前回はゲームを通じて富野作品を考えてみたわけですが、今回もちょっと趣向を変えたアプローチ。
富野アニメ作品自体ではなく、いかに自分が富野作品を体験していったか、その歴史を思い出しつつ書いてみたいと思います。
結局のところ、それは自分語りになるわけですが、富野作品、またはガンダムシリーズは数も多く、「どう富野体験をしてきたのか」で、同じ作品を語っても、思い入れやスタンスもさまざまに変わります。
このブログでは、富野作品についての言及が多いので、一度そのバックグラウンドを示しておくのも悪くないですし、たいしたことも書けない私にとっては、体験こそが自分が持つ唯一のオリジナリティと言えます。結局、私自身の体験を語るぐらいしか「私にしかできないこと」は無いんですよね。
ちなみに私は、富野アニメで産湯をつかう、と何度か書いているように、子供の頃から基本的には、順番どおり、リアルタイムで富野アニメを見てきました。
だから、「子供から大人になるまでの間に、順番どおりに富野アニメを見た」というのが私の武器であり、同時に限界です。
例えば「大人になってからファーストを見た」とか、「SEEDを見てから、ファーストを見た」という感想は、どうあがいても書けません。
だから、自分と違うルートや年齢で富野作品に関わった方の意見というのは、とても興味深いといつも思っています。
皆さんも自分とは違う富野体験プロフィールの例として、この記事をご覧いただき、そしてもし可能ならば、皆さん自身のプロフィールを書いていただければ、こんなにうれしいことはありません。私だけでは単なる自分語りですが、サンプルが色々あると比較もできて面白くなるはずです。「数だよ、アニキ!」と肩がトゲトゲの人も言ってました。
では、私の富野作品体験を<「私の履歴書」富野アニメのプロフィール>と題してお送りします。残念ながら日経新聞には掲載されませんので読めるのはここだけ。
やはりファーストガンダムの存在が大きいですが、あえて、ファーストを見る前の時代、つまり「ファースト前夜」からスタートさせましょう。
ファースト前夜
幼少のころは、完全に「仮面ライダー」と「ウルトラマン」大好きっ子でした。
アルバムを見れば一目瞭然。
いついかなる時でも、ライダーの変身ポーズか、ウルトラマンの光線ポーズで写真にうつっている。
あまりに全ての写真がそれなので、見てるとだんだん面白くなってくる。七五三だろうが正月だろうが関係なし。カメラを向けられれば、条件反射的にポーズをとっていた。
とはいえ、ポーズの種類はなかなか多彩だ。リアルタイムでは到底見ていないライダーやウルトラマンのポーズも色々やっている。
ビデオも無かったのに、こんな幼児がなぜ?
それは、変身ベルトや人形などのおもちゃではなく、ケイブンシャ大百科など本ばかりを好んで買っていたから。
母には「字もまだ読めないのに、ライダー大百科をねだり、買ってやるとそれで字を覚えた」と、のちに聞かされた。
つまり大百科の変身ポーズの図解などを見ながら、見たことないものも覚えたと思われる。
変身ベルトのおもちゃはいらない。ベルトの図解資料があればいいのだ。大百科があれば他に何にもいらなかった………(泣きながら)ご、ごめん。ぼく、うそついた。本当はおもちゃ欲しかった。でも、うち貧乏で、おもちゃ買ってもらえへんかった。でも本は安いしわりと買ってもらえたから。
わかった。もういい。君の気持ちは分かった。つらかったな。
前振りが長くなったが、この時期の富野アニメ体験。
『無敵超人ザンボット3』、『無敵鋼人ダイターン3』
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「ザンボット3」「ダイターン3」は、多少は見ていたんじゃないか。
でも当然、富野作品と認識もしていなかったし、そもそも、全話どころか30分きっちり見るような年齢でもなかった。つまり年齢的にも完全に富野体験前夜で、はじまりはやはりファーストになる。
はじめのファースト初体験
『機動戦士ガンダム』
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ファーストガンダムは、世代的に再放送で見たはずだ。
本放送も見れたはずだが「ザンボット」「ダイターン」のように部分的に見た程度のはず。
ファーストガンダムを見て、幼い私の世界は変わった。完全に変わった。
しかし、変わったことを記憶として、はっきり覚えているわけではない。
でも変化は一目瞭然。
なぜか?
なぜなら、ある時期を境にして、アルバムの写真から、ライダー変身ポーズと、ウルトラマンの光線ポーズが一切なくなったから。
多分、「ガンダムを知った今、ライダーポーズなんてしてらんねーよ。幼稚なポーズとはオサラバだ」と生意気に思ったんだろう。
これはもう面白いほど劇的に無くなっている。手の平を返したように。ああ、私はここでガンダムを見たんだな、とはっきり分かる。我ながら面白い。
ちなみに、変身ポーズ等は確かに無くなったけど、その代わりに、木の棒を構えて勇ましくうつっている写真が登場してくるんですけどね。
この子、完全にビームサーベルかまえてはるわあ。分かりやすい子供やわあ。
(変化してるだけで、全然、卒業してない)
私がガンダムのチャンバラにどれだけ夢中になったのかは、この記事にまとめてあります。
「ロボットチャンバラ」としてのガンダム<ビームサーベル戦闘論>
とにかく、ここが完全にターニングポイントになった。
こういう証拠もあって、恥ずかしいほどにそれは明らかだ。
ファースト以後
『伝説巨神イデオン』
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リアルタイムでは見てない。見たい見たくない以前に、うちでは放送が入らなかったと思う。
「イデオン」を見るのは、TVで、映画『The IDEON (伝説巨神イデオン)接触篇/発動篇』を放送したときなので、何年かあとだ。それでも小学生だった。
「発動篇」には強烈な衝撃を受けた。「デビルマン」(漫画版)と並んで、幼少期の二大トラウマ作品だと記憶している。
ちなみに「デビルマン」は、なぜか歯医者の待合室に置いてあるものを読んだ。テレビアニメのデビルマンはすでに知ってたはずなので、そのイメージで何も知らずに読んでしまった。
例のあたり(首祭り)を読むときには、なぜか待合室に私1人しかおらず、あまりに怖くなりすぎて、「ひ、人がいる所にいかねば!」と、まだ名前も呼ばれてないのに、診察室に入っていった。歯医者が大嫌いだった私がすすんで診察室に入ったことは、後にも先にもこの時だけ。
『戦闘メカ ザブングル』
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この頃から、多分、富野監督と認識して、自ら好んで見ていたはず。
よく遊んでくれた親戚のお兄ちゃんが、ガンダムとか好きで、アニメ雑誌も買っていた。それで「ザブングル」なども「ガンダム」を作った人の作品だという情報を仕入れたはず。
ちなみにこのお兄ちゃんはプラモもたくさん買っており、遊ぶ際にはこのプラモを使って、よく2人でプラモ狂四郎(プラモシミュレーション)ごっこをした。
兄ちゃんは、こんなだから当然、コミックボンボン派で、多分その影響から私もコミックボンボンを購読していた。当時は、コロコロコミックの方が人気があり主流派だった。だが、せっかくだから俺はこのボンボンを選ぶぜ。
もちろん、ガンダムがあるというだけが理由だ。それだけで十分な理由だった。
ちなみに「ザブングル」についても記事書いてますので、良かったらどうぞ。
惑星ゾラで生きるための、たったひとつのルール。<"異世界もの"としての戦闘メカ ザブングル>
『聖戦士ダンバイン』
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「ダンバイン」については、このブログではいろいろ書いたので、あまり書くことがない。全滅初体験作品。そのあたりについては以下の記事で。
なぜショウ・ザマはバイストン・ウェルで眠ってしまったのか <『聖戦士ダンバイン』に見る物語の始め方>
あ!そういえば、ザブンブルとダンバインは本編が始まる前にもアイキャッチが入るのですが、あれは誰のアイデアなんでしょう?数秒のアイキャッチで一気に作品世界へ連れて行ってくれる良い趣向で、すごく好きでした。のちの富野作品はもちろん、他のアニメもなぜあれをやらないのかなと思っていたのですが。結果的には、この二作品が例外でしたね。
『重戦機エルガイム』
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ガウ・ハ・レッシィが好きだった。多分、二次元に対する初恋はレッシィじゃないかな。
ただねえ、同じぐらいバスターランチャーが好きだった。どっちが好き?と聞かれたら、気分次第で「ばすたーらんちゃー!」と答えるほどに、女の子と武器が等価だった。
でっかい棒状のものは全てバスターランチャーとして、ごっこ遊びに使った。問題は、私の体にランチャーのコードを刺すプラグが無かったことぐらいだ。
はじめての、ぼくらの「ガンダム」
『機動戦士Ζガンダム』
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Zガンダムがはじまる、というのを知ったときの衝撃と喜びは未だに覚えている。
新作のニュースにあれほどこころ踊ったのは、Z以外には、のちの「エヴァンゲリオン」があるだけ。自分にとってはそれほどのビッグニュースだった。
「Zガンダム」がはじまることが、なぜそんなにうれしかったのか?
それは、はじめての、ぼくらの「ガンダム」だったからだ。
「ファーストガンダム」は(再放送ではあるが)ほぼリアルタイムの「ガンダム」ブームで見たとはいえ、あれはやっぱり自分よりひとつ上の世代のものだった。
「トライダーG7」や「ダイオージャ」は、ぼくらのものかも知れないが、「ガンダム」はぼくらのものじゃない。その違いは幼くても感じていた。
だが「Zガンダム」はちがう。ぼくが、はじめて自覚的に、リアルタイムで追っていく「ガンダム」だ。
ガトーは3年程度待ったかも知れないが、私は6年ほど待ったのだ。そして、ついに自分たちのものといえる「ガンダム」がやってきた!
そしてはじまったZガンダム第一話「黒いガンダム」を見た時のうれしさと驚き。
ファーストガンダムと全く同じシチュエーションで全てがその逆だ!視点はシャア側だし、ガンダムは黒いし、ガンダムに乗り込んだ少年はコロニーに潜入した敵を倒すどころか、ついていってしまうし。(アムロがザクを倒さずに、そのままガンダムを手土産にシャアのムサイの所に行ってしまったようなもの)
第一話は、ファースト第一話が体に染みついていた子供の私には強烈に面白かった。
逆パターンということは、このままシャアが腐りきった連邦をぶっつぶして、宇宙世紀をガラッと変えてくれる。そんな「シャアの逆襲」話になるかも?と思っていた。
その後はまあ、ご存じの展開で、自分たちのガンダムになると意気込んでいた私にとっては、肩透かしをくらったような形だった。
なんだかんだいって最後まで見たけれど、ぼくらの「ガンダム」という感じにはどうしてもならなかった。
ベースになる目線がおっさん寄りというか、ファーストより上になっていて、それも私のような子供を困惑させた。
だって、みんなにうざがられているカツよりも、見ている私はさらに年下だったもの。
カツは確かに青臭いのだが、カツが批判する大人たちやアムロやクワトロが煮え切らないのは確か。
でも子供は子供だって言われるし、かといって大人達もぐだぐだしていた。あれ?シャアの逆襲は?大人になったカッコいいアムロは?彼らにあこがれた子供たち(カツや私)は?
つまりは「そんなもんだろう(シャ乱Q)」ということを見せられたわけだけど、それを「まあ、そうだよね」と、相槌うつには私は子供すぎた。
だから結局、「Zガンダム」は残念ながら、ぼくらの「ガンダム」にはならなかった。
多分、この辺りは「大人になってからZを見た」とか「カツの年齢を越えてからZを見た」などで変わってくるんじゃないかな。
正直、私にはカツを「うざい」「子供のくせに」「何にも分かってない」「才能ないのに余計なことするな」みたいに、単純にバカにしては見れない。
だって、私はガンダム見て、アムロにあこがれて、木の棒をビームサーベルに見立てて写真に写ってた子供だよ?
連邦は腐りきってるからつぶすべき。シャアがそれをやってくれるからついていこう、と喜んでた子供だよ?
カツと何が違うの?
ダメだ。この調子で書いてたら、長くなりすぎて、全作品を記事一つにまとめるのはとても不可能だ。
(というか、今読み返してみたら、富野作品と直接関係ない話ばっかりだ)
不本意ながら、記事を前後篇に分けさせていただこう。前編は「Zガンダム」まで……いや、もう一つやってしまおう。
『機動戦士ガンダムΖΖ』
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シリーズ後半から、習い事に通いだし、見なく(見れなく)なりました。
ガンダムが見れなくなるような習い事に行く、というただ1点でZZとの関わり方が分かるというものです。今までだったら絶対にそんなことはしなかった。
ZZは打って変わって、子供達が好き放題して、大人たちをギャフンと言わすのですが、Zガンダムを見てきた私にはその露骨な路線変更が、子供(自分)に媚を売られているようで、イヤだった。
要するに、ZもZZもどっちも極端だったのだ。子供の私には。
結局、ZZの後半を見るのは、後年、再放送でということになる。
ということで、今回はここまで。
次回は【後篇】として、「逆襲のシャア」とそれ以降をお送りする予定です。
【発動編】できました!
アムロとシャアの子供たち。<「私の履歴書」富野アニメ体験プロフィール【後編】>
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Re: ファーストガンダムによるアルバム革命<「私の履歴書」冨野アニメ体験プロフィール【前編】>
とても面白いですね。私も思わず真似したくなりますが、自分はTOMMYさんほど明瞭な視聴履歴が残っておらず、結構飛び飛びして見てるわけですから、当時の視聴者かつ全視聴経験を持ってらっしゃる方の話は自分にとってとても貴重ですよ。『逆襲のシャア』以後の話も期待しております。
あと、記事のタイトルは「冨野」になってますよ、一応。
Re: Re: ファーストガンダムによるアルバム革命<「私の履歴書」冨野アニメ体験プロフィール【前編】>
> とても面白いですね。私も思わず真似したくなりますが、自分はTOMMYさんほど明瞭な視聴履歴が残っておらず、結構飛び飛びして見てるわけですから、当時の視聴者かつ全視聴経験を持ってらっしゃる方の話は自分にとってとても貴重ですよ。『逆襲のシャア』以後の話も期待しております。
いえいえ、kaito2198さんは、あれほど記事を書かれておいでですから、改めて記事にまとめなくとも富野作品との関わりは良く分かります。
私のは、明瞭な視聴履歴というか、純粋に成長するにしたがって順番に見ただけなので、覚えやすいし、振り返りやすいというだけのことで(笑)。
どちらかというと私には想像もつかない順番や年齢でガンダムを見た人の話が聞いてみたいかも知れません。初めて見たのが逆襲のシャアでさかのぼってファースト見たとか、初めてがGガンダムとか、SEEDとか。
> あと、記事のタイトルは「冨野」になってますよ、一応。
すみません!あわてて修正しました。最近、PC環境が変わったせいで、信じられない変換ミスしています。ご指摘ありがとうございました。
「カツの年齢を越えてからZを見た」
て、アナタ28歳やん!まだまだ若いやん!アンタもっとやれるやん!いや、やらんきゃイケナイやん! と思ってたのですが、自分が25~27くらいになって若い世代に無限の可能性や希望を託し出していて愕然としたものです。世の中の不条理や個人の出来る事の限界。体制に組み込まれてしまったのを自覚してしまったのでしょうね。
て、諸々含めてZはワタシは1番好きな作品です。張り合うとすれば逆シャア。(しかし、ここのブログを読んでZZの意義の深さを再確認しました。もしかしたら冨野本人よりも意義を見出してるんじゃありませんか??新訳ZZ制作してくださる事を期待しております。)
Re: 「カツの年齢を越えてからZを見た」
ZとZZの振れ幅が大きかったのもあって、ZZの意義について消化できたのはやはり大きくなってからです。
まあ、意義と作品そのものの面白さは別なのですが。