今回はシンプルに『キャプテン翼』小学生編の構造は実にすばらしい、という話だけをします。
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物語のスタートから、翼、岬、若林らを擁する南葛SCが、読売ランドでの全日本少年サッカー大会で優勝するまでを描くのが「小学生編」です。恐らく最も多くの方の記憶に残っているのは、この小学生編ではないでしょうか。
この小学生編で面白いのは、各キャラクターでの家庭経済格差というものが、きちんと描かれていたことです。
具体的にはまず、若林、三杉、翼あたりを代表とした裕福な家庭のグループ。
特に若林家は絵に描いたようなお金持ちで、お屋敷は大きいし、専用のコーチ(見上さん)まで雇っています。若林が中学で早々にドイツへ旅立てたのは家のサポートも大きかったと思われます。
翼は、さすがに若林ほどのお坊ちゃんではありませんが、外国船の船長をしている父を持ち、アル中おじさん、いやロベルト本郷を居候として養ったり、ブラジル留学を考えている翼の為にポルトガル語の家庭教師をつけてくれる程度には余裕のある家庭です。
もうひとつは、日向に代表される貧しい家庭。
貧しさという意味では、母子家庭の四人兄弟の長男で、小学生からアルバイトに励む日向に勝てるものはいません。
日向は別格ですが、裕福ではない(庶民)ということなら、ほとんどの家庭がこちらに該当するでしょう。
また、経済に限らないハンデまで含めれば、スポーツしづらい雪国でがんばっている立花兄弟(花輪・秋田)や松山光(ふらの・北海道)もひとつのハンデを背負っているキャラクターと言えるかも知れません。身体的ハンデまで含めれば三杉はこちらにも該当します。
さて、この2つのグループを、
翼・若林・三杉に代表される「裕福なグループ」=「ヨーロッパ」
日向に代表される「貧しい(または)庶民グループ」=「南米」
と見立てたとき、この両者が激突する少年サッカー大会は、FIFAワールドカップに相当します。
つまり実際のワールドカップのように、欧州と南米、経済格差のある二大勢力の戦いの構図です。
日向小次郎 貧しさからのサッカーによる脱出
南米(庶民)グループ代表の日向小次郎。
日向の目的は、貧しい家庭に負担をかけずに、より上のレベルでサッカーを続けること。
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サッカー大会での優勝はその目的の為に必要でしたが、、明和FCは準優勝に終わってしまいます。
しかし東邦学園は決勝戦を見て、勝った翼だけでなく、敗れたまた日向もスカウトに値すると判断します。
これにより日向は、裕福でない環境からより恵まれた環境へ、サッカーによって脱出する、という目的を果たすことができました。
これは、日向=南米(庶民)グループという本稿の見立てでいけば、南米の若くて才能のある選手が、ヨーロッパのサッカークラブにスカウトされるようなもの。
現実のサッカーでも普通に行われていることで、例えばFCバルセロナのリオネル・メッシも若くして、祖国アルゼンチンからスペインへ渡っています。
南米(庶民)グループ=日向もまた、前年度優勝の若林のお坊ちゃん(欧州)に挑戦状を叩きつけたこの大会で、華々しい活躍をし、才能とハングリーさを武器に貧しさからサッカーで脱出する結末となっています。
ただ重要なのは、重いものを背負っているがゆえに目的重視のサッカーだった日向が、純粋にサッカーをプレーする喜びや楽しさを取り戻したことです。
それには、主人公大空翼の存在が重要になってきます。
大空翼 欧州&南米ハイブリッドのサッカーカウンセラー
前年度優勝の若林(欧州)vs挑戦者の日向(南米)という構図を踏まえた上で、キーポイントになるのが、主人公大空翼です。
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前述のように家庭環境としては、翼は裕福な欧州グループに分類しました。
しかし彼に大きな影響を与えた、サッカーの師が元ブラジル代表のロベルト本郷であることで、いわば翼はヨーロッパと南米のハイブリッド的な存在になっていると考えます。
翼は日向のように、サッカーを続けるための家庭的ハンデも、三杉のような身体的ハンデもなく、何もコンプレックスを背負ってはいません。
ただ、ひたすらにサッカーというスポーツを楽しむ(ことができる)ように設定された存在です。
そこへロベルトノートの記述にもある通り、「自由」を重んじる南米的なロベルト本郷の教えが加わり、欧州・南米両面の要素を併せ持ったキャラクターとなっています。
結果、翼こそがサッカーの楽しさを1点の曇りなく表現できるキャラクターとして、この作品に君臨します。
彼が、サッカーカウンセラーとして一緒に戦った選手たちの(精神的な)問題を解決していくことが出来るのは、このハイブリッドなキャラクター設定あってこそでしょう。
サッカーがいちばん上手いからではなく、だからこそ大空翼は『キャプテン翼』という作品の主人公なのです。
岬太郎 誰とでも友人になれる移民系サッカー選手
そしてもう一人のキーとなるのは、貧しい日向とも、裕福な翼や若林とも、誰とでも友達になれる男。……そう、ボクは岬太郎。
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岬は、父子家庭であり、放浪画家の父との転校続きの少年時代と、経済的にも豊かには見えない生活からすると、苦労人の日向(南米)グループと言えるでしょう。
しかし岬は自らの境遇を悲しむことなく、抜群のサッカーセンスと人当たりの良さでグループを横断して、どこでも友人を作りサッカーが出来るキャラクターとなっています。
本稿の文脈で岬太郎を例えるなら、彼は「移民系のサッカー選手」ということになるでしょう。
自分のルーツとは関係なく、今いる場所でどこでもサッカーによってつながることが出来る選手。
例えば、岬と縁が深いフランスでいえば、ジネディーヌ・ジダンがアルジェリアにルーツを持つ移民出身でありながら、フランス代表で活躍をしたのが有名ですね。
こうした選手は数多く、岬=移民系サッカー選手という見立てもまた、サッカーでの現実とシンクロするものになっています。
主人公らしくヨーロッパと南米のハイブリッド的な性格を持ち合わせている翼と、世界のどこでもサッカーが出来る移民的な性格を持ち合わせている岬が、「ゴールデンコンビ」として作中最強のコンビネーションを誇るのは、今回の文脈からいけば自然であり必然といえましょう。
決勝戦 合法的な主人公チームの敗北
ここまで説明したように、現実のサッカー世界の縮図のようなキャラクター達が集まった全日本少年サッカー大会。
その大会システムもまた、予選リーグ→決勝トーナメントと、現実のワールドカップと同じものとなっています。(実際の全日本少年サッカー大会も、このシステムであるようです)
この大会システムは、擬似的なワールドカップとなると同時に、週刊少年ジャンプのスポーツ漫画として素晴らしい展開を実現しました。
ちょっと振り返ってみましょう。
翼擁する南葛は、日向の明和と予選グループにおいて同組となり、対戦の結果、南葛は敗れます。
予選1位:明和、予選2位:南葛で決勝トーナメントに進むことは出来ましたが、予選リーグで1位と2位になったチームは決勝トーナメントでは別のブロックに配置されます。
つまりリベンジの機会は、この両チームが決勝戦まで勝ち上がらないと実現されません。
逆に言えば、この大会システムであれば、予選で負けたことがあるチームが優勝することも可能です。無敗のまま、優勝しなくても良いのです。
個人的には、2010 FIFAワールドカップ(南アフリカ大会)において、スペインが予選リーグ初戦でいきなり負けながら、その後勝ち上がって、初優勝を果たしたのを思い出します。(決勝の相手は予選で敗北した国ではないですが)
『キャプテン翼』この大会システムをフル活用しています。
(1) 同じチームとの対戦を、同大会で二回作ることができる。
(2) ライバルチームに一度敗北させながらも、決勝まで進ませることができる。
(3) 二度目の舞台を必然的に決勝戦に設定でき、リベンジ=優勝させることができる。
特に、ジャンプマンガであるにも関わらず、この大会システムによって極めて「合法的」に、主人公チームの敗北を組み込むことができたのは、物語展開の自由度としてかなり大きな意義があったのではと考えています。
例えば、野球における夏の甲子園優勝の物語ですと、予選・本大会を通じて無敗で通すしかありません。(敗北のエピソードは、事前の練習試合などで扱うしかない)
『キャプテン翼』小学生編は、こうして一度予選で敗北した南葛が、決勝戦でリベンジを果たして優勝します。
では、これは日向=南米(庶民)グループの敗北なのかといえば、そうではなく、決勝で翼と戦うことでサッカーカウンセリングを受けた日向は、さまざまな大事なことに気づき、その結果、東邦学園の特待生として、家庭に負担をかけずにサッカーを続けるチャンスを掴みます。
決勝戦の勝敗は、絶対的なものでもなければ、最終的なものでもありません。
彼ら全員のサッカー人生が続いていく、その未来の方が重要です。この先の方が長いのです。
現実のサッカーがワールドカップのあとも続いていくように、彼らのサッカーもこの後、中学生編、ワールドユース編、さらにその先へと続いていきます。
そしてその中心には、欧州と南米のハイブリッドであり、サッカーの自由と楽しさを表現するキャラクター、主人公大空翼がいるのです。
どこまでかというのは不明ですが、『キャプテン翼』小学生で見られるサッカー世界の縮図は、高橋先生が意図してデザインしたものではないかと思っています。日本のプロリーグも、ワールドカップ出場も無かった何十年も前に、と考えると、すばらしいですね。
仮にこれが意図的でなかったとしても、作品は実際にそういう構図になっていますから、すばらしい事には変わりありません。
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おまけ。「ある日の明和FC」
明和FCのタケシ達は、当時、日向さんに結構気を使っていたのではないか。
若島津「いいかみんな。もうすぐキャプテンが練習に来るが、日向さんの前でドラクエ2とビックリマンの話はするなよ」
タケシ「そうですね。ヘラクライストだとか、ロンダルキアだとか……」
日向「ヘラク? ロンダル? ……なんだって?」
いつの間にか、練習場に来ていた日向。
タケシ「う、うわああああああああ! 日向さん!」
日向「ようタケシ。みんな練習してるか? で、ロンダ……何とかはどこのサッカー選手だ?」
タケシ「……イ、イタリアです」
<おわり>
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あとがき
本稿の流れでは主人公翼を、無敵のサッカーカウンセラーと位置づけましたが、そのために主人公にサッカーを楽しむ上でノイズになるような背景を与えず、コンプレックスなしの100%サッカーバカとなっていますので、ある種の狂気を感じないこともないですけどね。

『キャプテン翼』については、過去記事でも扱っていますので、もし宜しければ御覧ください。
基準(物差し)となるキャラクターから考える物語<『スラムダンク』『キャプテン翼』『機動戦士ガンダム』のパワーバランスとキャラクターの格>
今回は、本来準備していた記事が想定より時間がかかる事が判明した時、ひとまずつなぎに更新はしたい、ということで、Twitterでのツイートをベースに最小限の手間で、記事を仕立てました。
経験上、ツイートをベースにしても書き出すと長文にしてしまうので、今回はとにかくひとつの話だけにして膨らませたり、脱線したりしないように気をつけました。(おかげでいつものような、おふざげ要素も少ない=見やすい)
そのため本ブログ愛読者には、今回のようなあっさり風味の記事では物足りなかったかも知れませんが、多分普通のブログ記事ってこんな感じのバランスなのだと思います。
ただ一部マニアの為に、翼の自室のような安心感を感じる記事も用意しますので、お待ち下さい。
ではまた次回の記事にキックオフ!(アニメ『キャプテン翼』次回予告風)
基準(物差し)となるキャラクターから考える物語<『スラムダンク』『キャプテン翼』『機動戦士ガンダム』のパワーバランスとキャラクターの格>
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その多彩なキャラクターが織りなす数々の名勝負が、こうしたジャンルの魅力となるわけですが、とりわけ私は、登場人物間のパワーバランスや、高位キャラクターの「格」を落とさない表現について強い関心があります。
その物語世界で誰が強いのか?
誰かと誰かを比べたときに、どちらが上なのか?
勝敗が発生したときに、その理由をどう表現するのか?
こうした処理が巧みな作品が、個人的には好みです。
具体的な一例を出した方が、分かりやすいですね。
例えば「誰かと誰かを比べた時にどちらが上か?」「高位キャラクターの強さ(格)とは?」という意味で、私が聞いたことがあるのは、バスケットマンガの金字塔『スラムダンク』のこんな話。
海南大附属の王者・牧紳一は本当にすごいのか問題
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「作中随一の実力者であるはずの海南大附属の牧が、あまり強そうに見えない気がする」
牧 紳一(まき しんいち)は、17年連続インターハイ出場の王者、海南大附属高校の主将にして「神奈川No.1プレイヤー」。
作中では、特に一学年下の仙道が自分と同じ位置に登ってきているのを実感するシーンが印象的ですが、「打倒海南」「打倒牧」の面々の躍進に驚く場面も確かに多かったとは思います。
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これは、驚いてやんなっちゃった方の牧。
……ですから、「あまり凄そうに見えない」という気持ちは分からないではありません。
しかし牧紳一というキャラクターは、スラムダンク世界での実力を測る物差し(基準値)になっているのだろうと思います。
物差しと言っても、牧さん自身も日々精進してるわけで、静止した物差しではありません。
それでも牧に対してどこまでのプレイができるか。そして牧による人物の評価が、スラムダンク世界でのプレイヤー格付けになっていますし、それが「全国」への基準として機能しているはずです。
その前提で作中では、仙道や湘北の面々など、牧が同格または実力者であることを認めるプレイヤーが次々に登場していきます。
読者に対して、陵南や湘北もまた「全国」レベルの資格を持っていることに説得力をもたらしているのは、牧紳一の存在あってこそではないでしょうか。
あくまで牧にどこまで近づいたか、であって、限りなく距離をゼロに詰めたキャラクターはいても、結局、神奈川において、牧と海南を超えることはできていません。越えられたらそもそも基準の役割を果たせなくなります。
躍進するライバル達を抑え、無敗で全国行きを決めた牧と海南大附属は、神奈川の王者として結果を出していますし、だからこそ、キャラクターの格は保たれたまま、牧基準による評価も信用できるものとなっていると思います。
『スラムダンク』は、キャラクター間のパワーバランスや、高位キャラクターの「格」を落とさない表現について、複雑かつ巧みであると、個人的には評価しています。
この「作品内での物差し(基準)となるキャラクター」ですが、牧のように最大のライバルが担当するパターンの他には、主人公自身が担当するパターンも存在します。
その代表として、同じジャンプのスポーツマンガ『キャプテン翼』を見てみましょう。
『キャプテン翼』における1v1のタイマン勝負構造
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サッカーマンガの金字塔『キャプテン翼』。
ここでは最初の連載シリーズである『キャプテン翼』全37巻を対象にします。
いわゆる無印の『キャプ翼』です(なぜ無印に絞るのかは各自お察し下さい)。
この作品において、物差し(基準)キャラクターは、基本的には主人公である大空翼が担っています。
ですから強敵と戦う際には、まずは翼くんが1vs1の勝負を挑んで、あっさりと止められる。またはあっさりと抜かれる、といったような場面が多かったりします。
石崎「なにィ! 翼があっさり抜かれた!?」的なシーンですね。
基準である翼くんのプレーが通用しないことで、対戦するライバルキャラの実力を表現する手法です。
翼くんは攻撃的なポジションであり、守備の選手ではないので、サッカー的にはあっさり抜かれても別に何の不思議もないし、問題もありませんよね。
それでも作中で、衝撃を持って描かれるのは、これが現実のスポーツでのポジションや駆け引きの問題ではなく、マンガとしてのキャラクターの「格」勝負の描写だからです。
つまり、戦争のはじめにお互いの軍から代表を出して一騎打ちを行い、戦の勝敗を占うようなもの。
その文脈で見たとき、『キャプテン翼』はもちろんサッカーマンガなのですが、戦いの構造そのものは、伝統的な番長マンガや、ジャンプでいえば車田正美的なバトルマンガの系譜に近いと言えると思います。
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現実のサッカー場(ピッチ)は、本来はタテ・ヨコのある平面と高さが存在する立体的なフィールドですが、『キャプテン翼』のピッチはどちらかといえば、それを再現するよりも直線(リニア)として表現する方向に整理されていると考えます。
つまり、マンガと相性の良い、前後の関係が重要な直線的なフィールド。
進んでいくと敵が現れ、それを倒さないと基本的にはその後ろには行けない。
(迂回するには、当然複数人の協力が必要になる)
連載スタートは『翼』より後ですが、車田正美『聖闘士星矢』の十二宮突破をイメージしてもらうと分かりやすいでしょうか。
さらにいえばこれは、チーム競技でありながら、構造的に1vs1の連続によって展開する為に、マンガというメディアと大変相性が良いスポーツ「野球」の対決構造に近いと言えます。
(ということは同時に、野球マンガとバトルマンガは構造的に近いわけですが)
また、直線的なフィールドで勝負が発生し、それによりラインが上げ下げされる、と考えれば、実際のスポーツでいえば(ルールをあまり知らないが)「アメリカンフットボール」が近いのかも知れませんね。
ただし、そこで重要視されるのは、サッカーの技術や駆け引きというより、それらも含めたキャラクターの「格」そのもの。
作品の基準(物差し)キャラクターである翼は、味方チーム(南葛、全日本)の最強のエースカードでもあります。
その翼があっさり抜かれるような相手であれば、味方は同じように1vs1を挑んでいては誰も勝てない、ということになります。
全日本ディフェンス陣としては、松山、石崎、次藤、早田の4枚スタック(4枚重ね)で必殺シュートをブロックする他ありません。
通常のサッカーではありえないプレーですが、キャラクター格の勝負と考えれば、4枚スタックで少しでも期待値を上げるのは正しいプレーと言えます。
また、球技ではボールのあるところが視点として中心になります。
野球マンガが常にボールを手に持つピッチャーを中心にせざるを得ないことを考えれば、サッカーはボールの移動によって、視点を自由に変更できるバトルマンガともいえます。
中盤の攻防、サイドの攻防、ペナルティエリア内の攻防など、瞬間的なボール移動で戦場を自由に設定可能です。(野球は打球の発生により、視点を守備側、走塁側へスイッチできますが、サッカーほどの自由度はありません)
『キャプテン翼』は確かに現実のサッカーのような、スポーツマンガではありません。
反則になるプレイや物理法則を無視したプレイなど、荒唐無稽なプレイのオンパレードです。
そして今語ったように、そうした表面上のことだけでなく、構造の上でもむしろケンカや野球マンガに近いわけです。
正直、サッカーというスポーツへの理解度が格段に深まった現在から見れば、誰が見てもおかしい、という場面も多いでしょう。
ですが連載開始は、日本のワールドカップ出場どころかプロリーグさえない1981年。
現在とは比べ物にならないほど日本全体のサッカー知識もない時代に、しかも作者の高橋陽一先生は自身にサッカープレイヤーとしての経験もない状態で、サッカーをマンガとしてどう表現するか、かなり苦心したのではと想像します。
その結果、リニア(直線)を意識したフィールドとキャラクター格をぶつけ合うバトルという、ジャンプマンガらしいケンカ(バトル)構造や、同じスポーツの中でも野球マンガに近い構造を導入したのは、やはり偉大な発明だったと思います。
そのあたりを踏まえずに、現実のサッカー観からだけツッコミを入れるのはナンセンスかな、と個人的には思っています。(終始それで終わられても何一つ面白みがないので)
『キャプテン翼』での格の保ち方。強くありたければ試合に出るな
ちなみに、翼くんは主人公でありながら物差しキャラとしても使われるので、どうしても相手の力量を見せるための引き立て役にも良くなっています。いきなりあっさり抜かれたり、止められたり。
それでも主人公としての格が何とか保たれるのは、あきらめずに挑んで結局最後には翼くんが勝つからでしょう。
その為に、翼くんにはとにかくあきらめずにサッカーを楽しむメンタリティ(サッカー狂)と、相手の技を吸収(コピー)して、最後には相手を越えていく、というプレー特性が与えられています。
主人公として、そのキャラクター設定と最終的な勝利が約束されていなければ、普通は「格」は下がるはずです。
「強敵と手当たり次第に戦った上で格を保つ」というのは、それぐらい難しく、翼くんぐらいしかできない芸当ですが、「格」を高く保つためには他の方法もあります。
例えば、翼とは逆に「可能な限り勝負をしない」というのもその方法のひとつです。
この方法を実践しているキャラクターは『キャプテン翼』にもいます。誰でしょう?
……そう、それは全日本ジュニア見上監督の「源三を使います」でおなじみ、SGGK若林源三です。
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『キャプテン翼』(無印)全37巻では、若林がゴールキーパーとして、まともに描かれる形で出場した試合は、修哲対抗戦、小学校決勝、ユース決勝のわずかに3試合のみです。37巻で3試合。それでSGGK(スーパーグレートゴールキーパー)の称号を得ています。
ケガでお休みの若林君の代わりに、皆さん大好き森崎君がゴールマウスを守ることになるわけですが、彼がたくさんゴールを決められてしまうことで、翼がそれ以上の点を取らないと勝てない、というのが試合展開の基本になりました。
つまりかなり初期から、試合展開をロースコアでなくハイスコアゲームにするという方針が決まっていたのであろうと推測されます。
実際に現実のサッカーを見ていると、0-0スコアレスドローでも面白い試合というものはありますが、派手な点の取り合いを選んだのは、当時の判断として正しいと思います。
若林が守れば、どうしても味方の失点が少なくなり、それと同時に翼の得点も少なくなるわけですから。
だから、森崎をキーパーにしておいて、次々と出てくるライバルが多彩な技でゴールを決める。森崎くん一歩も動けない。インディアン嘘つかない。
そして翼がそれ以上の数のゴールを決めて勝つ、という派手な試合をつくることができたわけですね。
Jリーグもなく世界のサッカーも身近でなかった当時としては、やはり少年ジャンプ連載マンガとして正しい選択だと思います。
若林はいわば派手なゲーム展開に邪魔であるがゆえに極端に温存されたわけですが、そのことが彼自身のキャラクターの格を保つことにもつながりました。
いずれの決勝戦も、両チームとも名キーパーを置いた(キャプ翼的には)ロースコアゲームになりましたが、若林の格を下げていないのがここで効いており、両チームともに「いかにして難攻不落なキーパーからゴールを奪うか」というテーマの良い試合になっています。
『キャプテン翼』についてはまだまだ色々書くことがあるのですが、無印以後、わー、という展開になっていくので、ひとまず今宵はここまでに致しとうございます。
『機動戦士ガンダム』(ファースト)における絶妙なパワーバランス
『キャプテン翼』の話が予想以上に膨らんだので、これで終わってもいいんですが、本ブログのメインコンテンツは「富野アニメ」なので、それを期待したお客様向けのお話もしておきましょう。
本当はいつかしっかりと独立した記事でやるつもりでしたが、短めのテスト版のつもりで。
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『機動戦士ガンダム』いわゆるファーストガンダムもまた、全編を通してのパワーバランスの取り方が見事な作品です。
この作品での物差し(基準)キャラクターはご存知、「シャア大佐 ご覧のとおり 変態だ」の句で有名なジオン軍のエース赤い彗星のシャア。
ただロボットアニメですので、キャラクターだけではなく、搭乗するモビルスーツと合わせた状態(ユニット)でバランスを見ていくことになります。
物語初期 最強パイロットvs最強モビルスーツ
最初は皆さんご存知、【シャア+ザク】 vs 【アムロ+ガンダム】 の構図で始まります。
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これは、最強パイロット(シャア)とザクの組み合わせに対して、素人パイロット(アムロ)+最強モビルスーツ(ガンダム)でバランスを取った形です。
連邦のモビルスーツは化物か、でおなじみのRX-78 ガンダムは、戦艦並のビームライフルを持った最強のモビルスーツです。
ザクなど直撃すればひとたまりもありませんが、当たらなければどうということはない。蝶のように舞い、蜂のように刺す、ルンバを踊れルンバを、ということで、赤い彗星シャアにその攻撃は当たりません(部下のザクには当たります)。
一方、シャアザクからの蜂のような攻撃も受けても、ガンダムは平気です。
ガンダムは、ちょっとやそっとで傷つかないスーパーロボットですから。
敵味方通じてずば抜けたシャアの手練ぶりと、そのシャアでも直撃すれば終わりの攻撃力と、シャアでも落としきれない防御力を持つガンダムの化物ぶりが共に強調される構図になっています。
この「アムロの攻撃はシャアに当たらない。シャアの攻撃は当たっても致命傷にならない」
という初期状態を良く覚えておいて下さい。
この時点でただの素人であるアムロが死なずに済んでいるのは、完全にガンダムの機体性能のおかげですが、ここから徐々にアムロ自身がパイロットとして成長していきます。
物語前半 シャアお休み期間のアムロの成長
アムロが徐々にガンダムに慣れていく中で、シャアは左遷され、ガンダムの前から姿を消してしまいます。
変わって登場してくるのが、ランバ・ラルや黒い三連星など新たな敵。
アムロの成長で、 【アムロ+ガンダム】 のユニットは総合力を増していきますが、ジオン軍が次々と新型のモビルスーツを導入することで、戦闘バランスが調整されています。
【ランバ・ラル+グフ】のユニット。ザクとは違う新型。
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【黒い三連星+ドム】のユニット。新型に加え、レツゴー三匹のコンビネーション。
「ガイアでーす」「マッシュでーす」「……ミデア春夫でございます」←オルテガハンマーという伝統芸。
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いずれも手練のパイロットに加え、新型のモビルスーツに、アムロは苦戦を余儀なくされます。
つまり「アムロのパイロットとしての成長」に対しての「より強力な新型モビルスーツ」。
この2つが大きく変化するメインのパラメータ。
ただランバ・ラルが言うように、彼と戦った時点ではまだガンダムの機体性能で勝っていた部分も大きかったのでしょう。
実際、ガンダムの機体の方にも、化物的なスペックの他に、成長型コンピュータだのサポートメカだのありますが、成長も運用もアムロによるものですし、不自然なほどの急成長を遂げる主人公ですから、大きな変動はアムロ自身によるもの、と言っていいでしょう。
次々現れる新型モビルスーツに苦戦しながら対応していく(対応できてしまう)アムロ。
これにより、いつも画面にはハラハラ・ドキドキの熱戦が繰り広げられたわけです。
シャアの左遷とその復活は、物語全体のパワーバランス調整として意図されたものではありませんが、結果的にこれはシャアにとっては幸いしたと思われます。
アムロの快進撃に対して必然的に求められる負け役、つまりガイアの言う所の踏み台の役割を他に任せることができた為です。
もしもお休みなしの出ずっぱりであれば、出撃しては不利になって撤退するという、『Zガンダム』におけるジェリドのようなキャラクターにも成りかねません。
自分に得がないならいっそ戦わない(出演しない)方が良い。
これはつまりSGGK若林君と同じキャラクター格の維持テクニック。
ここで出演がなかったことは、シャアにとって幸運であったといえるでしょう。
物語中盤 復活のシャアと互角の戦い
シャアはジャブロー攻防戦にて、再びアムロの前に姿を現します。
アムロもかなり成長をしています。当然、シャアザクではバランスが取れません。
ジャブロー基地潜入の為もあって、シャア専用ズゴックに乗っての登場です。
シルエット的にスマートとはいえないデザインの水陸両用モビルスーツですが、早速すばやい動きからのジムへの一撃で、他と違うことを見せつけます。アムロは確信します。シャアが、赤い彗星が帰ってきたと。
このシーンは、パイロットであるシャアと共に、ズゴックというモビルスーツが最高に格好良いものとして高められた瞬間です(特にTV版)。
このジャブローでの 【アムロ+ガンダム】 vs 【シャア+ズゴック】 あたりの戦いが、ユニットとして、シャアとアムロの強さの均衡が取れている時期ではないかと、個人的には思います。
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最終的に損傷を受けてシャアのズゴックは撤退しますが、戦闘の内容自体は一進一退、双方お見事といえるものになっているのではないでしょうか。
問題は、シャアとアムロがこの時点で互角だとしても、物語はまだまだ中盤であることです。
中盤にして、すでにアムロはシャアに追いついてしまいました。さらにここからバランスはアムロ側に傾いていきます。
物語後半 ニュータイプを止められるのはニュータイプ
再度、宇宙に上がって後半戦へ。
アムロはさらに熟練し、ニュータイプへの覚醒が進みます。
【アムロ+ガンダム】 vs 【シャア+ゲルググ】 あたりになってくると、シャアは乗機のレベルをゲルググにまで上げていますが、それでもアムロの方が優勢をとってしまう、という状態に突入してしまいます。
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あの赤い彗星が新型機ゲルググに乗ってすら、ガンダムを止められない。
いや、ガンダムの機体は基本的には変わっていないわけですから、止められないのはアムロなのです。
ただこれは恐らく構成どおりの展開で、要するに目覚めたニュータイプを止めるには、同じくニュータイプが必要だ、という展開に移行していきます。
この段階でのシャアは、シャリア・ブル、ララァなどニュータイプと比較される対象となっています。
赤い彗星として、この物語の基準であり物差しであったシャア・アズナブルの前に、「ニュータイプ」というこれまでになかった存在が登場し、これまでとは全く違う、新しい価値基準が提示されていく。
ニュータイプに勝てるのはニュータイプだけ。縮退炉に勝てるのも縮退炉だけ。
そこには赤い彗星のこれまでの輝かしい経歴も無意味なのです。
ほんの少し前まで軍と縁のなかったララァに「大佐、どいてください、邪魔です」と言われる展開など、誰が想像したでしょう。
一方、そのニュータイプであるアムロはさらに成長を続けます。
ついには彼の成長にガンダムの機体性能がついていけなくなり、マグネットコーティングを施して、ようやくアムロに適応できるようになります。物語前半と違い、完全にアムロがガンダムを従える形になっており、主従が逆転しています。
戦いの構図は、 【アムロ+ガンダム】 vs 【ララァ+エルメス】 に変わり、ここでシャアが割って入ったことで、宇宙世紀最大の悲劇が生まれます。
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序盤を見ていた頃には想像すらしていなかった。
アムロとララァの戦いの蚊帳の外に置かれ、小さな嫉妬から介入するも、ララァが生命を賭してかばわなければ簡単に死んでいた存在。
物語のはじめに強さの基準にもなったキャラクターが、まさかそんな存在になるなんて。
でも強さの基準だったからこそ、シャアをこの状態に落とす必要はあったといえましょう。
それは最終決戦において明らかになります。
物語最終局面 一撃死ビームが当たらない
そして迎えた最終局面。
シャアは未完成で未テストながらも強力なモビルスーツ、ジオングを手に入れます。
これにて戦いは最終構図、 【アムロ+ガンダム】 vs 【シャア+ジオング】 となります。
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シャアは乗機をさらにグレードアップさせ、オールレンジ攻撃とガンダムと言えど直撃させれば一撃で葬れるほど強力なビームを手に入れました。
物語初期においてシャアザクでどれだけ直撃させても、ガンダムを落としきれなかったことを考えれば、ジオン(シャア)側のパラメータ変動値である「モビルスーツ性能と攻撃力」がいかに増大したのか分かりますね。
と・こ・ろ・が。
シャアが直撃でガンダム倒せるビームを手に入れた時には、アムロにはその攻撃自体が全く当たらなくなっているのでした。
ガンダム側の変動パラメータである「アムロのパイロット能力」は、ニュータイプとしての覚醒も加えて、こちらもとんでもないことになっており、オールレンジ攻撃だろうが、強力なビームだろうが、滅多なことでは当たりません。
つまり、攻撃力のインフレに対して、回避力の上昇でバランスが調整されていることで、最後までどうなるか分からない戦闘バランスが維持されています。
そしてガンダムvsジオングの戦闘結果は、皆さんご存知のとおり。
ジオングが強力なビームで、ガンダムの頭部、片腕の破壊には成功したものの、撃墜には至らず。
ガンダムはオールレンジ攻撃をくぐり抜け、ジオングを撃墜しています。
ジオングヘッドでかろうじて脱出したものの、無人オートのガンダムにラストシューティングを食らうので、ジオングはパイロット・アムロとモビルスーツ・ガンダム、それぞれに1度ずつ合計2度撃破されたと言ってもいいかも知れません。
余談 第42話ラストのナレーションについて
さて、ここから意図的に少し脱線しますが、この最終決戦に関しては、第42話「宇宙要塞ア・バオア・クー」ラストで、シャアの心情を説明するナレーションが入るのが印象的です。
ナレーション(永井一郎さん)「シャアは激しい焦りを感じ始めていた。ニュータイプ用に開発されたこのジオングのパワーを最大限に発揮できぬ自分に。あのガンダムのパイロットは今確実に自分を追い込んでいる」
最終決戦の主人公とライバルとの戦闘中に、ライバル側が押されて激しい焦りを感じている、とナレーション說明するなど、普通のアニメであればありえません。
しかも次回である最終回を見て分かるとおり、ここからシャアが逆転するわけではなく、ナレーション通りにジオングを最大限生かせないシャアは、アムロに追い込まれて、そのまま撃墜されています。
つまりシャアは、ロボットバトルにおけるラスボスでありながら、「弱者」として、ナレーションで心情を吐露されているわけです。なぜこのような事をするのか。
個人的に考えるに、これは要するにシャアが「人間」であるという說明(表明)であろうと思っています。
弱くて、焦ってしまって、どうしよう?このままだとやられちゃうよ!と考える、ごく普通の人間の心理です。これには、私たちも自然に共感できるはずです。
では「人間」シャアは、何と戦ってこんなに不安がっているのか。追い詰められているのか。
それはもちろん恐ろしく強い「ニュータイプ」アムロです。物語の主人公です。
しかし、ナレーションが心情を語り、心を寄せる対象は主人公アムロではなく、シャア・アズナブル。
この場面において、私たち視聴者も「人間」シャアをより身近な存在として感じ、「ニュータイプ」アムロとはそれより距離を感じているのではないでしょうか。
なぜなら、見ている私たちもシャアと同じ「人間」にすぎないのだから。
ガンダムに乗ってシャアを追い詰めていくアムロは完全に「ニュータイプ」であり、普通の人間の世界というよりニュータイプの世界、いわばララァの領域により近いところにいる。
この後アムロは、ガンダムという機体を失って、シャアにザビ家打倒の目的をスイッチし、ホワイトベースクルーの「脱出」をサポートし、己自身の「脱出」を探る中で、アムロは「人間」に近づいていく。ララァの所へ行くことをやめ、ホワイトベースの仲間達の元へ戻ることを決意する。
最終話のサブタイトル「脱出」は、アムロが人であらざる領域、ララァの住まうところから脱出し、「人間」の世界へ帰還する、という意味にも考えられるのかも知れない。
宇宙要塞ア・バオア・クーという胎内の中で、甘美なララァの母性に閉じ込められるよりも、辛いことが待っていようと外の世界へ飛び出した方がいい。幸せなことに自分を呼んでくれる仲間もいる。
それは胎内からの脱出であり、これまでの自分の死と再生であり、アムロにとっての新たなバースデー(誕生日)でもある。
この時、コアファイターの風防を鉄板で覆い、外の世界が見えない状態になっていたのも象徴的だ。
(ちなみに、シャアは『逆襲のシャア』においてサザビーの脱出コクピットでこれと同じ状態を体験する)
これを踏まえると、シャアの焦りを語るあのナレーションは、「人間」vs「ニュータイプ」の構図をはっきりさせ、かつ視聴者の心情をむしろシャアに寄せ、アムロとの距離を感じさせるような効果があったのではないか。
だからこそ次回最終話「脱出」で、アムロが(私たちと同じ)人間の世界に帰ってきてくれたことを、その選択をしてくれたことを、より感動的なものにするのではないだろうか。
なので、色々問題があったとしても、やはり劇場版よりTV版が私のベースであり、いちばん好きなのです。
まとめ 全編に渡るバランス調整と新しい価値観の提示
さて、意図的とはいえ思い切り脱線しましたので、話を戻しましょう。
『機動戦士ガンダム』全体の戦闘バランスを見てきたわけですが、アムロの成長曲線に合わせた、新型モビルスーツの登場によって、最後までゲームバランスが調節されていたのがお分かり頂けたのではないかと思います。
ポイントはどちらかが完全有利というわけではなく、常に緊張感とワクワク感のある戦闘バランスをキープすること。
『機動戦士ガンダム』の場合は、さらに「ニュータイプ」という概念によって、これまでの価値観を崩しており、つい先日まで戦いに縁のなかった少女が、赤い彗星を邪魔な足手まとい扱いするようなパラダイムシフトが発生しています。
その中でニュータイプとして強すぎる力を持つアムロは戦場では無敵でも、一個人としては先鋭、孤立化していく。
覚醒していくにつれ、従来のロボットアニメで発生するようなピンチをくぐり抜けてしまうアムロ。
例えばマ・クベとのテキサスコロニーでの攻防。
マ・クベは周到な罠を仕掛けて、ガンダムを攻撃し、また誘導しますが、消耗こそするものの致命的なダメージを負うことなく、マ・クベのギャンの前に立っています。(この時点でマ・クベの敗北確定)
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従来のロボットアニメであれば、マ・クベのやり方は十分知的でいやらしく、主人公のピンチとして成立するものでしょう。
実際、物語前半にはマ・クベの策によって、ホワイトベースは大ダメージを受けています。
ですが、テキサスコロニーの頃には『機動戦士ガンダム』の物語はすでに変わっていました。
マ・クベの作戦を、アムロはただただ小賢しいものとしてしか感じなかった。
これはある種の象徴的なものだと考えても良いと思います。
とはいえ、ニュータイプは神様ではありませんので、アムロにピンチが訪れていないわけではありません。
例えば、物語終盤におけるアムロ最大のピンチは、ララァに「なぜあなたはこうも戦えるの?あなたには守るべき人も守るべきものもないというのに」と言われた時でしょう。
アムロの存在と、そしてこれまでの戦いを根本から揺るがす攻撃です。
戦場で敵なしのアムロは、これに対して「だ、だから、どうだって言うんだ?」としか反論できませんでした……。
ここまで書いた『機動戦士ガンダム』の戦闘バランスについては、アムロの成長曲線や、ジオンモビルスーツのグレードアップ、パイロット+MS=ユニットの戦闘指数なんかをビジュアル化して、分かりやすくすれば、独立した記事として面白いものになると思っています。
(いつか、時が熟したら……人の革新を私は待つ)
ということで、ガンダムの話になると色々脱線するおかげで、何の話か分からないような感じになってしまいましたが、バトル(スポーツ)物におけるパワーバランスと、キャラクターが持つ「格」のコントロールのお話でした。
安易な方法として、高位とされるキャラクターをボコボコに負かせば、ぽっと出のキャラクターでも「強い」という表現には一応なります。しかし単純にそれをやるのは下策中の下策であり、上手な創作者ほどそれをもっと巧みに、誰の「格」も落とさないような形で表現できます。
そういう方が私は好みですね。
このテーマは色々切り口が考えられますので、また機会があれば書いてみたいと思います。
また、すでに書いた過去の記事で、このテーマにつながるものもあります。
例えば『逆襲のシャア』における、νガンダムとサザビーの死闘について。誰もが名勝負と認める戦いですが、結果はアムロの圧勝です。シャアの格を出来るだけ落とさずにその結果にするためにはどういう工夫が必要でしょうか?
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もうひとつ。『キャプテン翼』のバトル構造が、1vs1を基本としたものであり、格闘(ケンカ)ものや、野球に構造が近い、という話をしましたが、その中で野球というスポーツが持つ物語上での機能を検討した記事。
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あとは……くっ! ガッツが たりない。
私が一番好きなキャプ翼ゲーム技は、岬のムーンサルトパスカットです。
それではまたお会いしましょう。
この企画は、Twitterでのマンガ版『機動警察パトレイバー』語りがベースになっています。
執筆者は現在のところ、以下の2名です。
執筆者: psb1981さん ( @takepon1979 )
ブログ: カテジナ日記 ( http://tentative-psb1981.hatenablog.com/ )
執筆者: highlandview ( @highland_view )
ブログ: HIGHLAND VIEW 【ハイランドビュー】 ( http://highlandview.blog17.fc2.com/ )
「泉野明」「企画七課」「イングラム」など、作品キーワードに対して文章を書き連ねていき、その集合によって、マンガ版『機動警察パトレイバー』とは何かについて語れたら良いな、と思っています。
以下の目次では「キャラクター」「組織」などのキーワードジャンルで、記事を分類しています。
記事を書いた順番とは異なりますが、どの記事から読んで頂いても、取り上げたキーワードに関しては問題ないはずです。
興味のあるところから、お読み頂いても結構ですので、お好きにご覧ください。
1.基本設定
時代背景・基本設定
・パトレイバーの時代背景(カテジナ日記)
・1988年に生まれた、1998年の物語<時代背景>(HIGHLAND VIEW)
2.警視庁
警視庁 特車二課
第二小隊
・特車二課 第二小隊 ~バブルからの疎外~(カテジナ日記)
泉 野明(いずみ のあ)
・泉野明 ~少年少女~(カテジナ日記)
篠原 遊馬(しのはら あすま)
・篠原遊馬 ~ロボットに乗れない男の子~(カテジナ日記)
太田 功(おおた いさお)
・太田功 ~暴走する正義の男~(カテジナ日記)
・悪・即・弾 その男、凶暴につき<太田 功>(HIGHLAND VIEW)
進士 幹泰(しんし みきやす)
・進士幹泰 ~家庭人~(カテジナ日記)
・MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<進士 幹泰>(HIGHLAND VIEW)
山崎 ひろみ(やまざき ひろみ)
・山崎ひろみ ~元祖草食系男子~(カテジナ日記)
・コワモテの優しい巨人<山崎 ひろみ>(HIGHLAND VIEW)
熊耳 武緒(くまがみ たけお)
・熊耳武緒 ~パイロットのパイロット~(カテジナ日記)
・第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<熊耳 武緒>(HIGHLAND VIEW)
香貫花・クランシー(かぬか・クランシー)
・香貫花・クランシー ~女・太田功~(カテジナ日記)
後藤 喜一(ごとう きいち)
・後藤喜一 ~学校の先生~(カテジナ日記)
第一小隊(南雲 しのぶ)
・特車二課 第一小隊 ~女性が率いる部隊~(カテジナ日記)
整備班
・榊清太郎 ~職人~(カテジナ日記)
3.汎用多足歩行型作業機械「レイバー」
レイバー(労働者)たち
・パトレイバーの労働者たち ~3K労働~(カテジナ日記)
・政治のレイバーと経済のレイバー(カテジナ日記)
篠原重工製レイバー
・AV-98 イングラム ~父の力~(カテジナ日記)
・イングラム不正入札疑惑 ~父との決別~(カテジナ日記)
・AVS-98 イングラム・エコノミー ~正義の値段~(カテジナ日記)
シャフト製レイバー
・ブロッケン ~政治のレイバー~(カテジナ日記)
・Type-J9 グリフォン ~趣味のレイバー~(カテジナ日記)
4.立ち塞がるものたち
テロリスト
・地球防衛軍 ~エコ左翼~(カテジナ日記)
シャフト・エンタープライズ
企画7課
・企画七課 ~光画部~(カテジナ日記)
内海(うつみ)
・内海課長 ~スキゾ・キッズ~(カテジナ日記)
黒崎(くろさき)
・黒崎 ~企画七課のゴルゴ13~(カテジナ日記)
バドリナート・ハルチャンド(バド)
・バドリナート・ハルチャンド ~非実在青少年~(カテジナ日記)
シャフト・セキュリティー・システム(SSS)
・SSS(シャフト・セキュリティ・システム) ~悪の古典~(カテジナ日記)
東都生物工学研究所
・廃棄物13号 (前) ~特撮の伝統~(カテジナ日記)
・廃棄物13号 (後) ~暴走する父の力とイングラム~(カテジナ日記)
5.『機動警察パトレイバー』の物語とは
世界観・全体像
・パトレイバーの世界観(カテジナ日記)
総論・まとめ
・泉野明はRight Stuffだったのか? ~パトレイバーの正義~(カテジナ日記)
・篠原遊馬の挫折 ~そして久世駿平へ~ - カテジナ日記(カテジナ日記)
・赤ちゃんロボットとしてのイングラム ~パイロットはお母さん~(カテジナ日記)
・ゆうきまさみは何に挑んだか ~顔のない父~(カテジナ日記)
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目次を見渡して、「ほとんどカテジナ日記じゃないか」というお気持ち、全くそのとおりです。
これは、psb1981さんが30以上の記事を書いているにも関わらず、私が5本(2015/11現在)しか書いていないという非対称性からくるものですが、最終的には同じぐらいの分量になるはず……いや、なります。
どうかバビロンプロジェクトの工期のような気持ちで見守って頂ければ幸いと存じます。
第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>
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そんな熊耳 武緒(くまがみ たけお)は、特車二課の学級委員。
このシリーズ定番ですが、まずはWikipediaで基本プロフィールを参照しましょう。
警視庁警備部特科車両二課第二小隊員。二号機バックアップ(指揮担当)(→一号機バックアップ(漫画版))。階級は巡査部長。兵庫県西宮市出身。通称お武さん(おたけさん)。
漫画版では2巻で初登場、進士に代わって二号機バックアップを務めることになった(この事情は漫画版あらすじ参照)。操縦技術に関しては隊内でも1、2を争うほどだが、指揮やバックアップ要員に向かずそもそもフォワードをやる以外に使い道がない太田の存在により、指揮担当となる。
テレビアニメ版では帰国した香貫花の後任として、第26話で初登場。ゆうきまさみによると本来第二小隊の重石になるはずだった香貫花の代わりに急遽用意したキャラで、詳しい設定が固まらない内に登場することになったという。
文武両道に秀でた才媛で、自分にも他人にも厳しく律する性格の持ち主である。漫画版では、傍若無人な太田が恐れて敬語で接する唯一の同僚で、他のシリーズでもその面が強調されることが多い。後藤の期待を汲む形で自身を「学級委員」と位置付け、第二小隊の面々をまとめる副隊長的な存在。ただし、普段はわりと気さくに接しており、まとめ役としての気配りも行き届いている。事実上、後藤の右腕で彼女に丸投げされている業務(データ解析、訓練計画の策定など)も多い。
中国返還前の香港警察への派遣時代、シャフトエンタープライズのリチャード・王(=内海)とは、ただならぬ関係にあった。
Wikipedia:「熊耳 武緒」より
まず有権者の皆様に分かって頂きたいのは、太田功はフォワード(パイロット)をやるしかない、ということ。このあたり、太田はやはりジャンプやマガジンの主人公体質なところがありますね。
問題は進士によるコントロールが全く効かないことで、かくして太田を抑え込めるキャラクターとして熊耳が登場しました。
階級も太田より上ですが、それに加えて登場時でのイングラム同士の格闘戦でも、生身の柔道でも負けた太田はおとなしく熊耳に従うことになります。ケンカ番長的ルールに従うところも太田のジャンプ・マガジンキャラっぽいところですね。
太田を抑えられる熊耳が揃ったことで、第二小隊は人材配置の上ではチームとして完成しました。
ですが基本的に第二小隊は常に人間関係が不安定であり、熊耳もそれと無関係ではありません。
彼女が実質的には副隊長のような仕事をしながら、担任の後藤先生をサポートする「副担任」ではなく、「学級委員」であるのは、問題を持つ未完成なクラスメイト(学生側)のひとりだからなんでしょう。
スキがなく、替えの効かない重要なプレーヤー
そんな熊耳さんなんですが、基本的には役割(立ち位置)としてのキャラクターの面が大きく、内面的な役割を担当するために生まれたキャラクターではないと思っています。
これは役割重視のキャラは、内面的なキャラより劣る/深みがない、ということでは全くありません。
特にこの作品がある種の「チーム物」である以上、キャラクターごとに分担する役割こそが最も重要とも言えます。
その役割(立ち位置)論でいえば「太田を抑えられるキャラクター」というのは、物語上、絶対必要なキャラクターです。それが出来るのは第二小隊6人の中では熊耳だけであり、替えの効かない重要なプレーヤーだと思います。
また、男性(遊馬)指揮による女性フォワード(野明)と、女性(熊耳)指揮による男性フォワード(太田)というコンビ対比的にも必要でした。
これはのちに、男性コンビ(遊馬&太田)と、女性コンビ(熊耳&野明)の対比も見せます。
文武両道に秀でた才女で美人。自分にも他人にも厳しく律することができ、「学級委員」の役割を自覚して動けるキャラクター。
スキのない、完璧なポジショニングですね。
人には誰しもあるもので
では「欠点」をつくりましょう、というのがキャラクター造形上の当然の流れ。
香港時代は「切れたナイフ」と恐れられた、我らが熊耳武緒巡査部長にも、欠点はいくつかございます。
- オカルトが大の苦手
- 香港時代のアレ(欠点というかトラウマ)
また、生まれ育ちに加え、大人になってからの香港のアレも大きな影響を及ぼしてそうな性格的な問題として、以下のようなものもあります。
- 悩みを貯めこむ自爆型(野明の予想による)
- 破滅型の行動(内海の指摘による)
「オカルトが苦手」というのは、もうこれは、ドラえもんがネズミが苦手のようなもので……もしかして、佐倉 魔美(エスパー魔美)の「幽霊が苦手」から来ているとか?
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これは要するに完璧に見えるキャラに、人間味あふれる、かわいらしい弱点をひとつ付けておく、といったものでしょう。そういえば、絵心が足りない、というものもあったな。それも同類ですね。
かわいらしいこれらとは異なる弱点が、彼女の大きな傷となっている「香港のアレ」です。
今夜はお前とビクトリアピーク
基本的にポジションキャラである熊耳さんは、立ち位置と他のキャラクターとの関係性で語るべきなんだろうとは思います。
ただ「対太田」「学級委員」ではそれこそ役割面での意味が大きく、熊耳自身のパーソナリティというよりは物語構造的な視点になってしまうでしょう。
となれば、彼女に迫るには、やはり「リチャード・王(ウォン)」しかない。
中国返還前の香港警察への派遣時代、シャフトエンタープライズのリチャード・王(=内海)とは、ただならぬ関係にあった。
これがいわゆる「香港時代のアレ」。
当時の熊耳とリチャード・王(ウォン)は、男女の関係にありました。
ビクトリアピークで夜景を見たあと、リチャードの下でウォンウォンと声を上げていたわけです(最低)。
しかしリチャードの正体を知らない熊耳は、結果的に利用され、香港からの逃亡を許してしまう。
内海は単に利用するための道具だけでなく、女性としての熊耳自身にも魅力を感じていたんでしょうが、そこはそれ。利用できるものは立った親どころか上司やテロリストでも利用するのが内海。
肝心な当時の2人の関係については、再会時の描写でニュアンスは伝わるが、直接的なものは熊耳によるわずかな回想シーンしかありません。
それは「優秀な仕事をする女性が、笑顔が印象的な男にコロッとだまされた」という、よくある感じのわずか6ページのダイジェスト風回想。
色々と考えるには情報は足りない……。
しかし足りないのは「そこに深いものが隠されている」のではなく、物語進行上あれで十分なのだと思った方がよいと思います。
だから描かれなかったところをあれこれ想像し、レッテルを貼ったりするのは筋が悪い。
むしろあのダイジェスト回想程度で「すべて(必要十分)」と考えた方がいい。
それにそもそも、あの回想シーンは熊耳によるものですが、彼女が見たのはあくまでも「リチャード・王」という一面でしかなく、内海と呼ばれる人間の全体像ではありません。
だまされた香港当時も、そして呼び出されて捕まった時も、内海は彼女の理解の外にある。
内海たくらみブラが送られ恥ずかし乙女
そうなると、お固いクラス委員長が、チャラいメガネに骨抜きにされたり、「くっ、殺せ」とにらみつける男勝りの強い女騎士があんなことになったりするような、太田より強いのにリチャード・王にはコロッとやられるみたいな話をするしかないのだろうか、と最初は思いました。
ただ、それをすると恐らく「女性とは」「男と女の関係とは」のようにビッグ主語で、(情報のディティールが無いから)一般化させた曖昧な話をすることになるでしょう。
それは全く気が進まないし、フィクションのキャラクターを利用して「女性」や「男女関係」を語るほど、私は経験も見識も持ち合わせていない。(そういうのは羅将ハン的な人にお任せします)
ですから熊耳&内海問題に関しては、視点を変えて、「なぜ物語の終盤から最後まで、熊耳は内海の隣にいたのか」という問題設定で考えてみようか、と思います。
これだけですとまだ「いやおタケさんも女だからさ」「女心っていうのはさ」みたいな勘違いを生む可能性がありますね。
また作中で、黒崎くんは「ギリギリまで背後関係を調べるつもりだろう」と言っていましたが、これは彼の推測でしかないし、私はどちらかといえば熊耳の動機より、物語的な機能に興味がある。
より正確にいえば「熊耳を物語最後まで、第二小隊メンバーではなく、内海側に置くことで、得られる物語とは何なのか」という感じでしょうか。
ポイントとしては以下のあたりになるでしょう。
- なぜ熊耳を内海に捕らえさせ、物語最後まで一緒に行動する物語展開にしたのか。
- 企画七課vs第二小隊の最終決戦に第二小隊の仲間として何も関与していないのではないか。
- 最終的に内海もジェイクが刺し、内海問題についても解決に関与できていないのではないか。
ここまで熊耳にポジションキャラとして役割(使い道)が大きいと書いてきましたが、内海による呼び出し以降は、「学級委員」「対太田決戦兵器」という彼女を構成する大きなポジションが喪失します。
これまでのキャラクター性の拠り所であったポジションを失い、ブラも失った熊耳武緒とは、そして彼女にとっての戦いとは何なのか。
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何も考えてない「愚かな女」の行動なのか?
あれこれ考える前に、熊耳と内海の再会後の流れについて整理しておきましょう。
再会と拒絶
(1)内海に呼び出され、倉庫で再会
(2)ホテルで香港時代の回想、そのあと内海を拒絶
(3)内海が後藤へ電話。熊耳とバドの交換を申し出るが、人質にしている証拠もないしで断る。
(4)眠らされた熊耳は、ブラジャー取られて、人質の証拠品として特車二課(後藤)の元へ送られる
二課襲撃と人質価値の消滅
(5)特車二課にブラジャーが届き、熊耳が囚われていることが確定。
(6)内海から後藤へ二度目の電話。福島課長が交換取引を拒絶。
(7)内海による特車二課襲撃。熊耳は、内海、黒崎らと同じ車内に。
(8)バドが内海のもとへ。これにより交換要員としての熊耳の価値はなくなる。(内海は海外逃亡に同行させるつもり)
グリフォンvsイングラム決着
(9)イングラムに野明を乗せてから、内海、二課から撤退を開始。
(10)内海と熊耳を乗せた車、グリフォンとイングラムの戦いを車載テレビで見ながら移動。
(11)車はトンネルに入り、電波状況によりテレビで戦いの様子が確認できなくなる。
(12)サロンバスに乗り換えて脱出。電波状況回復。グリフォンの敗北をここで確認。
海外脱出と内海の最期
(13)内海と熊耳を乗せたサロンバスは晴海へ。黒崎は熊耳を排除をしようとする(内海が止める)
(14)晴海客船ターミナルに到着。熊耳は変装させられ、海外へ連れて行かれそうになる。
(15)海外逃亡直前、熊耳は監視に気付かれぬよう、香貫花に自分の存在を伝える。
(16)内海、熊耳の目の前でジェイクに刺される。
呼び出されて以降は、内海に振り回され、感情を揺さぶられ、また駆け引きの道具としても利用されてしまっています。
そもそも熊耳も本気で抵抗したり、逃げ出したり、といった行動も見せていません。
(これについては作中で内海からの指摘があります)
このため、内海のエスコートにより、彼のとなりでおとなしくイングラムvsグリフォンの最終決戦を見届けることになります。
客観的に見れば、後藤や香貫花と連絡が取れなかったとはいえ、ノコノコと一人で出かけていって捕まり、囚われの身で何も出来ないまま、戦いの決着はついてしまいました、となります。
そうですね。例えばキャラクターを、物語中で戦力的に役に立ったかどうかだけで判断するようなタイプの方から言わせれば、「足を引っ張った」「無能」「仕事放棄」「恋愛脳」「ノーブラ・ジャックナイフ」みたいな批判を受けるのかも知れませんね。
私自身も連載当時、最後まで内海のそばにいたわりに、おタケさんの行動による大逆転とか、最後の最後でだまし返す(意趣返し)みたいなこともなく、不確定要素のジェイクで決着したことに、あまりすっきりとしていなかったような気がします。熊耳さんはいったい何のためにあのポジションに最後までいたんだろう。
そして連載終了から20年以上が経過した2015年。
このシリーズ記事を書くために、15年ぶりぐらいにマンガ版を読み返して、当時疑問だったことが少し分かったような気がしました。
熊耳さんが「第二小隊の学級委員」を捨ててでも、「内海のとなり」のポジションに移る意味はあったと。
グリフォンvsイングラムに重ねられたもの
そのひとつは、グリフォンvsイングラムの最終決戦。
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熊耳さんが参加していないと言いましたが、この一騎打ち自体には、特車二課のメンバーは誰も参加できていません。
襲撃された二課棟に閉じ込められた後藤たち。(のちに解放)
福島課長を人質に取られて手を出せなくなり、無力化された太田の二号機。
指揮車で外にいた遊馬も捕まってしまい、完全にバドと野明、2機のレイバーだけでの戦いです。
これこそが警察署の襲撃という手段まで選んで、内海が望んだ最終決戦のかたちです。
しかしこの結果は、後藤の言う通り、泉野明の「圧勝」に終わります。
共に「趣味のレイバー」のパイロットに選ばれたバドと野明。結果の違いはレイバーに乗り始めてから得たものの違いが大きいですが、これは「泉野明」の項などで詳しく語りましょう。
内海の誤算はいくつかあるでしょうが、ひとつはこのパイロット泉野明の資質を見誤ったこと。
もうひとつは、泉野明を見誤ったことによって、バドと野明の違いを見誤ったこと。
そしてイングラムという機体とそれを支える力を見誤ったこと。
イングラムを、いつも最高の状態にしてくれている整備班の働き。
描写は少ないが、恐らくコンピューター系のサポートを色々してくれたであろう進士。
描写は少ないが、気配りやメンタル面も含めて、バックアップに徹してくれたであろう山崎。
1号機とは違う特徴を持ち、コンビとしてライバルとして、模擬戦の相手や反面教師にもなった太田。
口は悪いが、育ちもあってレイバーに詳しく、野明をのせるのが上手かった初代パートナー遊馬。
そして、二代目パートナーとして野明と一号機を育て上げてきた熊耳。
(さらにいえば、これらをキャスティングした後藤隊長)
イングラムの能力は、多くの公務員の手により、長年の運用の中で丹念に練り上げてきたもの。
そこに熊耳も1号機バックス(指揮)として、重要な役割で参加しています。
だから、グリフォンvsイングラムは、バドvs野明でもあり、それを支える企画七課全員vs特車二課全員であり、当然のことながら、内海vs熊耳の要素も含まれる。
内海と熊耳、2人がそれぞれ育てたパイロットとロボットの決戦。
それを熊耳は敵地で、内海のとなりで見届けることになる。これが彼女の戦いのひとつ。
なぜ最終決戦で、野明&遊馬コンビが復活しないのか
マンガ版全22巻のうち、野明と遊馬のコンビは実は1巻~13巻まで。
13巻途中からは、野明と熊耳のコンビとなり、それは物語の最後まで続きます。
ちなみに最終回では、熊耳の不在により、遊馬が1号機、2号機、両方の指揮を取っていますが、結局最後まで、野明&遊馬という1vs1の関係には戻っていません。
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『パトレイバー』といえば、野明&遊馬コンビというイメージがしますが、実はマンガ版では野明&熊耳コンビもかなり長いのです。
なぜなのか、と言えば、配置換え自体は遊馬の自業自得から生じたものです。
別に熊耳側に理由があったわけではない。ただ、マンガ版がグリフォンとの決着で終わらせたことを考えると、物語の後半から最後まで、熊耳が1号機のバックスであり続けたことは意味があったと思います。
連載当時、実は私は最終決戦のときに「ああ、この緊急時についに野明&遊馬コンビが復活するのか!」と思いながら読んでいました。
篠原重工の実験試作機AVR-0でのグリフォンとの前哨戦。衛星からの情報と管制車による演算処理でのサポートは、長年イングラムを手足にしてきた野明との相性が悪く、敗退します。
「うむ。最新技術の衛星サポートより、遊馬の指揮だな!」と思っていたら、遊馬も捕まり、結局、内海の思惑通り、野明ひとりでの最終決戦となってしまいました。
当時は、あれ?遊馬の見せ場は?コンビ復活は?とか思いましたが、今から思えばこれは正しい。
この段階でも正式な1号機バックスは熊耳武緒であって、彼女は内海とこの戦いを見つめている。
ここで遊馬が指揮を取ると、内海vs熊耳の構造がボケてしまう。
野明をたったひとりで戦わせることで逆に、不在の熊耳や、整備班含め特車二課全員を背負ったイングラムという構図が強調されていると考えます。
内海のとなりで、イングラムの勝利に笑い転げる女
これまでやられっぱなしだった熊耳が、内海を刺すための道具は、ジャックナイフではなく、イングラムによる電磁警棒。
それは、内海とバドのお遊びに公務員が仕事で決着をつけた瞬間でした。
そして大事なことは、この瞬間、内海のとなりにはそれを笑うことができる熊耳がいるのです。
もしこの敗北時に熊耳がいなければ、内海は(内心はともかく)部下たちの手前、余裕のある笑顔でニヤケたまま、軽口でもたたいて、ポジティブに次の行動でも指示したでしょう。
しかし、ただひとり。内海自身が連れてきた熊耳がここに存在することで、それは許されない。
熊耳は、可笑しくてたまらないと笑い転げます。
そもそも、その瞬間に内海のとなりにいることが出来るのは熊耳以外ありえないでしょう。
これは熊耳にしかできない、重要な役割です。多分この瞬間のために彼女はここにいた。
ただしそれには「第二小隊の学級委員」を捨てて、破滅型の愚かな女に見えても、内海のふところへ飛び込ませる必要があった。今はそう思います。
振り返らなくてもジェイクがいる
その後、内海は熊耳らを連れて、海外への逃亡をはかりますが、その寸前でジェイクによって刺されることで物語は終わります。
内海のとなりにいたことで、イングラムによる勝利を見届け、一矢報いた熊耳ですが、今度はかつて愛したであろう男の死をも見届けることになってしまいました。
殺害したジェイクは直後に黒崎によって銃で撃たれ、企画七課の面々は全て逃亡し、行方をくらましたようなので、現場のことを語れるのはおそらくは残された熊耳のみ。
警察による事情聴取や捜査協力なども行われたのではないかと推測されます。
事件の関係者で、警察官とはいえ、内海の死を語るその心中は如何ばかりかと思いますが、その過程で、彼女の中の内海、いやリチャード・王がゆっくりと死んでいったのかも知れません。
その後、休職をするほどにショックな出来事であったには間違いないですが、もし内海が再び熊耳を残して、生死不明で行方をくらましでもしたら、彼女のノドには骨が刺さったままになったでしょう。
オーストラリアで死んだよ、と噂を聞いても、それでは彼女はきっと信じない。
彼女が最後まで内海のとなりにいて、内海の死を目撃し、そしてその死を語ったであろうことは、彼女の中のリチャード・王を埋葬するために必要な儀式だったのかも知れません。
約束された熊耳武緒の帰還
内海というキャラクターの決着については、作者ゆうきまさみの倫理性と共に良く語られるところです。いわゆる光画部的なものへのケリという文脈で。
それと同時に、熊耳武緒という女性に対して、過去の決着と救済を与えているように感じました。
けして「第二小隊の学級委員」を捨て、破滅型の愚かな女に貶めたわけではなく、いわばポジションのためのキャラクターだった彼女に、「チーム物」としての役割を免じて、この後の人生(それは連載終了後で描かれることはない)を生きるためのチャンスを与えたようにも見えます。
それは彼女にとって非常に残酷なものでもあったのですが、時間は彼女の敵ではなく恐らく味方。
彼女がまもなく元気に復帰するであろうことを、最終回に初めて登場した、熊耳の父が教えてくれます。
この、熊耳が近い将来に復帰するであろうという予感が、マンガ版『機動警察パトレイバー』を閉じた世界にせず、連載終了後も続いていく未来があることを感じさせてくれて、私は好きです。
きっと、熊耳が笑顔で職場に戻り、多分そのときにはじめて、後藤隊長は遊馬を1号機専任バックスに戻して、コンビを復活させるのでは?などと勝手に考えたりしています。
それにしても、熊耳さんの父も柔らかそうな笑顔が印象的なメガネの男性でした。
彼女は、この笑顔の父に「面白いよ」と心霊写真などを見せられ、幽霊のトラウマをつくりました。
そのあと、同じように笑顔が印象的なリチャード・王に魅かれ、だまされ、トラウマをつくりました。
ただ父親と内海が違っていたのは、父親は裏表なく心から彼女を愛していたことです。
心霊写真も楽しいことを娘と共有しようと思ってやったこと。もちろん、だますつもりなど毛頭ありません。(でもガチ泣き)
内海も笑顔のまま、ぼくもタケオと喜びを共有したいだけなんだ、とは言うでしょうけどね。
まあ子供の戯言ですけど。
父の前では子供の頃から泣いたり、おびえたりしまくっていたであろう娘を、父は「簡単にへこたれたりしない娘だ」と力強く断言するんですよね。
だから熊耳さんは、彼女を裏表なく愛してくれている家族に支えられて、必ず戻ってくるでしょう。
そしていつの日か「学級委員」を再開した彼女は、メガネの奥に見える笑顔の違いを見抜ける女性になっているかも知れません。なっているといいですね。
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シリーズ記事『機動警察パトレイバー』
第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>
同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。
カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー
発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。
『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061
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太田功は、野明と共に、第二小隊でイングラム二号機に搭乗する。
物語の中心たる第二小隊において、レイバーに乗って戦うことが出来る数少ない男子。
(この箇所、主語が大きかったので、記事の主眼に合わせて修正しました。唯一の男子、でもいいけれど)
基本プロフィールをいつものごとく、Wikipediaから参照しましょう。
警視庁警備部特科車両二課第二小隊員。二号機フォワード(操縦担当)。階級は巡査。岩手県釜石市出身。よく言えば生真面目で正義感の強い熱血漢、裏を返せば、直情径行で猪突猛進なだけの熱血馬鹿。規律重視で融通が利かない性格ゆえに、自分よりも階級や実力が上の相手にはわりと素直に従う一方、同僚隊員(特に遊馬)と衝突することが多いが、危機には勇んで駆けつけようとする仲間思いな心根にはブレがない。漫画版の初期では、特車2課の隊員の中で唯一「正規の教育を受けた警察官」であるという自負からか、いわゆる「予備校出身の即席警官」である他の隊員を、少々見下しているようなフシがあった。
Wikipedia:「太田功」より
体育会系熱血バカではあるが、正義感が強く、それでいて意外とフェミニストでもある。
古き良きロボットアニメであれば、太田が物語の主人公であってもおかしくはない。
別の言い方をすれば、週刊少年サンデーではなく、ジャンプかマガジンに連載していたら、太田が主人公だったかも知れない。
しかし『機動警察パトレイバー』の主人公は、女性主人公・泉野明、男性主人公・篠原遊馬の2人。
太田ではなく、この2人が主人公になるところがこの作品らしい所であり、巧みなところです。
遊馬がレイバーには乗らず(乗れず)、太田がレイバーに乗って戦えるのは、端的に言って太田が「バカ」だからだと私は思います。
「バカ」ゆえの純粋性と幼児性
「バカ」と言っても、知能指数が劣るわけではありません。
体制側のロボットに乗り、正義の名のもとに、その力を振るうことに屈託があるかないかです。
さらにいえば、冗談のような趣味デザインのパトカーロボットに乗って、ロボットアニメの主人公として正義を執行することを、引き受ける覚悟があるかどうか。(そして、それが恥ずかしくないか)
遊馬はお利口さんなので、そのポジションには立ちません。
もちろん、篠原重工(父)の作ったレイバーだということも拒む理由のひとつでしょうが、そもそもそういったややこしい背景が太田には無いのです。
国家のロボットに乗り、正義の名のもとに、悪党を征伐する。できれば銃で。
太田がレイバーに乗る理由はこれです。シンプル。
かくして、悪・即・弾の太田と、イングラム大好きっ子の野明の「バカ」2人が第二小隊のフォワードになりました。
遊馬、進士、山崎の男子3名は、適性以前に考えることが多く、「バカ」ではないので、レイバーには乗れないでしょう。
自分のやりたいことをやりたいように行動する、それができる「バカ」であることは第二小隊のフォワードであるための「RIGHT STUFF(正しい資質)」なのです。
国家をバックにした太田の暴力
体制側で力をふるうことにためらいのない太田は、やたらに銃を撃ちたがり、暴走を続けます。
彼の正義は「バカ」であるがゆえの行動力と共に、純粋性と幼児性に満ちています。
この幼児的な正義には「しつけ」が必要ですが、進士は太田を全く止められません。
太田と同じ男性である進士が止めるには、太田以上の「力」が必要だったでしょう。
恐らくそれ以外に屈服させる方法はありません。
そこで二号機の指揮は熊耳武緒が担当することになりました。
熊耳は実力的にも太田より上なのですが、それも含めて、子供をしつけるお母さんですね。
実力の問題だけではなく、恐らく原理的に、太田は熊耳に勝てないはずです。
今回のパトレイバー企画を一緒に始めたものの、圧倒的に先行しているpsb1981さんは太田について、こう書いていらっしゃいます。
この彼の存在はパトレイバーという作品のテーマの一つを浮かび上がらせるのではないだろうか。それは太田じゃない人間は、どのようにすればレイバー(ロボット)に乗って、正義を執行できるのか、であり、また太田の正義はどのように担保されるのか、だ。
後者の疑問については作者がすぐに答えを提示してくれる。それは太田を指揮するのが熊耳武雄(女性)だということだ。つまり正義(の暴力)を振るう男性を女性がコントロールしているのである。
太田功(カテジナ日記)
http://tentative-psb1981.hatenablog.com/entry/2015/04/04/201258
男の子がロボットに乗ることで社会に関わるというロボットアニメのモデルを考える上で、この太田&熊耳コンビと、役割と性別が逆転している遊馬&野明コンビは良いサンプルになってくれそうです。
全員に対して逆位置で関われるキャラクター
この他に個人的に、太田を面白いと思うのは、第二小隊メンバー全員に対して逆位置に立てるところです。
泉野明に対して
技の1号と力の2号。女性的な1号機に対しての男性的な2号機として。
篠原遊馬に対して
ひねくれて冷めた若者である遊馬に対しての、直情・熱血のケンカ相手として。
文化系キャラと体育会系キャラの対立。
進士幹康に対して
気弱な知性派メガネキャラクターに対しての、強気の肉体派太眉キャラクター。
山崎ひろみに対して
温和で平和主義のひろみちゃんに対しての、好戦的なキャラクター。
レイアウト上、巨体と低い身長の視覚的コントラスト。
熊耳武緒に対して
学級委員に対しての、ガキ大将的なキャラクター。
(ただし熊耳が格上を証明したため、強い者に従う番長ルールで素直に従う)
コンビという意味では、男性が指揮することで女性パイロットに力を仮託するコンピ(野明&遊馬)に対しての、男がロボットで暴力をふるうのを女性が制御するコンビという対比。
このように全てのキャラクターに対して逆位置に立てるのは、太田功だけ。
こう見ると本当に主人公タイプだな、と思いますが、本作で脇役の太田は、他のキャラクターの個性を引き立てるのにかなり貢献しているはずです。
太田がいなければ、第二小隊キャラクター相関図は線の数が少なく、また線が弱々しいものになっていたでしょうね。作品にとって重要なキャラクターです。
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シリーズ記事『機動警察パトレイバー』
第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>
同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。
カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー
発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。
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