あけましておめでとうございます。

このエントリは、2016年最初の記事として、このような新年のあいさつからはじめようと思って、正月明けぐらいに記事のほぼ全文を用意してたんですが、先日突発的に「月の繭」に関する記事を書いてしまいました。

「MOON」から「月の繭」へ 菅野よう子から井荻麟へ <『∀ガンダム』が第1話から最終回までに獲得したもの>

これが書けたことは幸いでしたが、その代わり、順番が入れ違いになってしまいました。
一応、挨拶の機会もないですし、冒頭のあけおめ残しておいたけど、さすがにもう違和感がすごい。

さて、この記事は当ブログ1年間の記事を紹介する、毎年恒例のまとめ2015年版です。
これまで忙しい年末にがんばって公開していましたが、昨年2014年版はさぼって年明けに公開したところ、「アラ、いいですね」の波が何度も押し寄せて来てしまい、今年も年明けということになってしまいました。

2015年に書いた記事数は、11本。
久しぶりに二桁いった気がしますが、かといってセレクトするような数でもないので、全て紹介します。
記事数は少ないですが、熟練の職人が心を込めて、ひとつひとつ手作りしております。
柔らかな口当たりと、ほのかな甘味をお楽しみください。




2015年唯一の富野アニメ関連記事


当ブログは特に専門的なテーマのない雑多なブログですが、メインコンテンツは富野由悠季監督のアニメーション作品に関する記事になるでしょうか。
ところが振り返ってみたら、2015年は1つしか記事書いてない!

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ベルリの前に広がる日本海に『キングゲイナー2』を幻視する <グレートメカニックG「富野由悠季 G-レコを語る」1万字インタビューより>

『Gレコ』放送終了後の富野監督インタビューを元にした記事。
結構アクセスとブックマークを頂きましたが、私の記事が、というより、富野監督の発言に注目が集まった感じでしょうね。
ただ、私はこれを書きながら、いくつか宿題というか、課題のようなものに気づかされたように感じました。(まあ、それを素直に書くかどうかは別問題なんですけれど)

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『Gレコ』は、この後、総集編劇場版が進行中であると聞きます。
このインタビューで登場したポイントがどうなっているのか期待したいですね。

マンガ版『機動警察パトレイバー』を読みなおそう!


2015年は、マンガ版『機動警察パトレイバー』を15年ぶりぐらいに読み直し、そして記事を書き始めた年、ということになるでしょう。


もともとシリーズ記事どころか、ブログにするつもりすらなく、きっかけは『パトレイバー』についてのツイートでした。起点はこれ。


その後、psb1981( @takepon1979 )さんと長い雑談になり、色々と興味深いトピックが生まれてきたので、「アラ、いいですね」の波が何度も押し寄せてきて、これはブログにでもまとめないと、もったいないなという誘惑に負けてしまいました。

記事の一覧


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>

第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>

第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>

第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>

第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>

以上の5記事を書きましたが、シリーズは終わっていませんので、2016年も引き続き『パトレイバー』記事は書きます。

順番的には、このあと「後藤喜一」について書かなくてはならないのですが、彼については優れた言説がネット上にすでに数多くあります。ですからその存在を踏まえた上で、少しひねった形で書く必要があるかな、と考えてはいます。

ただ、ツイートで全て吐き出した時点で、自分の中で一旦終わってるので、再度モチベーションを上げ直して、ひとつの記事にまとめる、というのはそれなりにしんどかったりします。

とはいえ、自分でも満足している熊耳さんの記事などは、改めて考え直すことで到達できたので、やっぱり必要な過程ではあるんですよね……。『パトレイバー』のことを考えるだけで、口座にお金が振り込まれる世界へ行きたい。そんなバビロンを目指すプロジェクトは2016年も続きます。ああ、約束の土地へ、どうぞ導いて。

『機動警察パトレイバー』記事が一覧できる目次ページも作りましたので、宜しければご覧ください。

【目次】『機動警察パトレイバー』記事インデックス

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細田守監督作品『バケモノの子』


映画『バケモノの子』は、2015年7月に公開された細田守監督の最新作。

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この作品についても全く記事を書く予定ではなかったのに、結果的に3本も書いてしまいました。
映画自体は、公開後まもなく劇場で見て、感想ツイートを少しして、psb1981( @takepon1979 )さんと色々雑談して、で終わるはずでした。

それから3ヶ月ほどのち、10月に入って坂井哲也(@sakaitetsu )さんが『バケモノの子』をご覧になって、あれこれとお話をしました。


こうしてTwitter上で面白い話が色々と集まってしまったため、「アラ、いいですね」の波がまた何度も押し寄せてきて、これはブログにまとめないともったいないな、の精神により、以下の3本の記事を書く結果を招いてしまいました。

子育て西遊記 in ケモ街diary <映画『バケモノの子』と中島敦『わが西遊記』>

これは作品のモチーフのひとつ、中島敦『わが西遊記』から見る、子育て西遊記としての『バケモノの子』のおはなし。
それは私が昔から見たかったものでした。

東京都渋谷区「刀乱舞る -とらぶる- ダークネス」事件<映画『バケモノの子』の「父子」と「普通」について>

こちらは、がっつり長文感想。でも映画のレビューじゃないですね。
細田映画の風物詩「モヤモヤ」を中心に、鑑賞後に物語について色々考えたことをメモしたもので、いわば思考のはらわたのようなものです。
作品についてのツッコミも色々しています。
特に大きいのは、記事タイトルにあるとおり、「父と子」の戦いと、「普通」ってなに?という2つでしょうか。

『バケモノの子』の不正な.zipを解凍して見えてくるもの <映画『バケモノの子』と子供の危機にいない父>

前記事とは全く逆に「親子げんかもせず、熊徹と九太が一体化する」という展開は、この映画にとって正しいものであった、というスタンスで、作品を考えていきます。
そこで注目されるのが、この作品に登場する、もうひとりの父親。

この3本目の記事は、個人的には、2015年に書いた中では熊耳さん記事と並んで、よく書けたかな、と自信を持っています。
時期ハズレなこともあって、全く注目されませんでしたけどね。
そもそも『バケモノの子』自体が、50憶以上のヒット作のわりには、これまでのような賛否両論の議論が起きていないというか、話題力があまり無いんですよね。荒れてないといいますか。
でも、モヤモヤ成分はこれまでと同じくらい含まれていると思うんですけどね。

細田映画は金曜ロードショーでリピートされるようになってからが本番ですので、そこに期待したいなあ。



『FURY(フューリー)』はいいぞ!


えーと、最後は劇場版『ガールズ&パンツァー』の記事ですね。



あ、失敬失敬。実写版『ブラピ&パンツァー』の方でした。
やけに、西住殿に『ファイトクラブ』感があるなあ、『セブン』デイズ・ウォーダディだなあ、と思ったら、ブラッド・ピッドでござった。

FURYYYYY!! おまえは今まで殺したドイツ人の数を覚えているのか <映画『フューリー』でのブラピ&パンツァー>

劇場版『ガルパン』のちょうど1年前ぐらいに見てる映画なんですね。
動くモノホンティーガーが見れる映画でしたが、戦車とか全然分からない私にはその価値は分かりませんでしたが、映画としてバケモノとして描かれていたことは分かりましたよ。

番外編:


西島秀俊さんのCMでおなじみ、インスタントラーメンの日清ラ王。

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この日清ラ王のCMについて、色々気になることをいじったりしながら、インスタントラーメンのCMにおける「誰がラーメン作るのか?」問題を考えていきます。

「まるで、生めん。」は誰がために <日清ラ王TVCMの“ラーメン誰がつくる”問題>

Wordpressで作ったサブブログの記事なので番外としました。
しかも、ブログ全体としてはまだ色々といじってる途中なので、不完全な状態なんですが、記事書いちゃったので。

サブブログは単に、サーバー借りて、Wordpress入れて、色々いじってみよう、という遊びをするためだけのものなので、器が目的で、内容とか一切考えてませんでした。

FC2ブログの方が、アニメなどの長文ネタで固まってきてるので、それ以外のことを書く場にすればいいかな、とは思ってるんですが。
で、Twitterでツイートした短いネタなんかを、リサイクルすればいいしと思って、ラーメンネタの記事を書いたんですが、結局、長文になりましたね。これはもう病気やね。

何とか短くてどうでもいいネタを書いていきたいと思いますので、サブブログも宜しくお願い致します。

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2015年の記事は以上です。
予定にまったく無かった記事を、多く書くことになってしまった1年だったな、という印象です。

Twitterでの話が面白くて「アラ、いいですね」の波が何度押し寄せても、私は絶対に屈したりはしない!

記事を書くことになっちゃったよ……。

といった即堕ち2コマの繰り返しというか。
ただでさえ記事を量産できないのに、自分で自分の首を締めたとしか言いようがありません。笑うがいい。このような痴態をさらした私の姿を。

Twitterは元々、アウトプットが苦手な自分のためのメモやブログの元ネタづくりとして始めたので、意図通りともいえるんですが、記事にするときにはゼロから書き直すので、手間はそう変わらないんですよね。

この記事を書いている今現在だと『ガールズ&パンツァー』のツイートが多いので、あれを仕立て直せば、何本か記事が出来ると思いますが、再構成の手間というか、それをする過程でもう一段面白くなる確信がないと、どうしても二の足を踏みますね。
そうじゃないと、ただの清書というか、繰り返しの作業のようになってしまいますから。

全ては言い訳……だがな少年。やらない言い訳ばかりを思いつく、それが大人というやつなんだよ。

そうは言いつつも新年ですから、ここは前向きに、2016年というか将来の目標的なことを書きましょう。
  • いつか『パトレイバー』シリーズ記事を何とか完結させたい。
  • いつか台湾に旅行にいきたい。(行った事ない)
  • いつか北海道に旅行にいきたい。(行った事ない)
  • いつか同人誌に参加したい。(作りたいではないのが最低なポイント)

こういうの書いたことがないのですけど、最近私の友人が「結婚したいな……」と周りに言ってたら結婚することになった、と報告してきたので、ははあこれやな。この欲望に対する正直さと率直さが、幸運を呼び込むんや。ドリームがカムしてトゥルーになるんや。決戦イズフライデーなんや。と、感じたので、珍しく書いてみました。

台湾と北海道は行った事ないので純粋に旅行として行きたいのと、この場所ならブログを通じてのお知り合いにお会いできそうなので。
北海道行った時は、ぜひ『波よ聞いてくれ』聖地巡礼ということで、スープカレー食べに行って「おい、ルーがしゃばしゃばじゃねえか。ルーがしゃばしゃばだから店長呼んで来い。いやだからルーがしゃばしゃばで」みたいな、今どきそれ言う?みたいな感じで、初めてスープカレー食べた昭和世代ごっこしたいと思います。(ちなみにスープカレー何度も食べたことあります)

同人誌は、ブログとは違う面白さがあると思うので1度くらい体験してみたいなと思うのですが、「行動なき意思団」と呼ばれるほどの持ち前の行動力のなさと、社交性の低さで、実現に至っていません。というか実現に至ろうと行動したことがないです。

なんていうか、すべて「いつか」という、具体性のない未来へ丸投げしてる感じが何ともいえないですね。

いつか、いつか、いつか。
かなえたいと。きっとかなえたいと……。

私も、ソーメンマンさんの息子が、眠るシューマイを見守るような優しい目で、この世のあらゆるものを見つめていきたいと思っております。今年もよろしく!(すがしい顔で)



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TOMINOSUKI / 富野愛好病のkaito2198さんが進めているビッグプロジェクト「井荻麟作詞論」
富野由悠季監督が「井荻麟」というペンネームで行ってきた作詞活動に関する記事を全109回で語る一大シリーズ連載です。

このたび第52回として、『∀ガンダム』の後期エンディング曲でもあり、最終話の挿入歌でもある「月の繭」の記事が公開されました。

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曲の詳細な解説は、kaito2198さんの記事をご覧頂きましょう。

井荻麟作詞論 第52回「月の繭」
http://kaito2198.blog43.fc2.com/blog-entry-1641.html

この記事に大いに刺激を受けましたので、私も、私なりに「月の繭」について語ってみたいと思いペンをとった次第です。



kaito2198さんみたいに歌詞を追いながら、曲の全体像を浮かび上がらせるような事は出来ないので最初からする気はありません。

私がするのは「月の繭」の個人的な解釈です(妄想も多分に含まれる)。
名曲はさまざまな解釈を許す懐の深さを持っていますので、それに甘えてみようかと思います。
ですから、これからの話はあくまでこの曲が持つ無数の可能性のひとつと思って下さい。

「月の繭」の「繭」とはなにか


「月の繭」という曲は、シンプルでありながら、奥の深い歌詞になっています。

まず特徴的なのは、歌いだしから始まる情景描写。

山の端 月は満ち
息づく あなたの森

夏草浴びて眠る
愛おしい 横顔

おぼろな この星
大地に 銀の涙


これについてはこれまで「井荻麟」の歌詞を追ってきたkaito2198さんも「月の繭」記事にて、こう書いておられます。

今までの記事で論じたとおり、井荻麟の作詞だいたい「意志表明」か「物語性」のどちらの特徴を持っている。しかし、この曲は「意思」「物語」など動的な要素をもっておらず、むしろ静的な情景の描写に徹している。


この静かな情景描写が続く歌詞は、井荻麟の作詞としては特徴的(珍しい)ようです。

そして、この後の歌詞。

繭(まゆ)たる蛹(さなぎ)たちは
七たび身をかえる

青にLaLaLu LaLaLu染まる 恋し繭玉(まゆだま)
揚羽(あげは)の蝶になる


ここで出てくる「繭(まゆ)」というワード。

そもそも曲名自体が「月の繭」なんですが、「繭」という言葉は、1番の歌詞に上記の2つが入っています。
2番の歌詞には含まれておらず、最後にもう一度サビの繰り返しとして「青にLaLaLu LaLaLu……」がリピートされます。
  • 静かな情景描写が続く、特徴的な歌詞
  • 曲名にも歌詞にも使われている「繭(まゆ)」という言葉

なぜ「月の繭」は、井荻麟の作詞としては珍しく静かな情景描写が続くのでしょうか?
そして、この曲における「繭」とは、いったいなんなのでしょうか?

「繭(まゆ)」という言葉の意味


まず辞書的な意味で「繭(まゆ)」とは何か、改めて確認してみましょう。

1.完全変態をする昆虫の幼虫が、中でさなぎとして休眠するため、口から糸状の粘質分泌物を出して作る覆い。砂粒・葉などを利用するものもある。

2.蚕が口から糸をはいて作る殻状の覆い。白や黄色で、中央のややくびれた楕円形をしている。生糸の原料。

http://dictionary.goo.ne.jp/jn/209670/meaning/m0u/%E7%B9%AD/


御蚕さんの白い繭玉をイメージしますね。あの繭です。
イモムシのような幼虫が繭から出ると、完全HENTAIし、羽をもった成虫に生まれ変わっています。

ちなみに歌詞では「揚羽の蝶になる」とありますが、チョウはごく一部の例外をのぞいて繭を作りません。

『∀ガンダム』という作品の中ではどうでしょう。
主役ロボットである∀ガンダムは、「月光蝶システム」という武装を持っています。
まさしく揚羽蝶のような羽で飛び回り、ナノマシンを射出し、人工物を分解して砂状に変え、かつての地球文明の全てを埋葬した恐ろしい兵器です。

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物語の最後で、∀ガンダムはターンXと相討ちのような形となり、繭玉のようなものに包まれて眠りにつきました。
『∀ガンダム』において「繭」と「蝶」といえば、これを最初にイメージする方も多いでしょう。

では、これこそが「月の繭」の正体なのでしょうか?

ディアナは月の女神


本編に登場しているわけですから、それらがもちろん「蝶」と「繭」であることには間違いありません。

ただ、ここでは他の可能性も考えてみましょう。

そのヒント。歌詞の中の「あなたの森」について、kaito2198さんはこう書いていらっしゃいます。

「あなたの森」というのは、『∀ガンダム』のモチーフの一つでもあった「金枝篇」で取り上げられた「ディアナの森」のことだろう。神話においてディアナは月の女神である同時に森を司る女神でもある


ディアナは月の女神であり、月の象徴でもあります。

それでは月=ディアナとして、曲名の「月の繭」を「ディアナの繭」と読み替えてみてはどうでしょう。

後期エンディングのアニメーションでは、まさしくディアナ・ソレルが1匹の揚羽蝶へと変化していましたね。

ではその揚羽蝶を生んだ繭とはなんなのか。

私は「ディアナの繭」とは「地球」のことではないかと思います。

それはいずれ大地に眠るディアナ・ソレルを包んで、また次の命(蝶)を咲かすための繭玉です。

そして、もっとマクロに言えば、地球とは人類すべてにとっての繭玉ではないでしょうか。
大気という安全な繭に包まれた繭玉の中で、人類は生きている。

つまり「月の繭」とは、「地球」という言葉をひとつも使わずに「地球」そのものを表現した言葉

「月の繭」とは「地球」のことだったんだよ!

shockscience.gif

この「月の繭=地球」説は、歌詞妄想研究家highlandviewの説として、FC2ブログを通して、世の中に正式に発表するものです


……とまあ、そう考えてみてはどうかな。サイ九郎。

恋はスリル・ショック・サイエンス。

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どんどん増えるよ黒歴史


「月の繭」を地球そのものと考えると、この曲が美しい地球の情景描写から入るのも自然かつ必然に思えてきます。

繭玉が青に染まるのも、宇宙(月)から見た地球の姿をイメージすれば、海の青と雲の白で覆われたこの星は、宇宙に浮かぶ青き繭玉に見えるのかも知れません。

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この地球で、人類は何度も何度も失敗を犯してきました。
そのたびに∀ガンダムが月光蝶システムで文明を埋葬し、黒歴史をひとつ積み上げてきました。

どんな時でも、地球は人類の繭玉となって、次の蛹(さなぎ)を蝶にかえしてくれたことでしょう。
いつかは、もっと美しく、銀河まで羽ばたける揚羽の蝶になると信じて。

しかし、何度も何度も愚かなことを繰り返し、黒歴史を増やす人類。

歌詞でいえば「七たび身をかえる」に部分が相当します。

七生(しち‐しょう)
この世に七度生まれ変わること。永遠。しちせい。

http://dictionary.goo.ne.jp/jn/97881/meaning/m0u/%E4%B8%83%E7%94%9F/


人類はそれぐらい愚か生き物なんですが、いつか、はるかかなた、もしかすると、より良い生き物になれるのかも知れない。

……本当に?

全てのガンダムのエンディング曲


卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく。
我らが雛で、卵は世界だ。
世界の殻を破らねば、我らは生まれずに死んでいく。
世界の殻を破壊せよ。
世界を革命するために。


「卵」と「繭」は存在としては似ていますが、大きく違うのは、繭は幼虫が自分自身でつくるんですよね。

いわば「生まれ変わりたい」という本人の意思がないと繭というものは存在できないわけです。

この「七たび(永遠に)生まれ変わる宿命であろうとも、生まれ変わり続けたい」というところに、人類の意志、そして、わずかばかりの希望みたいなのを感じても面白いのかな、と思います。

さて「月の繭」2番の歌詞には「繭」というワードが含まれないことは先に紹介しましたが、ではどんな歌詞が展開されているのか。

あの月 あなたなら
哀しみを写さずに

世の揺らぎ見つめて
嘆かずに飛んでみる

風にLaLaLu LaLaLu唄え 翅(はね)に月うつし
揚羽(あげは)の蝶になる

揺らぐ夜に生まれ 銀河をわたる蝶よ
いのち輝かせよ


1番が地上の美しさと繭玉の歌だとすれば、2番は繭から出て、宇宙へはばたく蝶たちへ捧げる歌になっています。

特に「揺らぐ夜に生まれ~」の部分などは、ガンダムシリーズ全体を表現している歌詞といえるでしょう。

私たちは数多くの『ガンダム』という作品を通して何を見たのか。
まさしく、銀河を渡ろうとした幾多の蝶たちが、宇宙(そら)で輝かせた命を見てきたのではなかったか。
そこには、はかなく散った命も、愚かしい命も、あたたかな命も、たくさんの命があった。

kaito2198さんもこう書いていらっしゃいますが、私も同意見です。

「世の揺らぎ」「悲しみ」は長い歴史の暗部のことを示すように読み取れる。それが劇中の黒歴史ではあるし、今までガンダムシリーズで描いてたあらゆるもののことなのでしょう。


もうひとつ。

命の尊さ、それから時と生命が永遠に続くだろうというテーマは、2015年時点での最新作『ガンダム Gのレコンギスタ』まで包括できるものなので、ガンダムシリーズにおいて究極なエンディングテーマである。


「MOON」と「月の繭」との関係


さて「月の繭」を地球に見立てた説をお送りしていますが、ここで少し視点を変えましょう。

「月の繭」という曲の成り立ちについて、kaito2198さんの記事から引用します。

特筆すべきなのは、この曲の旋律の大元となる「MOON」は音楽担当の菅野よう子氏が『∀』において一番最初に作った曲で、1話のラストシーンに使われていたものであるため、この歌詞は数々の井荻麟作詞のなかでも数少ない曲先の仕事となる。


「月の繭」のベースとなった曲「MOON」は、『∀ガンダム』第1話のラストで使われた印象的な曲です。

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Gabriela Robin名義の詞・歌が載っていますが、歌詞に特に意味はないようです。
作曲の菅野よう子さんはよくこの方法を使います。どこの言葉でもない鼻歌のようなものでしょうか。

この「MOON」のメロディーが先に存在し、それに井荻麟氏が詞をつける、というプロセスで「月の繭」という曲は完成しています。
この流れは重要な意味を持つので、覚えておいてください。

kaito2198さんによれば、この「曲先(曲が先行して存在する)」という方式は、井荻麟作詞では珍しいケースになるようです。

その上で私の(結果論的な)解釈を言えば、第1話ラストの「MOON」は月から降りてきたムーンレイスの少年ロラン・セアックの曲です。
地球人の私には何を歌っているのかもさっぱり分かりません。ムーンレイス視点の月世界の曲です。

しかし最終話ラストの「月の繭」はどうでしょう?
ここまで語ってきたとおり、地球視点の地球の言葉(日本語歌詞ですが)がついた、地球の曲になっていますよね。

すなわち。

キエル:「MOON」から「月の繭」へ

ディアナ:「菅野よう子」から「井荻麟」へ

キエル&ディアナ:「また、お会いいたしましょう」


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そして『∀ガンダム』は全50話1年をかけて、月の民の帰還と地球との融和を描き、菅野よう子の曲と井荻麟の詞が出会い、見事作品と同じく「月と地球が融合した曲」が生まれました。

『∀ガンダム』とは「MOON」が「月の繭」の歌詞を獲得するまでの物語といえるのかも知れません。

ですから私は「月の繭」出だしの情景描写パートで、もうすでに感動してしまいます。

山の端 月は満ち
息づく あなたの森

夏草浴びて眠る
愛おしい 横顔

おぼろな この星
大地に 銀の涙


なぜなら、第1話でロランが叫んでいた「地球ってとってもいいところ」を、この詞こそが表現してくれているから。

最終話に「MOON」は「月の繭」となり、美しい星とそこで生きていくすべての人々の歌となったのです。


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もちろん「MOON」と「月の繭」の成り立ちは意図的なものではなく、私による結果論的な後付けに過ぎません。

でも菅野よう子が月をイメージして作ったであろう曲に、富野由悠季(井荻麟)が地球の美しさを歌う詞をつける、というプロセスは、ロマンのある解釈をする余地を与えてくれていると思っています。



以上、妄想エンジン・フルスロットルでお送り致しました。

この記事で全体に渡って引用させて頂いたkaito2198さんには、記事はもとより、Twitterなどでも「月の繭」について楽しくお話をさせて頂きました。kaito2198さんがいなければ、ここまではっきり言語化することもなく、この記事を書くことも無かったと思います。本当に感謝しております。

井荻麟作詞論シリーズはまだまだ継続中ですので、他の曲の解説も含め、ぜひご覧ください。

井荻麟作詞論109回リスト(詳細版)
http://kaito2198.blog43.fc2.com/blog-entry-1214.html

「月の繭」はさまざまな解釈の余地をもった懐の深い名曲です。
もちろん先に述べたように、今回の私の解釈は、この曲がもつ多くの可能性のひとつに過ぎません。

「繭」とはいったい何なのか。
あなたは私の解釈に、コクーンとうなづいてもいいし、マユツバだといぶかしんでもいいのです。




関連記事


「月の繭」と言えば、後期エンディング曲として使われましたが、印象的なのは、やはりフルで使われた最終回ラストの奇蹟の6分間。

その中のさらにごく一部のことを書いた記事です。よろしければこちらもご覧ください。
ロランとソシエの雪の夜の別れのキスについて。

惑星の午後、僕らはキスをして、月は僕らを見なかった。<『∀ガンダム』最終話「黄金の秋」より>


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