2014年末に見た映画ですが今なら、ネタバレも特に気にする必要もなさそうですし、戦争と殺しと死と、というのを考える意味では、面白い映画だったと思います。
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ガルパンコラボの特典ブルーレイディスクがつくそうなので、まさしくガールズ&ブラピ&パンツァー。
秋山殿が解説してくれるらしいですよ。戦車内の臓物を拾うところも解説して欲しい。
[ ガールズ&パンツァー 特典ブルーレイディスク ]
・ M4シャーマン in ガールズ&パンツァー
「ガールズ&パンツァー」のM4戦車とティーガーⅠ戦車の登場シーンを秋山優花里(中上育実)が解説
・ これが「フューリー号」のモデルになったM4A3E8戦車だ!
出演:中上育実(「ガールズ&パンツァー」秋山優花里役)、他
監修:浪江俊明(「FURY」日本語版監修)
協力:陸上自衛隊武器学校
・ 「ガールズ&パンツァー 劇場版」SPECIAL PV
それにしても我ながら最低な記事タイトルですが、大体あってる気もするので、このまま行きましょう。
富野アニメ記事ではないので、短め、軽め、推敲少なめネギ多めでまいります。
映画『フューリー』を見るまで
私は『フューリー』の監督デヴィッド・エアーの作品はこれまで一度も見たことがありませんでした。
そもそも戦争映画自体も、あまり見ることがありません。劇場まで出かけてならなおさら。
ではなぜ見たのか。
きっかけは父でした。ザクとは違う、うちの愚父です。
父は公開前後に『フューリー』のテレビCMを見る機会が何度もあり、この映画が気になったようです。
ただ映画のタイトルが覚えられなくて、いつも「あのー、あれ。戦車のやつ」とか言ってました。幼児か。
あまりに覚えられないので、しばらくすると「あのー、あれ。あの、戦車の……ええい『パットン大戦車軍団』ぐらい分かりやすいタイトルをつけろ!」とお怒り(フューリー)モードでした。
恐らく映画会社の方々は、短くてシンプルな英単語だし、原題と同じでグローバルだし、色々良かれと思ってこのタイトルにして下さってると思うのですが、うちの父のような高齢者は逆になじめないのかも知れないですね。
古い人間なので、原題『Frozen』を『アナと雪の女王』にしたみたいに、シンプル英単語は分かりやすい邦題にしてくれないとダメなんでしょう。(英単語+サブタイトルもダメ)
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父に合わせて邦題を付ける場合、『フューリー』→『激突!タイガー対シャーマン 怒りの砲弾』といったところでしょうか。かなり怒りのアフガン感が強めですが。
『ドイツ兵皆殺し戦車隊 怒りの進軍』でもいいか。……まちがってはない。
まてよ。ブラッド・ピットの名前とかけて、『ならず者戦車部隊 ブラッディウルフ』でもいいのでは。
アツイゼ、アツ(手記はここで途切れている)
ま、そんなこんなございまして、結局、父と2人で『フューリー』を見に行くことになりました。
ちなみに、父と2人だけで劇場で映画を見るのは生まれて初めてだったりします。
なおタイトル問題については、プラピがドイツ軍と戦う映画であると説明したところ、父の中で『フューラー(総統)』として記憶されてしまい、多分フューラー出ないけどな、と思いつつ、面倒なので当日までそのままにしておきました。
(EDか何かでチラッとだけ、記録映像みたいのが映った気がします)
映画『フューリー』について
デヴィッド・エアー監督・脚本による第二次世界大戦時代を描いた戦争ドラマ映画。
出演は、ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、ジョン・バーンサル、マイケル・ペーニャ、ジェイソン・アイザックス、スコット・イーストウッドなど。
本物のティーガー戦車を使って撮影がされたということで話題にもなった作品です。
あらすじ(公式サイトより)
1945年4月、戦車“フューリー”を駆るウォーダディー(ブラッド・ピット)のチームに、戦闘経験の一切ない新兵ノーマン(ローガン・ラーマン)が配置された。
新人のノーマンは、想像をはるかに超えた戦場の凄惨な現実を目の当たりにしていく。
やがて行く先々に隠れ潜むドイツ軍の奇襲を切り抜け進軍する“フューリー”の乗員たちは、世界最強の独・ティーガー戦車との死闘、さらには敵の精鋭部隊300人をたった5人で迎え撃つという、
絶望的なミッションに身を投じていくのだった……。
感想まえがき
それではここから見終わった後の感想です。
私は前述したようにデヴィッド・エアー監督を知らないし、歴史や戦争映画にも詳しくないし、ミリタリーの素養もありません。
なので、動くモノホンティーガーの価値などは全く分からないけれど、印象に残ってたことだけ書きます。
と言いますか、映画見てからかなり日も経っているのでディティールはとうに忘れましたよ。
今も覚えてるような大枠の話と、印象に残ってる場面の話だけにします。
ネタバレ成分は含まれますが、正直ネタバレがどうこうの物語では特に無いと思います。
激!フューリー一家
映画『フューリー』は、戦車「フューリー号」をホーム(家)とする、ほのぼのホームドラマでした。
ウォーダディ(戦争親父)ことブラッド・ピットが戦車長(家長)であり、乗員はその家族です。
プラピ一家は動く自宅に乗り、動くものを皆殺しにし、愛着のある自宅で死にます。
やっぱり死ぬときは、病院のベッドでなく、自宅で死にたいですもんね。
物語が始まったときにすでに死んでいるメンバーを含め、戦車の外で絶命するメンバーがおらず、みな自宅のベッドの上で生涯を終えるのは意図した演出だと思いますが、おかげで鉄のカンオケ感がすごい。
ひとり、戦車の外に出た時に実質的に命を絶たれる乗員がいますが、結局のところ、死亡確認はきっちりと自分の座席で行われるので徹底しています。
これは、フューリー一家の家訓でしょうね。
そんな戦車極道フューリー一家に、戦車に乗ったこともない新兵ノーマンが配属されます。
ファミリー的には一番下の息子ということになります。
人を殺したこともないノーマンですが、フューリー一家に入るための条件は「人を殺せること」なので、当然、戦争親父ブラピは飴とムチを使って人を殺す新人教育をしていきます。
効用には個人差がありますのでご注意ください
そして戦争映画に一人はいると思われる信心深いキャラクターは『フューリー』にも存在します。
それはシャイア・ラブーフ演じる砲撃手。あだ名はバイブル。ファミリー内での役割的にはお母さんです。
もちろん、聖書の引用なんかを要所要所でつぶやいてくれます。
これはつまりあれです。あれ。

サンシャイン「人殺しばっかりしてちゃ、胸やけしてしまって体に悪いぜ。間…間に聖書を読むんだ。そうすると聖書の成分が胸やけを防いでくれる。聖書以外の引用じゃその効果はないそうだ…。誰が最初に発見したかは知らねえが、スゲエ知恵だな」
基本的に戦争と人殺しのひどい場面ばかりの映画なので、聖書ネタは物語上の意味以上に、見ている観客の心のケアとして効果があると感じました。私はクリスチャンでも何でもないですが、それでも。
他のメンバーは、信心深いバイブルをからかったりもするのですが、実はこいつら全員、信心深かったりします。
それは、戦争狂に見えたウォーダディことブラピも例外ではないことが終盤明らかになります。
マシンが叫ぶ。狂った朝の光に似た。
地雷によって動けなくなったフューリー号。
せまりくるドイツ兵300名。任務遂行は無理と判断し、戦車を離れようとするメンバーたち。
しかしブラピは戦車から動こうとしません。
ブラピ「帰るんだったらさっさと帰れ! 僕はたとえ一人になってもここに残る!」
彼はエレーナと共に無謀な戦いをしようとするのだ。……エレー…ナ?
意外にも最初に同意したのは新兵ノーマン。そして結局、全員がブラピと共にこの七日間戦争を戦い抜くことを決意します。……七日……間……戦争?
さあ300人のドイツ軍と動けない戦車1台の戦いに突入です。
300人のスパルタ兵を相手にするよりは、まだ希望はある!
決戦前、ファミリーはまだニックネームのなかった新兵ノーマンにあだ名をつけます。
これで完全にフューリー・ファミリーとして認められたことになります。
ブラピ「お前はタイプが得意だったな、よし今日からお前の名前はマイコンだ」
石原良純じゃねーか。ファミリーといっても石原ファミリーの方じゃねーか。これはまるで、あれがあれじゃねーか。
というわけで、ノーマンのあだ名は、めでたく「マシーン」に決定です。
そしていよいよ最終決戦。
”マシーン”ノーマンは物語当初が嘘のように、バンバン撃ちまくって敵兵を殺し、味方も助けます。
ロボットだから、マシンだから。だけど分かるぜ、燃える友情。君と一緒にナチを撃つ。
まるで本当にキラーマシンのような戦闘機械になってしまったようにも思えるほどです。
実際、人を殺すぐらいなら死んだ方がマシだ!と全力で戦争を拒否していたノーマンはもうここにはいません。ウォーダディと戦場という、ウドより苦いコーヒーが、彼をキリコ・キュービィのような青年に変えてしまいました。
でも、マシンではなく”タイピスト”ノーマンのままだったら、ここまで生きてはいなかったでしょう。
それもまた事実。
だから「マシン」と名付けた、フューリー・ファミリーは本当に優しいよね。
あの名をもらうことによって、ノーマンは機械に徹して人殺しができるようになったのですから。
「マシン」の名付けは、一家のかわいいかわいい息子に向けた家族からの愛だと思う。
そんな”マシーン”ノーマンが、最後の最後に人間に戻って、この物語は終わります。
彼が人間に戻ることができたのは、敵もまた同じ人間だったからかも知れません。
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聖書と十字架は何を象徴しているのか
さて、以上が『フューリー』の感想でした。
ここまでを今読み返したら、「エレーナ」とか適当なこと書いてますが、大枠はこんな感じの映画だったと思います。こんな感じに見えたんだからしょうがないよね。
作品全体にあふれる聖書の引用と十字架のイメージ。
そして最後に命を賭けて守った十字路(クロスロード)。
というあたりで、ひとつ論評のテキストが書けるかも知れないですね。
いや、書けるでしょう。戦争・殺人と、キリスト教や救い、祈り、十字架みたいな切り口で。
でもね。正直いうと、この映画でそれをする意味は私はあまり無いんじゃないかと思っています。
サンシャインのアドバイスではないけれど、聖書や十字架は、この悲惨で楽しい戦争映画の中に、観念的な「芯」を通すための道具に過ぎないと思う。描きたいテーマではなく、描きたいもの支えるための道具。
それはファーストこと『機動戦士ガンダム』が、荒唐無稽のロボット宇宙戦争に「ニュータイプ」を使って、作品全体を通る観念的な骨組みを通そうとしたのと同じようなことのはず。
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これは道具にしかなっていないという批判でなく、むしろ私はそうであるべきだとすら思っています。
『フューリー』は別に、キリスト教や十字架や救いを描くために悲惨な戦車映画を作ったわけではないし、『機動戦士ガンダム』もニュータイプを描くために1年間テレビアニメが作られたわけでもない。
ひとつの作品を成立させるために、表層を支える何か観念的な背骨があった方がいいと思いますが、そこを読み取ってつかんだものは、作品の一端ではあるけれど、別にすべてではないはずです。
いや、そういうタイプの映画もあるかも知れない。けれど『フューリー』はそういうタイプではないと思います。
だから映画『フューリー』では、聖書や十字架に過剰な意味を見出すよりは、戦車の上でたわいもない話をしたあと、沈黙が訪れ、そして思い出し笑いのようになぜか全員が笑い出すところや、戦いの中で、酒も、女も、殺しもやりながら、精神状態がコロコロ変わっていくところを、そのまま見ればいいはずです。
そして戦車バトルを見ればいいのです。ワクワクして、手に汗握る戦車戦を。
群がるドイツ兵を機銃で一斉掃射するところを。
それは戦争とはいえ、もう悲惨な殺し合いです。
胸焼けするような人間の醜さです。
それを楽しんで見ている自分を含めてね。
多分、胸焼けしてキャベツが欲しくなるでしょう。
大丈夫。キャベツ(聖書)は用意してあります。
私は書きたいことを思いつくままに書いたので満足ですが、読まされた方はたまったものではない。
そのお気持ちは分かります。
そこで、伊藤悠さんのすばらしい『フューリー』感想をおすすめします。
「フューリー値のコントロール」という概念で見る映画『フューリー』は、大変刺激的で興味深いものです。特にラストの解釈には思わず、なるほど!とうなづきました。
ゲーマーならわかる! フューリーのネタバレ感想
http://d.hatena.ne.jp/ityou/20150113
こうして、すばらしい『フューリー』感想をご紹介することで、私へのフューリー値が下がるはず。
これもまたフューリー値のコントロールなのです。
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サンシャインのキャベツを
二度漬け厳禁!!のこのシーンはワタシも印象に遺っておりました。