊馬」などのキャラクターや、「第二小隊」「企画七課」などの組織、「イングラム」「グリフォン」といったレイバー(ロボット)など、『パトレイバー』の重要なものになるでしょう。

この企画は、psb1981さん(@takepon1979)との、Twitterでの『機動警察パトレイバー』話がベースになっています。

その時のやりとりをまとめたものはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061


当初はとりあえずツイートを整理して、いつものような長文でブログ記事に仕立て直すつもりでいましたが、このTogetterが想定以上に注目を集めてしまったこともあって、アプローチを変えてみることにしました。

ちなみに、psb1981さんはご自身のブログですでに、「作品キーワードに対する短文」形式で記事を多数書いていらっしゃいます。

カテジナ日記
http://tentative-psb1981.hatenablog.com/


※タイトルの通り、富野アニメ記事も大変刺激的で示唆に富んでいますのでご覧になるとよいでしょう。

見て頂くと分かる通り、まあ詰まるところ、「作品キーワードに対する短文」形式は先行するpsb1981さんの後追いなわけです。これ。こういうのやりたい。

だが、考えてみて欲しい。まったく同じキーワードに対して、複数人がテキストを書くことによって、ひとつのキーワードに異なった視点や情報の厚みのような価値がつくりだせないだろうか。

例えば最初の記事として、psb1981さんは「時代背景」として、当時の日本の社会状況について書いていらっしゃいます。

パトレイバーの時代背景(カテジナ日記)
http://tentative-psb1981.hatenablog.com/entry/2015/04/03/233435


そこで(後追いの)私は、当時の「ロボットアニメ」がどうだったのか?という時代背景について、ほんの触り程度ですが書いてみました。

調べようと思えばどれだけでも調べられてしまうので、今回のテーマは短文だということで割り切ってはいるのですが。
実際、他にも、1988年の「週刊少年サンデー」の状況と『パトレイバー』の登場や、作者ゆうきまさみのキャリアを中心にした当時の背景などさまざまな視点で書くことが可能でしょう。(私には書けないが)

あくまで私が書ける範囲ではありますが、後追いのフォーマットコピーでも別の視点から価値はあると信じて、色々書いていきたいと思います。
ただこういう形式で書いたことがないので、どうなるか私にも分からない。

たとえば今回の自分の文章を見直すと、圧倒的にいつものおふざけが足らないと感じる。
おふざけネタが見つからない、定まらない、という理由で、ほぼ完成したテキストを平気で1週間でも10日でも放置する私には正直落ち着かない。
だが、記事本数を増やすとなればそうも言っていられない。

正直、今回の記事、初回とはいえ、何も言ってないに等しいけどね。
中身の詰まった短文って難しいな……。シリーズトータルでなら価値を見出すことができるだろうか。

私にとっては、バビロンプロジェクトぐらい21世紀への挑戦ですが、昨日の夢が今日の希望、明日の現実であると信じて、一歩一歩着実に実を結ばせていこうと思います。

それでは次の記事へ、<つづく>

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シリーズ記事『機動警察パトレイバー』


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>


同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。

カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー

発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061
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