リチャードには勝てなかったよ……。


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そんな熊耳 武緒(くまがみ たけお)は、特車二課の学級委員。
このシリーズ定番ですが、まずはWikipediaで基本プロフィールを参照しましょう。

警視庁警備部特科車両二課第二小隊員。二号機バックアップ(指揮担当)(→一号機バックアップ(漫画版))。階級は巡査部長。兵庫県西宮市出身。通称お武さん(おたけさん)。

漫画版では2巻で初登場、進士に代わって二号機バックアップを務めることになった(この事情は漫画版あらすじ参照)。操縦技術に関しては隊内でも1、2を争うほどだが、指揮やバックアップ要員に向かずそもそもフォワードをやる以外に使い道がない太田の存在により、指揮担当となる。

テレビアニメ版では帰国した香貫花の後任として、第26話で初登場。ゆうきまさみによると本来第二小隊の重石になるはずだった香貫花の代わりに急遽用意したキャラで、詳しい設定が固まらない内に登場することになったという。

文武両道に秀でた才媛で、自分にも他人にも厳しく律する性格の持ち主である。漫画版では、傍若無人な太田が恐れて敬語で接する唯一の同僚で、他のシリーズでもその面が強調されることが多い。後藤の期待を汲む形で自身を「学級委員」と位置付け、第二小隊の面々をまとめる副隊長的な存在。ただし、普段はわりと気さくに接しており、まとめ役としての気配りも行き届いている。事実上、後藤の右腕で彼女に丸投げされている業務(データ解析、訓練計画の策定など)も多い。

中国返還前の香港警察への派遣時代、シャフトエンタープライズのリチャード・王(=内海)とは、ただならぬ関係にあった。

Wikipedia:「熊耳 武緒」より


まず有権者の皆様に分かって頂きたいのは、太田功はフォワード(パイロット)をやるしかない、ということ。このあたり、太田はやはりジャンプやマガジンの主人公体質なところがありますね。

問題は進士によるコントロールが全く効かないことで、かくして太田を抑え込めるキャラクターとして熊耳が登場しました。

階級も太田より上ですが、それに加えて登場時でのイングラム同士の格闘戦でも、生身の柔道でも負けた太田はおとなしく熊耳に従うことになります。ケンカ番長的ルールに従うところも太田のジャンプ・マガジンキャラっぽいところですね。

太田を抑えられる熊耳が揃ったことで、第二小隊は人材配置の上ではチームとして完成しました。
ですが基本的に第二小隊は常に人間関係が不安定であり、熊耳もそれと無関係ではありません。

彼女が実質的には副隊長のような仕事をしながら、担任の後藤先生をサポートする「副担任」ではなく、「学級委員」であるのは、問題を持つ未完成なクラスメイト(学生側)のひとりだからなんでしょう。

スキがなく、替えの効かない重要なプレーヤー


そんな熊耳さんなんですが、基本的には役割(立ち位置)としてのキャラクターの面が大きく、内面的な役割を担当するために生まれたキャラクターではないと思っています。

これは役割重視のキャラは、内面的なキャラより劣る/深みがない、ということでは全くありません。
特にこの作品がある種の「チーム物」である以上、キャラクターごとに分担する役割こそが最も重要とも言えます。

その役割(立ち位置)論でいえば「太田を抑えられるキャラクター」というのは、物語上、絶対必要なキャラクターです。それが出来るのは第二小隊6人の中では熊耳だけであり、替えの効かない重要なプレーヤーだと思います。

また、男性(遊馬)指揮による女性フォワード(野明)と、女性(熊耳)指揮による男性フォワード(太田)というコンビ対比的にも必要でした。
これはのちに、男性コンビ(遊馬&太田)と、女性コンビ(熊耳&野明)の対比も見せます。

文武両道に秀でた才女で美人。自分にも他人にも厳しく律することができ、「学級委員」の役割を自覚して動けるキャラクター。

スキのない、完璧なポジショニングですね。

人には誰しもあるもので


では「欠点」をつくりましょう、というのがキャラクター造形上の当然の流れ。

香港時代は「切れたナイフ」と恐れられた、我らが熊耳武緒巡査部長にも、欠点はいくつかございます。
  • オカルトが大の苦手
  • 香港時代のアレ(欠点というかトラウマ)

また、生まれ育ちに加え、大人になってからの香港のアレも大きな影響を及ぼしてそうな性格的な問題として、以下のようなものもあります。
  • 悩みを貯めこむ自爆型(野明の予想による)
  • 破滅型の行動(内海の指摘による)

「オカルトが苦手」というのは、もうこれは、ドラえもんがネズミが苦手のようなもので……もしかして、佐倉 魔美(エスパー魔美)の「幽霊が苦手」から来ているとか?

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これは要するに完璧に見えるキャラに、人間味あふれる、かわいらしい弱点をひとつ付けておく、といったものでしょう。そういえば、絵心が足りない、というものもあったな。それも同類ですね。

かわいらしいこれらとは異なる弱点が、彼女の大きな傷となっている「香港のアレ」です。

今夜はお前とビクトリアピーク


基本的にポジションキャラである熊耳さんは、立ち位置と他のキャラクターとの関係性で語るべきなんだろうとは思います。
ただ「対太田」「学級委員」ではそれこそ役割面での意味が大きく、熊耳自身のパーソナリティというよりは物語構造的な視点になってしまうでしょう。

となれば、彼女に迫るには、やはり「リチャード・王(ウォン)」しかない。

中国返還前の香港警察への派遣時代、シャフトエンタープライズのリチャード・王(=内海)とは、ただならぬ関係にあった。


これがいわゆる「香港時代のアレ」。
当時の熊耳とリチャード・王(ウォン)は、男女の関係にありました。
ビクトリアピークで夜景を見たあと、リチャードの下でウォンウォンと声を上げていたわけです(最低)。

しかしリチャードの正体を知らない熊耳は、結果的に利用され、香港からの逃亡を許してしまう。
内海は単に利用するための道具だけでなく、女性としての熊耳自身にも魅力を感じていたんでしょうが、そこはそれ。利用できるものは立った親どころか上司やテロリストでも利用するのが内海。

肝心な当時の2人の関係については、再会時の描写でニュアンスは伝わるが、直接的なものは熊耳によるわずかな回想シーンしかありません。

それは「優秀な仕事をする女性が、笑顔が印象的な男にコロッとだまされた」という、よくある感じのわずか6ページのダイジェスト風回想。

色々と考えるには情報は足りない……。
しかし足りないのは「そこに深いものが隠されている」のではなく、物語進行上あれで十分なのだと思った方がよいと思います。

だから描かれなかったところをあれこれ想像し、レッテルを貼ったりするのは筋が悪い。
むしろあのダイジェスト回想程度で「すべて(必要十分)」と考えた方がいい。

それにそもそも、あの回想シーンは熊耳によるものですが、彼女が見たのはあくまでも「リチャード・王」という一面でしかなく、内海と呼ばれる人間の全体像ではありません。
だまされた香港当時も、そして呼び出されて捕まった時も、内海は彼女の理解の外にある。

内海たくらみブラが送られ恥ずかし乙女


そうなると、お固いクラス委員長が、チャラいメガネに骨抜きにされたり、「くっ、殺せ」とにらみつける男勝りの強い女騎士があんなことになったりするような、太田より強いのにリチャード・王にはコロッとやられるみたいな話をするしかないのだろうか、と最初は思いました。

ただ、それをすると恐らく「女性とは」「男と女の関係とは」のようにビッグ主語で、(情報のディティールが無いから)一般化させた曖昧な話をすることになるでしょう。

それは全く気が進まないし、フィクションのキャラクターを利用して「女性」や「男女関係」を語るほど、私は経験も見識も持ち合わせていない。(そういうのは羅将ハン的な人にお任せします)

ですから熊耳&内海問題に関しては、視点を変えて、「なぜ物語の終盤から最後まで、熊耳は内海の隣にいたのか」という問題設定で考えてみようか、と思います。

これだけですとまだ「いやおタケさんも女だからさ」「女心っていうのはさ」みたいな勘違いを生む可能性がありますね。
また作中で、黒崎くんは「ギリギリまで背後関係を調べるつもりだろう」と言っていましたが、これは彼の推測でしかないし、私はどちらかといえば熊耳の動機より、物語的な機能に興味がある。

より正確にいえば「熊耳を物語最後まで、第二小隊メンバーではなく、内海側に置くことで、得られる物語とは何なのか」という感じでしょうか。

ポイントとしては以下のあたりになるでしょう。
  • なぜ熊耳を内海に捕らえさせ、物語最後まで一緒に行動する物語展開にしたのか。
  • 企画七課vs第二小隊の最終決戦に第二小隊の仲間として何も関与していないのではないか。
  • 最終的に内海もジェイクが刺し、内海問題についても解決に関与できていないのではないか。

ここまで熊耳にポジションキャラとして役割(使い道)が大きいと書いてきましたが、内海による呼び出し以降は、「学級委員」「対太田決戦兵器」という彼女を構成する大きなポジションが喪失します。
これまでのキャラクター性の拠り所であったポジションを失い、ブラも失った熊耳武緒とは、そして彼女にとっての戦いとは何なのか。

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何も考えてない「愚かな女」の行動なのか?


あれこれ考える前に、熊耳と内海の再会後の流れについて整理しておきましょう。

再会と拒絶
(1)内海に呼び出され、倉庫で再会
(2)ホテルで香港時代の回想、そのあと内海を拒絶
(3)内海が後藤へ電話。熊耳とバドの交換を申し出るが、人質にしている証拠もないしで断る。
(4)眠らされた熊耳は、ブラジャー取られて、人質の証拠品として特車二課(後藤)の元へ送られる

二課襲撃と人質価値の消滅
(5)特車二課にブラジャーが届き、熊耳が囚われていることが確定。
(6)内海から後藤へ二度目の電話。福島課長が交換取引を拒絶。
(7)内海による特車二課襲撃。熊耳は、内海、黒崎らと同じ車内に。
(8)バドが内海のもとへ。これにより交換要員としての熊耳の価値はなくなる。(内海は海外逃亡に同行させるつもり)

グリフォンvsイングラム決着
(9)イングラムに野明を乗せてから、内海、二課から撤退を開始。
(10)内海と熊耳を乗せた車、グリフォンとイングラムの戦いを車載テレビで見ながら移動。
(11)車はトンネルに入り、電波状況によりテレビで戦いの様子が確認できなくなる。
(12)サロンバスに乗り換えて脱出。電波状況回復。グリフォンの敗北をここで確認。

海外脱出と内海の最期
(13)内海と熊耳を乗せたサロンバスは晴海へ。黒崎は熊耳を排除をしようとする(内海が止める)
(14)晴海客船ターミナルに到着。熊耳は変装させられ、海外へ連れて行かれそうになる。
(15)海外逃亡直前、熊耳は監視に気付かれぬよう、香貫花に自分の存在を伝える。
(16)内海、熊耳の目の前でジェイクに刺される。


呼び出されて以降は、内海に振り回され、感情を揺さぶられ、また駆け引きの道具としても利用されてしまっています。
そもそも熊耳も本気で抵抗したり、逃げ出したり、といった行動も見せていません。
(これについては作中で内海からの指摘があります)

このため、内海のエスコートにより、彼のとなりでおとなしくイングラムvsグリフォンの最終決戦を見届けることになります。

客観的に見れば、後藤や香貫花と連絡が取れなかったとはいえ、ノコノコと一人で出かけていって捕まり、囚われの身で何も出来ないまま、戦いの決着はついてしまいました、となります。

そうですね。例えばキャラクターを、物語中で戦力的に役に立ったかどうかだけで判断するようなタイプの方から言わせれば、「足を引っ張った」「無能」「仕事放棄」「恋愛脳」「ノーブラ・ジャックナイフ」みたいな批判を受けるのかも知れませんね。

私自身も連載当時、最後まで内海のそばにいたわりに、おタケさんの行動による大逆転とか、最後の最後でだまし返す(意趣返し)みたいなこともなく、不確定要素のジェイクで決着したことに、あまりすっきりとしていなかったような気がします。熊耳さんはいったい何のためにあのポジションに最後までいたんだろう。

そして連載終了から20年以上が経過した2015年。
このシリーズ記事を書くために、15年ぶりぐらいにマンガ版を読み返して、当時疑問だったことが少し分かったような気がしました。

熊耳さんが「第二小隊の学級委員」を捨ててでも、「内海のとなり」のポジションに移る意味はあったと。

グリフォンvsイングラムに重ねられたもの


そのひとつは、グリフォンvsイングラムの最終決戦。


熊耳さんが参加していないと言いましたが、この一騎打ち自体には、特車二課のメンバーは誰も参加できていません。

襲撃された二課棟に閉じ込められた後藤たち。(のちに解放)
福島課長を人質に取られて手を出せなくなり、無力化された太田の二号機。
指揮車で外にいた遊馬も捕まってしまい、完全にバドと野明、2機のレイバーだけでの戦いです。

これこそが警察署の襲撃という手段まで選んで、内海が望んだ最終決戦のかたちです。

しかしこの結果は、後藤の言う通り、泉野明の「圧勝」に終わります。
共に「趣味のレイバー」のパイロットに選ばれたバドと野明。結果の違いはレイバーに乗り始めてから得たものの違いが大きいですが、これは「泉野明」の項などで詳しく語りましょう。

内海の誤算はいくつかあるでしょうが、ひとつはこのパイロット泉野明の資質を見誤ったこと。
もうひとつは、泉野明を見誤ったことによって、バドと野明の違いを見誤ったこと。
そしてイングラムという機体とそれを支える力を見誤ったこと。

イングラムを、いつも最高の状態にしてくれている整備班の働き。
描写は少ないが、恐らくコンピューター系のサポートを色々してくれたであろう進士。
描写は少ないが、気配りやメンタル面も含めて、バックアップに徹してくれたであろう山崎。
1号機とは違う特徴を持ち、コンビとしてライバルとして、模擬戦の相手や反面教師にもなった太田。
口は悪いが、育ちもあってレイバーに詳しく、野明をのせるのが上手かった初代パートナー遊馬。
そして、二代目パートナーとして野明と一号機を育て上げてきた熊耳。
(さらにいえば、これらをキャスティングした後藤隊長)

イングラムの能力は、多くの公務員の手により、長年の運用の中で丹念に練り上げてきたもの。
そこに熊耳も1号機バックス(指揮)として、重要な役割で参加しています。

だから、グリフォンvsイングラムは、バドvs野明でもあり、それを支える企画七課全員vs特車二課全員であり、当然のことながら、内海vs熊耳の要素も含まれる。
内海と熊耳、2人がそれぞれ育てたパイロットとロボットの決戦。
それを熊耳は敵地で、内海のとなりで見届けることになる。これが彼女の戦いのひとつ。

なぜ最終決戦で、野明&遊馬コンビが復活しないのか


マンガ版全22巻のうち、野明と遊馬のコンビは実は1巻~13巻まで。
13巻途中からは、野明と熊耳のコンビとなり、それは物語の最後まで続きます。
ちなみに最終回では、熊耳の不在により、遊馬が1号機、2号機、両方の指揮を取っていますが、結局最後まで、野明&遊馬という1vs1の関係には戻っていません。

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『パトレイバー』といえば、野明&遊馬コンビというイメージがしますが、実はマンガ版では野明&熊耳コンビもかなり長いのです。

なぜなのか、と言えば、配置換え自体は遊馬の自業自得から生じたものです。
別に熊耳側に理由があったわけではない。ただ、マンガ版がグリフォンとの決着で終わらせたことを考えると、物語の後半から最後まで、熊耳が1号機のバックスであり続けたことは意味があったと思います。

連載当時、実は私は最終決戦のときに「ああ、この緊急時についに野明&遊馬コンビが復活するのか!」と思いながら読んでいました。

篠原重工の実験試作機AVR-0でのグリフォンとの前哨戦。衛星からの情報と管制車による演算処理でのサポートは、長年イングラムを手足にしてきた野明との相性が悪く、敗退します。
「うむ。最新技術の衛星サポートより、遊馬の指揮だな!」と思っていたら、遊馬も捕まり、結局、内海の思惑通り、野明ひとりでの最終決戦となってしまいました。

当時は、あれ?遊馬の見せ場は?コンビ復活は?とか思いましたが、今から思えばこれは正しい。
この段階でも正式な1号機バックスは熊耳武緒であって、彼女は内海とこの戦いを見つめている。
ここで遊馬が指揮を取ると、内海vs熊耳の構造がボケてしまう。

野明をたったひとりで戦わせることで逆に、不在の熊耳や、整備班含め特車二課全員を背負ったイングラムという構図が強調されていると考えます。

内海のとなりで、イングラムの勝利に笑い転げる女


これまでやられっぱなしだった熊耳が、内海を刺すための道具は、ジャックナイフではなく、イングラムによる電磁警棒。

それは、内海とバドのお遊びに公務員が仕事で決着をつけた瞬間でした。
そして大事なことは、この瞬間、内海のとなりにはそれを笑うことができる熊耳がいるのです。

もしこの敗北時に熊耳がいなければ、内海は(内心はともかく)部下たちの手前、余裕のある笑顔でニヤケたまま、軽口でもたたいて、ポジティブに次の行動でも指示したでしょう。
しかし、ただひとり。内海自身が連れてきた熊耳がここに存在することで、それは許されない。
熊耳は、可笑しくてたまらないと笑い転げます。

そもそも、その瞬間に内海のとなりにいることが出来るのは熊耳以外ありえないでしょう。
これは熊耳にしかできない、重要な役割です。多分この瞬間のために彼女はここにいた。

ただしそれには「第二小隊の学級委員」を捨てて、破滅型の愚かな女に見えても、内海のふところへ飛び込ませる必要があった。今はそう思います。

振り返らなくてもジェイクがいる


その後、内海は熊耳らを連れて、海外への逃亡をはかりますが、その寸前でジェイクによって刺されることで物語は終わります。

内海のとなりにいたことで、イングラムによる勝利を見届け、一矢報いた熊耳ですが、今度はかつて愛したであろう男の死をも見届けることになってしまいました。

殺害したジェイクは直後に黒崎によって銃で撃たれ、企画七課の面々は全て逃亡し、行方をくらましたようなので、現場のことを語れるのはおそらくは残された熊耳のみ。

警察による事情聴取や捜査協力なども行われたのではないかと推測されます。
事件の関係者で、警察官とはいえ、内海の死を語るその心中は如何ばかりかと思いますが、その過程で、彼女の中の内海、いやリチャード・王がゆっくりと死んでいったのかも知れません。

その後、休職をするほどにショックな出来事であったには間違いないですが、もし内海が再び熊耳を残して、生死不明で行方をくらましでもしたら、彼女のノドには骨が刺さったままになったでしょう。
オーストラリアで死んだよ、と噂を聞いても、それでは彼女はきっと信じない。

彼女が最後まで内海のとなりにいて、内海の死を目撃し、そしてその死を語ったであろうことは、彼女の中のリチャード・王を埋葬するために必要な儀式だったのかも知れません。

約束された熊耳武緒の帰還


内海というキャラクターの決着については、作者ゆうきまさみの倫理性と共に良く語られるところです。いわゆる光画部的なものへのケリという文脈で。

それと同時に、熊耳武緒という女性に対して、過去の決着と救済を与えているように感じました。
けして「第二小隊の学級委員」を捨て、破滅型の愚かな女に貶めたわけではなく、いわばポジションのためのキャラクターだった彼女に、「チーム物」としての役割を免じて、この後の人生(それは連載終了後で描かれることはない)を生きるためのチャンスを与えたようにも見えます。

それは彼女にとって非常に残酷なものでもあったのですが、時間は彼女の敵ではなく恐らく味方。
彼女がまもなく元気に復帰するであろうことを、最終回に初めて登場した、熊耳の父が教えてくれます。

この、熊耳が近い将来に復帰するであろうという予感が、マンガ版『機動警察パトレイバー』を閉じた世界にせず、連載終了後も続いていく未来があることを感じさせてくれて、私は好きです。
きっと、熊耳が笑顔で職場に戻り、多分そのときにはじめて、後藤隊長は遊馬を1号機専任バックスに戻して、コンビを復活させるのでは?などと勝手に考えたりしています。

それにしても、熊耳さんの父も柔らかそうな笑顔が印象的なメガネの男性でした。
彼女は、この笑顔の父に「面白いよ」と心霊写真などを見せられ、幽霊のトラウマをつくりました。
そのあと、同じように笑顔が印象的なリチャード・王に魅かれ、だまされ、トラウマをつくりました。

ただ父親と内海が違っていたのは、父親は裏表なく心から彼女を愛していたことです。
心霊写真も楽しいことを娘と共有しようと思ってやったこと。もちろん、だますつもりなど毛頭ありません。(でもガチ泣き)
内海も笑顔のまま、ぼくもタケオと喜びを共有したいだけなんだ、とは言うでしょうけどね。
まあ子供の戯言ですけど。

父の前では子供の頃から泣いたり、おびえたりしまくっていたであろう娘を、父は「簡単にへこたれたりしない娘だ」と力強く断言するんですよね。
だから熊耳さんは、彼女を裏表なく愛してくれている家族に支えられて、必ず戻ってくるでしょう。

そしていつの日か「学級委員」を再開した彼女は、メガネの奥に見える笑顔の違いを見抜ける女性になっているかも知れません。なっているといいですね。


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シリーズ記事『機動警察パトレイバー』


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>


同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。

カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー

発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061
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太田功は、野明と共に、第二小隊でイングラム二号機に搭乗する。
物語の中心たる第二小隊において、レイバーに乗って戦うことが出来る数少ない男子。
(この箇所、主語が大きかったので、記事の主眼に合わせて修正しました。唯一の男子、でもいいけれど)

基本プロフィールをいつものごとく、Wikipediaから参照しましょう。

警視庁警備部特科車両二課第二小隊員。二号機フォワード(操縦担当)。階級は巡査。岩手県釜石市出身。よく言えば生真面目で正義感の強い熱血漢、裏を返せば、直情径行で猪突猛進なだけの熱血馬鹿。規律重視で融通が利かない性格ゆえに、自分よりも階級や実力が上の相手にはわりと素直に従う一方、同僚隊員(特に遊馬)と衝突することが多いが、危機には勇んで駆けつけようとする仲間思いな心根にはブレがない。漫画版の初期では、特車2課の隊員の中で唯一「正規の教育を受けた警察官」であるという自負からか、いわゆる「予備校出身の即席警官」である他の隊員を、少々見下しているようなフシがあった。
Wikipedia:「太田功」より


体育会系熱血バカではあるが、正義感が強く、それでいて意外とフェミニストでもある。
古き良きロボットアニメであれば、太田が物語の主人公であってもおかしくはない。
別の言い方をすれば、週刊少年サンデーではなく、ジャンプかマガジンに連載していたら、太田が主人公だったかも知れない。

しかし『機動警察パトレイバー』の主人公は、女性主人公・泉野明、男性主人公・篠原遊馬の2人。
太田ではなく、この2人が主人公になるところがこの作品らしい所であり、巧みなところです。

遊馬がレイバーには乗らず(乗れず)、太田がレイバーに乗って戦えるのは、端的に言って太田が「バカ」だからだと私は思います。

「バカ」ゆえの純粋性と幼児性


「バカ」と言っても、知能指数が劣るわけではありません。
体制側のロボットに乗り、正義の名のもとに、その力を振るうことに屈託があるかないかです。
さらにいえば、冗談のような趣味デザインのパトカーロボットに乗って、ロボットアニメの主人公として正義を執行することを、引き受ける覚悟があるかどうか。(そして、それが恥ずかしくないか)

遊馬はお利口さんなので、そのポジションには立ちません。
もちろん、篠原重工(父)の作ったレイバーだということも拒む理由のひとつでしょうが、そもそもそういったややこしい背景が太田には無いのです。

国家のロボットに乗り、正義の名のもとに、悪党を征伐する。できれば銃で。
太田がレイバーに乗る理由はこれです。シンプル。

かくして、悪・即・弾の太田と、イングラム大好きっ子の野明の「バカ」2人が第二小隊のフォワードになりました。

遊馬、進士、山崎の男子3名は、適性以前に考えることが多く、「バカ」ではないので、レイバーには乗れないでしょう。

自分のやりたいことをやりたいように行動する、それができる「バカ」であることは第二小隊のフォワードであるための「RIGHT STUFF(正しい資質)」なのです。

国家をバックにした太田の暴力


体制側で力をふるうことにためらいのない太田は、やたらに銃を撃ちたがり、暴走を続けます。
彼の正義は「バカ」であるがゆえの行動力と共に、純粋性と幼児性に満ちています。

この幼児的な正義には「しつけ」が必要ですが、進士は太田を全く止められません。
太田と同じ男性である進士が止めるには、太田以上の「力」が必要だったでしょう。
恐らくそれ以外に屈服させる方法はありません。

そこで二号機の指揮は熊耳武緒が担当することになりました。
熊耳は実力的にも太田より上なのですが、それも含めて、子供をしつけるお母さんですね。
実力の問題だけではなく、恐らく原理的に、太田は熊耳に勝てないはずです。

今回のパトレイバー企画を一緒に始めたものの、圧倒的に先行しているpsb1981さんは太田について、こう書いていらっしゃいます。

この彼の存在はパトレイバーという作品のテーマの一つを浮かび上がらせるのではないだろうか。それは太田じゃない人間は、どのようにすればレイバー(ロボット)に乗って、正義を執行できるのか、であり、また太田の正義はどのように担保されるのか、だ。

後者の疑問については作者がすぐに答えを提示してくれる。それは太田を指揮するのが熊耳武雄(女性)だということだ。つまり正義(の暴力)を振るう男性を女性がコントロールしているのである。

太田功(カテジナ日記)
http://tentative-psb1981.hatenablog.com/entry/2015/04/04/201258


男の子がロボットに乗ることで社会に関わるというロボットアニメのモデルを考える上で、この太田&熊耳コンビと、役割と性別が逆転している遊馬&野明コンビは良いサンプルになってくれそうです。

全員に対して逆位置で関われるキャラクター


この他に個人的に、太田を面白いと思うのは、第二小隊メンバー全員に対して逆位置に立てるところです。

泉野明に対して
技の1号と力の2号。女性的な1号機に対しての男性的な2号機として。

篠原遊馬に対して
ひねくれて冷めた若者である遊馬に対しての、直情・熱血のケンカ相手として。
文化系キャラと体育会系キャラの対立。

進士幹康に対して
気弱な知性派メガネキャラクターに対しての、強気の肉体派太眉キャラクター。

山崎ひろみに対して
温和で平和主義のひろみちゃんに対しての、好戦的なキャラクター。
レイアウト上、巨体と低い身長の視覚的コントラスト。

熊耳武緒に対して
学級委員に対しての、ガキ大将的なキャラクター。
(ただし熊耳が格上を証明したため、強い者に従う番長ルールで素直に従う)

コンビという意味では、男性が指揮することで女性パイロットに力を仮託するコンピ(野明&遊馬)に対しての、男がロボットで暴力をふるうのを女性が制御するコンビという対比。


このように全てのキャラクターに対して逆位置に立てるのは、太田功だけ。

こう見ると本当に主人公タイプだな、と思いますが、本作で脇役の太田は、他のキャラクターの個性を引き立てるのにかなり貢献しているはずです。

太田がいなければ、第二小隊キャラクター相関図は線の数が少なく、また線が弱々しいものになっていたでしょうね。作品にとって重要なキャラクターです。

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シリーズ記事『機動警察パトレイバー』


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>


同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。

カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー

発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061
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進士幹泰(しんし みきやす)は、物語の中心である第二小隊メンバーでありながら、山崎ひろみ同様、脇に回らざるを得ないキャラクターです。
そして彼もまた、イングラムに乗らない男子のひとりです。

まずは、Wikipediaから基本情報を引用するところから始めてみましょうか。

警視庁警備部特科車両二課第二小隊員。二号機バックアップ(指揮担当)。階級は巡査。静岡県藤枝市出身。東京大学卒。第二小隊で唯一の妻帯者である。公務員一家に生まれ、かつてはコンピュータ関連会社の優秀なサラリーマン[12]であったが、ふとした気の迷いから警察官に転職し、後藤のスカウトで特車二課に配属された。気が弱いためフォワードの太田の暴走を止められず、胃薬を常用している。後に二号機のバックアップを交替し、後方支援(輸送車)に回るが、劇場版シリーズなどで香貫花や熊耳が不在の場合は、輸送車から二号機を指揮する姿も見られた。身体を張る職務は苦手だが、コンピューターの扱いに長け、冷静かつ奥深い洞察力には他の隊員も一目を置く。
Wikipedia:「進士幹泰」より


アニメーションで『パトレイバー』に関わった押井守監督は、山崎ひろみに対して、いわゆる「主人公チーム」に必要な類型的なキャラクターであると言っていました。

では進士さんはどうかと考えると、とりあえず太田の逆位置に配されたキャラクターではあるでしょう。
  • 太田の低身長、がっしり型、太眉に対しての、長身、痩せ型、メガネ
  • 正規の教育を受けた警察官に対しての、脱サラ転職組
  • 強気で猪突猛進に対しての、気弱でナイーブな性格
  • 肉体派体育会系に対しての、頭脳労働文化系
  • 硬派で女性に不器用に対しての、第二小隊唯一の妻帯者

太田のキャラクター要素をひっくり返していくと、基本的には進士になります。

まさに凸凹コンビと呼ぶにふさわしく、普通に考えれば、長所短所の全く違う2人はぶつかりながらも良いパートナーになっていく、というのが物語でよくあるパターンですね。

ですが『パトレイバー』ではそんなことはなく、「太田を抑えるのは不可能」という上司判断で、2号機指揮は早々に熊耳 武緒へあっさり交替します。

このあたり、元々、太田の抑え役として強い女性キャラクター(熊耳、アニメでは香貫花)を出す予定があったからでしょうが、お仕事だから相性の悪い組み合わせは早目に介入して改善する、という面が見えて面白くもあります。
失敗やケンカをしながら、パートナーとして認め合っていくなどという気の長いプロセスは、ドラマの中だけの話で、社会人のお仕事現場では不要なのです、といった感じ。

民主主義国家の巨大ロボット


『パトレイバー』において、公権力が巨大な暴力(イングラム)をふるうためのシステムは、直接、暴力を行使するパイロット(フォワード)と、それをコントロールする指揮担当(バックアップ)に分かれています。
キャラクター的にも、体育会系のパイロットと、文化系の指揮担当といった感じですね。

これは言わば巨大ロボットのシビリアン・コントロール(文民統制)と見ることもできるかも知れない。
民主主義国家におけるロボットは、誰か個人の倫理や正義には委ねられない。
もちろん指揮担当は、自由意志で就職した個人であって、政治家と違い国民から選ばれたわけではありませんが、国家のロボットをコントロールする代表者ではあるでしょう。

そういう見立てにおいては、分かりやすく軍人タイプの太田の暴走を止められないという状況は、完全にシビリアンコントロールを失っているといえます。
進士に不信任案が出され、政権が交代したのは、プロセスとしては妥当ですね。

但し、交代した熊耳が、太田を制御できるのは、彼女が太田より階級が上で、なおかつ柔道で太田を投げ飛ばせるほどに強かったからですけどね。
「自分より格上に従う」という、犬みたいな単純なルールですが、それが太田に一番有効なのも確かです。
太田は「上官」に従っても「文民」に従う気はゼロなので、シビリアンコントロールには結局の所なっていません。

とにかく進士さんは、太田のコントロール、つまりロボットのコントロールに失敗し、以後、脇役に回ることになりました。

進士さんはどういう元サラリーマンであるべきか


太田とのコンビ解消後は、進士にあまりキャラクターとしての見せ場がありません。
指揮から降ろされたことで「ロボット」に直接関わる立場でなくなった上に、もともとキャラが濃い太田の逆位置キャラクターとして薄めなのですから、その太田とやりあってないと存在価値が乏しくなるということもあるでしょう。

その意味では、「壁」役ひろみちゃん、と同じく、脇にいる「メガネ」役になってしまっています。「主人公チーム」にひとりぐらいは必要だが、特に重要な役割が与えられない「メガネ」……。

進士さんがレイバーに乗る、という選択肢は、劇中の理由でいえば、適正検査によるものでしょうが、そもそも太田の逆位置キャラクターとして無いでしょう。
また、もうひとつは『パトレイバー』の作品構造上、レイバーに乗るには、ある種の「バカ」であることが必要です。
『パトレイバー』は、屈託なく、ロボットに乗り、暴力によって正義を行使する時代の作品ではなく、パトカーカラーのロボットに乗って、東京の平和を守るのは、恥ずかしくて並みの大人には出来たものではありません。
常識人で、妻帯者で家庭もある進士は、野明や太田が持つ、ある種の純粋性、幼児性が無く、ロボットに乗る資格がないのかも知れません。

進士と同じく、レイバーに乗れないひとり、篠原遊馬の事情はもう少し複雑ですが、それはまた項を改めて。

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個人的には、前職がコンピュータ会社であることを活かして、よりシステムエンジニア的な活躍をしてもいいかも、と思いましたが、整備班のシバシゲオもかなりコンピュータにも強いようなので、それも難しいか…。
TVアニメではバドを保護し、劇場版では方舟の謎を解明した、シゲの部屋ですが、キャラクターが集まる溜まり場になったのは彼が気兼ねのない独身であるからで、妻帯者の進士でそんなことはできない。

進士さんの妻・多美子さんが、きっちり物語に関わるような形であったなら、バドの保護に一枚噛むようなことも出来たかも知れない。その時に、子供(赤ちゃん)がいれば、母・多美子さんとバドと赤ちゃん、という関係も少し面白いかも知れない。本物の母ですからね。
でも、進士さん自体が取り上げられることも少なく、当然、家庭も特にクローズアップされることはないのでした。

では少し出自を変えて、篠原重工から二課へ出向しているエンジニアぐらいまですれば、シゲと差別化して独自性が保てるかな?(そういう事ができるかどうかは別として)
警察の論理に対して、サラリーマンとエンジニアの論理で仕事をするキャラクター。
ロボットアニメの博士役に近いかも知れない。(整備班はあくまでメカマンなので)
ただ篠原重工関係者だと、遊馬のキャラクターを侵害するかも知れないな……。
その場合は、性別を女性にして、メガネ理系女子にでもすればいいかも知れない。
それはそれで太田の逆位置キャラという役割はなくなってしまうけれど、本編でそれが活用されているわけではないし、男性のメガネに需要はなくても、女性のメガネには需要があるかも知れない。あるだろう。あります。

進士ミキちゃんではなく、男性のままでというこであれば、サラリーマン時代の職種を社交的な営業マンなどにして、いわゆる公務員、警察官とは違うスキルや価値観を持っているキャラクターにしてみたら……あれ?

元営業マンの警察官?……どこかで聞いたような?

都知事と同じ名前の青島です


TVドラマ『踊る大捜査線』は『パトレイバー』に強い影響を受けた作品です。

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監督の本広克行もそのことを公言しています。

機動警察パトレイバー - 作品発表の1988年を10年後である1998年からの数年間の近未来の東京を中心とした地域を舞台とした漫画およびアニメ作品。主人公たちの所属する警視庁警備部特殊車両二課は周りに何もない東京湾の埋立地にある。監督である本広克行などに強い影響を与え、特に同監督の『交渉人 真下正義』はこの作品へのオマージュが多々存在する。本広自身も『機動警察パトレイバー』文庫版第一巻367頁に寄せたコメントにおいて「踊る大捜査線は機動警察パトレイバーに影響を受けた」と告白している。
Wikipedia:『踊る大捜査線


私が最初に読んだ、本広監督による『パトレイバー』話は、雑誌『GaZO』(1998)での押井監督との対談だったように思います。

このドラマの主役である、都知事と同じ名前の青島刑事(織田裕二)は、元営業マンでしたね。

かつてはコンピュータシステムの開発会社「シンバシマイクロシステムズ」に勤務する成績ナンバーワンの営業マンであったが刑事ドラマの刑事に憧れ[4]、警察官に転職。TVシリーズ第1話の冒頭部分の模擬取り調べでは、被疑者役にカツ丼を勧めるなど昔風の刑事ドラマに出てくるような取り調べを行い、「刑事ドラマの見過ぎ」と言われている。交番勤務の後、湾岸署に配属され、念願の刑事になった。「脱サラ刑事」と揶揄される事もあったが、サラリーマン時代に培ったスキルが捜査に役立つ事も度々あった。
Wikipedia:青島俊作


元営業マンの青島刑事は、サラリーマン時代のスキル(要領の良さ)を捜査に活かしたりしていました。

けれど特車二課は、レイバーの操作はすれど、事件の捜査しない。
営業マンの社交能力も役に立ちそうにないし、二課にいるなら必要のない経歴ですね。
でも、体育会系の太田のあしらいは上手くなるだろうな。
そんな進士さん、進士さんじゃない。という気もするし、しない気もする。

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シリーズ記事『機動警察パトレイバー』


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>


同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。

カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー

発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061
特車二課の「パトレイバー」に乗れない男子のひとり。

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まずはWikipediaでの登場人物紹介を引用してみましょうか。

警視庁警備部特科車両二課第二小隊員。後方支援担当。階級は巡査。沖縄県石垣島出身。通称「ひろみちゃん」。身長2メートルを超す強面の巨漢で、レイバー操縦技能は持つが、イングラムのコクピットの狭さから搭乗できず、後方支援に回る。なお警察に入った理由は、実家が漁師であるが、本人はとても船に弱い体質であるからである。その体躯ゆえに重火器を任される場合が多い。しかし、その外見に似合わず器用で、世話好きな心優しい男である。また、涙もろく恐がりであり、争い事を好まず、進士と並ぶ第二小隊の良識人である。
Wikipedia:「山崎ひろみ」より


沖縄出身なんですね(知らなかった)。
それ以外はよく知っている、第二小隊の仲間、「ひろみちゃん」です。メインキャストのひとりです。

映像で『パトレイバー』に関わった押井守は、山崎ひろみのことをインタビューでこう語っていました。
「レイアウトのために存在するキャラクター」であると。

映像の中での、ひろみちゃんの貢献


押井 第二小隊の6人は描くしかないから、やったけどね。あれは、本当は5人組ですからね。実は、5人組というメカものの基本構造は師匠(鳥海永行氏)が作ったものだからね。

―ああ、「科学忍者隊ガッチャマン」ですね。石ノ森章太郎さんの「レインボー戦隊ロビン」は7人でしたかね。いずれにしても、ヒーローとヒロイン、準ヒーローと子供か小男、そして大男という構成ですね。

押井 レイアウトの都合上そうなるだけであってね、凸凹の身長の男と綺麗なお姉ちゃん。その枠組み自体、人間ドラマとして構成させるのは不可能でしょう?実に足手まとい。第二小隊も基本的にこの構造だったでしょう。

押井守監督 インタビュー(2)より


この話でいくと山崎は、『科学忍者隊ガッチャマン』でいえば、みみずくの竜であるということですね。
巨体で、気は優しくて、力持ち。明るい笑顔が今日もゆく。

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映像演出をする押井監督からすると、画面レイアウト上のメリハリのためのキャラクターであり、別のインタビューでも彼に対して「壁」という言い方をしていたと思います。
つまりは「チームもの」でのキャラクター類型のひとつであり、画面レイアウトでの活躍が大きいと。

全国3500万人のひろみファンには申し訳ないですが、個人的には実際にそうだろうな、とは思います。
類型的なキャラクターが悪いと思いませんし、山崎ひろみというキャラクターをキライというわけでも、もちろんありませんけどね。

レイバーに乗れない人は何をしたらよいのか問題


『機動警察パトレイバー』において、山崎ひろみは、レイバーに乗れません。
技術的な問題ではなく、巨体ゆえにレイバーのコクピットに搭乗できないからです。
Wikipediaによると、船にも弱い体質と書いてあるので、乗れたとしても三半規管的な意味でやはりダメかも知れません。

『パトレイバー』はロボット物なので、国家権力、警察としての「力」はレイバーが執行します。
巨体で重火器も取り扱えるという、個人の戦闘力としては作品最強レベルのひとりである山崎ですが、レイバーに乗れない彼は、作品の構造上バックアップに回るほかありません。

かくして、彼にはバックアップキャラクターとして、ふさわしい内面が与えられていきます。
  • 気配り上手
  • 涙もろく、怖がり
  • 基本的に争いを好まない
  • 世話好き
  • 動植物が好き
  • 料理が得意
  • 下戸(おちょこ1杯で酔っぱらう)

箇条書きにすると、どこのヒロイン?と思うような特徴の数々。
2mの巨体とのギャップによる面白さを作るためでもあったでしょうが、きわめて女性的ですね。
さらにいうならば作品中、もっとも母性を前面に出したキャラクターと言ってもいいかも知れない。

つまり、それが最もバックアップ(後方支援)にふさわしいキャラクターであったのでしょう。

しかしながらこれは男性が戦闘をし、女性が後方にいるべき、という生まれ持った性別での単純な役割分担の話ではありません。性別に関係なく、職務に応じて異なる、人間的な性格や資質によるものなのだろうと思います。

ですからこのキャラクター性は、2mの巨体と怪力でありながら、バックアップ担当にならざるを得なかった山崎ひろみに与えられた「RIGHT STUFF(正しい資質)」なのでしょう。

自分の中にある「暴力」とどう付き合うか


野明も「ひろみちゃん」と呼んで、親しくしているようですが、恐らく彼に男性を感じることはなく、性別を意識する必要のない友人としての関係性ではないかと思われます。

その「ひろみちゃん」について、psb1981さんはこう書かれています。

レイバーに乗って戦うには彼は優しいのである。いや、本当は優しいというよりも怖がっているのだと思う。何を怖がっているのかと言えば、自分自身が男性であること、である。つまり彼はその恵まれたフィジカル(男性性)ゆえに、(正義であろうとなかろうと)暴力の恐ろしさや、それを行使することの責任を知りすぎているのである。

山崎ひろみ(カテジナ日記)
http://tentative-psb1981.hatenablog.com/entry/2015/04/04/210154


「ひろみちゃん」は、自分の恵まれた体躯による暴力性に気付いているだろう。
その肉体で、スタローンやシュワルツェネッガーのような、アクションヒーローをこなすことも可能であり、事実、常人では扱えないような重火器で活躍することもある。

しかし彼自身の性格は争いを好まず、暴力性は基本的に封印されている。
縁の下の力持ち、バックアップの仕事も恐らく厭うことはない。(太田であれば3日で辞めるだろう)

つまり「ひろみちゃん」が持つ暴力性は、彼が持つ女性的、母性的な精神性によって制御されている。
これは、巨大な暴力であるレイバーを、少女であり、イングラムの母である泉野明が制御する構図と似ていると言えなくもない。

そう、いわば「ひろみちゃん」は、特車二課第二小隊のレイバー三号機だったんだよ!

mmr

レイバーは、ひろみちゃん。そしてパイロットは、女性的なひろみちゃん。

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『機動警察パトレイバー』において、巨大な暴力装置であるレイバーに対して、どのようなスタンスを取るか、というのは作品を考える上での面白いポイントのひとつです。

この作品では、男性がレイバーに乗って、その力を行使するということが少なく、山崎ひろみはそのうちのひとりです。

彼以外に、従来のロボット物主人公のように男性的な男性が乗るパターンは太田が、父の作ったロボットに乗らないパターンを遊馬が、天才パイロット少年が乗るパターンはバドが、それぞれ担当しています。

それは、それぞれのキャラクターに関する項で、詳しく考えることにいたしましょう。

次の記事へ、<つづく>




シリーズ記事『機動警察パトレイバー』


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>


同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。

カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー

発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061
ゆうきまさみが描くマンガ版『機動警察パトレイバー』は、1988年に連載がスタートしました。

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『機動警察パトレイバー』は、メディアミックスを前提とした企画で、OVA、TVアニメ、劇場版などのアニメーション作品としても展開しており、マンガ版はそのひとつ。
だから原作でもコミカライズでもなく、「マンガ版」である、というのが、この作品の基本情報です。

アニメ『機動警察パトレイバー』は、いわゆる「巨大ロボットアニメ」と呼ばれるジャンルの作品です。
マンガ版は「ロボットアニメ」の世界観をコミックというフォーマットで表現した作品ということになるでしょう。

では連載がスタートした1988年において、その「ロボットアニメ」というものは、どういう存在感だったんでしょうか。
WIkipediaのアニメ年表と、私の子供時代のあやふやな記憶をたよりに、思い出してみましょう。

1988年放送のロボットアニメ


Wikipedia:1988年(昭和63年)のTVアニメ作品一覧

これを見る限り、「巨大ロボットアニメ」は、わずかに以下の作品のみです。
  • 『トランスフォーマー 超神マスターフォース』
  • 『魔神英雄伝ワタル』

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しかも、二作品とも『機動戦士ガンダム』に代表されるような、俗にいう「リアルロボットアニメ」ではあありません。ターゲット層は、かなり低めの年齢層に設定されています。

ちなみに前年の1987年を見れば、『機甲戦記ドラグナー』が放送されています。
ただ、この作品を最後に『戦闘メカ ザブングル』、『聖戦士ダンバイン』、『機動戦士Ζガンダム』などを生んだ、名古屋テレビ土曜17:30~のリアルロボットアニメの流れは終了しています。

1988年をTVアニメという観点で見ると、「リアルロボットアニメ不在の年」だったんですね。

1988年のTV以外のロボットアニメ


では1988年のテレビアニメ以外のロボットアニメを見てみましょうか。
  • 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(映画)
  • 『New Story of Aura Battler DUNBINE』(OVA)
  • 『六神合体ゴッドマーズ 十七歳の伝説』(OVA)
  • 『トップをねらえ!』(OVA)
  • 『宇宙の戦士』(OVA)
  • 『機甲猟兵メロウリンク』(OVA)
  • 『機動警察パトレイバー』(OVA)

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『機動警察パトレイバー』自身の初期OVAシリーズもここでスタートしています。

『ゴッドマーズ』や、正確にはパワードスーツの『宇宙の戦士』、主人公がロボットに乗らない『メロウリンク』を除外しても、『逆シャア』『トップ』『パトレイバー』と、なかなか充実したラインナップです。

OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)という形式も手伝って、TVアニメの『トランスフォーマー』や『ワタル』と違い、高めの年齢層がターゲットになっています。
関連の玩具ではなく、「映像」そのもの、さらにいえば「ロボットアニメ」というジャンルそのものに価値を感じて、ソフトを購入(レンタル)するような年齢層向けです。

こうして見ても、1988年の「リアルロボットアニメ」はすでに、TVアニメとして放送し、不特定多数の幅広い層が楽しむジャンルではどうやらなかったようですね。

1988年に生まれた、1998年の物語


TVアニメから「リアルロボットアニメ」が消える中、OVAを舞台にして展開されたのが、SFや特撮・アニメのパロディをふんだんに盛り込んだ『トップをねらえ!』。

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そして現実と地続きの世界に現れる、桜の代紋をつけたパトカーロボット『機動警察パトレイバー』。

いずれも、パロディ化したり、面白おかしさを追求してみたり、現実の風景に直結してみたり、豊かな遊び心でロボットアニメを相対化して、自らのジャンルに対して自己批評的でもあります。

両作品ともロボットアニメとしての魅力に満ち溢れているのですが、真正面からではなく、パロディ的な相対化、批評性を持ったアプローチでなされました。

それはOVAを見るような目の肥えたアニメファンのためでもあるでしょうし、リアルロボットがひととおりのバリエーション展開を終えてTVから消えたような時代に、作り手側がロボットものをするために必要なプロセスでもあったのでしょう。

例えばゲームで言えば、『ドラゴンクエスト』的な勇者による魔王討伐の物語が、まずはそのまま受け入れられ、のちに、ツッコミが入れられ、パロディにされ、解体され、「勇者と魔王」という要素で批評的に新しいゲーム(物語)が作られていく。
ジャンルの発展と消費の大きな流れという意味では、こういったものと似たような感じかな、と思います。

ともあれ、このような状況のもと、マンガ版『機動警察パトレイバー』は、1988年に連載をスタートしました。

物語の舞台は、アニメ版での「この物語はフィクションである。…が、10年後においては定かではない」が示すとおり、連載時より10年先の1998年。

それは現代の私たちから見て、15年以上過去の「近未来」の物語。

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というわけでは、シリーズ企画として『機動警察パトレイバー』について、複数の記事を書いてみようと思います。今回はその第1回というか第0回に相当します。

普段は、うんざりする長文を何ヶ月かに1度書くのが、このブログのパターンですが、今回の『パトレイバー』シリーズ記事では、1つの作品キーワードに対して短文テキストを量産する形を取ります。

キーワードは、「泉野明」「篠原遊馬」などのキャラクターや、「第二小隊」「企画七課」などの組織、「イングラム」「グリフォン」といったレイバー(ロボット)など、『パトレイバー』の重要なものになるでしょう。

この企画は、psb1981さん(@takepon1979)との、Twitterでの『機動警察パトレイバー』話がベースになっています。

その時のやりとりをまとめたものはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061


当初はとりあえずツイートを整理して、いつものような長文でブログ記事に仕立て直すつもりでいましたが、このTogetterが想定以上に注目を集めてしまったこともあって、アプローチを変えてみることにしました。

ちなみに、psb1981さんはご自身のブログですでに、「作品キーワードに対する短文」形式で記事を多数書いていらっしゃいます。

カテジナ日記
http://tentative-psb1981.hatenablog.com/


※タイトルの通り、富野アニメ記事も大変刺激的で示唆に富んでいますのでご覧になるとよいでしょう。

見て頂くと分かる通り、まあ詰まるところ、「作品キーワードに対する短文」形式は先行するpsb1981さんの後追いなわけです。これ。こういうのやりたい。

だが、考えてみて欲しい。まったく同じキーワードに対して、複数人がテキストを書くことによって、ひとつのキーワードに異なった視点や情報の厚みのような価値がつくりだせないだろうか。

例えば最初の記事として、psb1981さんは「時代背景」として、当時の日本の社会状況について書いていらっしゃいます。

パトレイバーの時代背景(カテジナ日記)
http://tentative-psb1981.hatenablog.com/entry/2015/04/03/233435


そこで(後追いの)私は、当時の「ロボットアニメ」がどうだったのか?という時代背景について、ほんの触り程度ですが書いてみました。

調べようと思えばどれだけでも調べられてしまうので、今回のテーマは短文だということで割り切ってはいるのですが。
実際、他にも、1988年の「週刊少年サンデー」の状況と『パトレイバー』の登場や、作者ゆうきまさみのキャリアを中心にした当時の背景などさまざまな視点で書くことが可能でしょう。(私には書けないが)

あくまで私が書ける範囲ではありますが、後追いのフォーマットコピーでも別の視点から価値はあると信じて、色々書いていきたいと思います。
ただこういう形式で書いたことがないので、どうなるか私にも分からない。

たとえば今回の自分の文章を見直すと、圧倒的にいつものおふざけが足らないと感じる。
おふざけネタが見つからない、定まらない、という理由で、ほぼ完成したテキストを平気で1週間でも10日でも放置する私には正直落ち着かない。
だが、記事本数を増やすとなればそうも言っていられない。

正直、今回の記事、初回とはいえ、何も言ってないに等しいけどね。
中身の詰まった短文って難しいな……。シリーズトータルでなら価値を見出すことができるだろうか。

私にとっては、バビロンプロジェクトぐらい21世紀への挑戦ですが、昨日の夢が今日の希望、明日の現実であると信じて、一歩一歩着実に実を結ばせていこうと思います。

それでは次の記事へ、<つづく>

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シリーズ記事『機動警察パトレイバー』


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>


同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。

カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー

発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061

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