今回はTwitterでのネタをベースにした、まとめ記事です。
異なる話題を雑多……バラエティ豊かに取り揃えておりますので、全部読まずとも気になるパートだけ読んで頂ければ結構です。

興味をひかれるような、気になるパートなど無い!……ですって?

もう一度、よく記事を見てください。Dang Dang 気になってきませんか?
修行僧ですら、Dang Dang 気になって「修行してる場合じゃねえ!」とお寺の塀を飛び越えてくるほどであると、東西新聞文化部の記事に書いてあったという夢を先日、見損ねた気がします。
(「バカなの?」って訊けたら、いいのにね……)

ちなみに究極のメニューのひとつである高級スープ、ファッチューチョン(佛跳牆)。
死ぬまでに、ぜひHong Kongあたりで食べてみたいですね。食べた瞬間おいしさのあまり、King Kongのように高層ビルによじ登って、これが好きだと叫びたい。離さない 揺るがない Crazy for soup.

それでは究極のメニューをどうぞ。
(言いたいことは全部言ったので本編スタートです)

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みんなあつまれ!富野アニメ学園


モビルスーツをキャラにして今の深夜アニメっぽくしてみる(企画書)
http://tominotoka.blog.so-net.ne.jp/2014-04-16

いつもお世話になっている坂井哲也さんのこの記事を読んで、頭に浮かんでしまったネタ。

私は「富野アニメ作品自体の擬人化」ということでやってみよう。
ロボットではなく作品の擬人化。とりあえず片っ端から少女化させていき、富野学園に入学させよう。

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新久保だいすけ

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そうなると『機動戦士ガンダム』はモビルスーツ少女ではなく、ファーストお姉様を頂点としたガンダム姉妹ということになるんだろうけど、作品ごと世界が違う方が面白そうなので、そっちに注力しよう。
  • お日様が出てるお昼に元気なダイタン子先輩と、月の光は攻撃のメッセージなザンボッ子先輩。

  • ずっと自作ファンタジー小説を書き続けるダンバイン子ことバイストンウェル子。名前は、石井戸ほとりといったところか。

  • 3日で全て忘れる雑なザブングル子は女の子。名前はジャンフランコ・ゾラ子……いや、素直に考えると青石閃子(あおいしせんこ)みたいな感じかな。ブルーゲイルとブルーストーンと二重にかけて。

  • いや「風か、嵐か、青い閃光」の歌詞と、ザブングルが2機あることを考えれば、風香(ふうか)と嵐香(らんか)の双子にした方がいいのかも知れない。ひとりはツインテールで、ひとりはショートヘアとかになるのかな。

  • エルガイム子は軽音楽部に入るしかないのか?と呼びかけても返事がないけど、優しさが生きる答えならいいのにね。

  • いつも肯定してくれるブレンパワー子と、いつも親や先生から逃げてるキングゲイナ。

  • そして『ジャイアントロボ』におけるビッグファイア様の位置に、3年生徒会長、海野トリトン先輩。

  • 主人公は、富野学園に入学したての新入生男子、レコンギス太。

  • で、毎回、イデオン子のイデ発動オチで終わる。

こんな感じに。

富野作品擬人化アニメ第一話

学校へ走って登校する少年。
レコンギス太「みんな、おっす!オレ、レコンギス太。今日から富野学園の1年生。どんな学園生活になるか楽しみだぜ。おっと遅刻しそうなんだった。急がなきゃ!」
しかし、その先の曲がり角で、少年は女生徒とぶつかってしまう。
レコンギス太「あ、あぶねえ!」
イデオン子「キャ!」

――そのとき、イデが発動した。

<第一話・終>


イデオン子の名前は、そのまま井出温子(いであつこ)とかでいいと思う。
巨大な身長で、自分のルックスにコンプレックスがある地味委員長みたいにするしかないな。
クラスで発生した大騒ぎやケンカをおさめようとするができず「もう、みんな。いい加減にしなさーい!」と大声を上げて、ケンカ両成敗的に全員を因果地平に飛ばす。という大変、雑な処理を得意とする。

まあヒマつぶしとして無理やり語呂合わせの名前を考えたりしてますが、基本的にイデオン子とかのままでいいと思ってるんですけどね。
昔、車マンガの擬人化考えてたときの「頭文字D子」と「よろしくメカドッ子」「シャコタン☆ブギ子」みたいな感じで。

ちなみに末弟レコンギス太は、この名前で出生届出されてますので本名です。ギスギスネーム。

『機動戦士Zガンダム』最強キャラクターは誰か?


ゲーメスト誌でおなじみ格闘ゲームの対戦ダイアグラム。
キャラクター同士の有利不利を数値化した表で、全体の有利不利を集計することでゲーム内でのキャラクター序列も分かる優れもの。ある世代には大変なじみ深いものであるはずです。
パッと見には数字でびっしり埋まった表でしかないが、ニヤニヤ眺めて楽しめたりします。

詳細は、Wikipedia:対戦ダイアグラム でもご覧ください。

身近なダイアグラム―User‐Friendly Diagrams魅力的で親しみやすいグラフ・地図・チャート・図説・表組を特集身近なダイアグラム―User‐Friendly Diagrams魅力的で親しみやすいグラフ・地図・チャート・図説・表組を特集
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昔、この対戦ダイアグラムを『機動戦士Zガンダム』の登場人物で作成したことがあります。
もちろんZガンダムの対戦ゲームなど当時存在していないので、あくまでキャラクターを使った遊びに過ぎませんが、友人達と酒を飲みながら、あーだこーだ言いながら適当に作り、酒の肴としては楽しめました。

ただキャラクター選抜は無茶苦茶でしたね。確かメズーン・メックスとかいたし。
メックス君とハマーンの対戦でどっちが有利不利とか、完全に謎ですよ。空手補正がどう影響するかを検討するしかないよね。

このように、ありえないキャラ同士の対戦パターンも続出するため、その場のノリと適当なさじ加減で、各対戦の有利不利を決定していきました。

そして表が完成し、ポイントを集計。
はたして「Zガンダム対戦ダイアグラム」での最強キャラは誰なのか?ハマーン?シロッコ?
ところが総合ランク1位には、作成した我々にも意外なキャラクターが浮かび上がった。

それはアナハイム・エレクトロニクス会長にして、エゥーゴのスポンサー。
メラニー・ヒュー・カーバイン会長、その人だった。

「メラニー・ヒュー・カーバイン会長ちょうつえー」と当時、友人たちと感服し、そして納得した。

お前らのさじ加減ひとつやないか!と言われそうですが、無意識(適当)に採点した結果がこれであることこそが重要で、やはり資本家。資本家こそが最強キャラですよ。

昔すぎて作成した表なんて残っていませんが、やっぱりエゥーゴキャラ全員との対戦全て有利というのが強キャラの所以か。
会長に対抗できそうなキャラであるジャミトフはその点、身内のシロッコに刺されとるのがランクを下げる要因となっています。

ちなみに我らがクワトロ大尉はかなりの弱キャラだったと思う。
有利な対戦があんまり無いというか、各方面から殴られすぎ、失敗しすぎ、裏切られすぎ、その年齢でノースリーブ着すぎ、正体バレバレなのにしらばっくれすぎ、サボテンが花をつけすぎ、大気圏突入に余裕見せようとして余裕なさすぎ、キュベレイに密着してアムロの真似してみたけど惨殺されすぎ、などの理由により、ランクはかなり下だった気がします。

当時は劇場版である『新約Zガンダム』は存在してませんでしたが、ケーキ食べ損ね、セクハラ疑惑なども追加され、もうコイン入れた瞬間にゲームオーバーになるレベルで弱体化する恐れがあります。

この対戦ダイアグラム遊び。
富野アニメの他作品、例えば『F91』や『Vガンダム』あたりでやってみるのも面白いと思います。
『イデオン』対戦ダイアグラムも多分面白いな。キャラランクは当然、1位がイデで、2位がメシア、3位がパイパー・ルウと思いきや、恐らく1位はイデ発動のタイミングすら左右するスポンサー……とかいうと、富野アニメ全部のダイアグラムが狂うので無し。使用禁止キャラ。(そもそもキャラじゃない)

『ガールズ&パンツァー』の情報コントロール


ハートフルタンクストーリーこと『ガールズ&パンツァー』。
本放送で楽しみましたが、BSで再放送しており、久しぶりに最終回までを再見しました。

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改めて思うのは、情報のコントロールが見事だなあ、ということです。

私はミリタリー知識などが全然ないので、軍事的なことや戦車については全然分かりません。
逆に全然分からないからこそ、戦車とそれを使った架空のスポーツ「戦車道」について観客にどう情報を与えるか、という点がこの作品を最も評価するポイントになります。

例えば、この作品ではスポーツ系の作品でよくみる、実況&解説を置いていません。
他校のライバルたちにコメントさせたりはしていますが、便利に使えるはずの公式実況と解説者を使っていませんし、そもそも説明用のリアクションも抑えめになっていると思います。

例えば私が『ガールズ&パンツァー』みたいなアニメを想定するとしたら恐らく、実況&解説を置く欲望にかられるでしょう。

私は戦車だけでなく麻雀も知らない人間ですが、そんな私が『咲-Saki-』を楽しめているのは、公式実況や応援も含めたコメント、プレイヤーたちの豊かなリアクション、エフェクトなどの演出の力が大きいと思います。

私は戦車が分からない。しかもその戦車を使って、みんなの知らない架空のスポーツをでっち上げないといけない。知らない人間だからこそ、余計に(安易に)その必要性を感じてしまうはずです。

それでも『ガールズ&パンツァー』は便利な実況&解説は使わず、無知な私に十分に戦車と戦車道の魅力を伝えてくれました。

戦車の見た目に関するコントロール


『ガールズ&パンツァー』は作品の性質上、大量のキャラクターが登場します。
しかし、生徒会チームとか歴女チーム、バレー部チームなど戦車単位で1つのキャラクターになるように設定されていましたので、各キャラクターを個別認識しなくて良いようにしていました。

ただ問題は戦車そのものでして。
私は乗用車の車種も全然違いが分からないタイプで、戦車も正直、何が何だか見分けが全くつかない。
要するに、ガンダムとシャアザクとザクぐらい見た目が違ってないと、分からないような人間なわけです。

それに対して、実況アナウンスを使ったり、カットインを使ったり、本編でも危ないと言われた戦車から体を乗り出す、などいくつか方法がありますが、『ガールズ&パンツァー』は戦車自体も改造しています。

初期の話数で、戦車をピンクや金ピカにしたり派手なカラーリングにするだけでなく、「バレー部」とペイントしたり、六文銭の旗さしたり、ミリタリー好きの方が顔をしかめるような改造を施していました。

それについては、劇中の戦車マニアである秋山殿に「こんな改造するなんて!あんまりですよねえ?」と抗議を代弁させています。しかし、強豪・黒森峰女学園ではありえない改造戦車を見た西住隊長が「JKデコ戦車」を肯定します。

西住みほ「戦車をこんな風にしちゃうなんて……考えられないけど、なんか楽しいね。戦車で楽しいなんて思ったの初めて」


「JKデコ戦車」は、はっきりいえば私のような戦車の見分けもつかない視聴者のために行った改造ですが、これを秋山殿に嘆かせた上で、西住隊長にとって黒森峰とは違う戦車道を発見する初期のきっかけとして肯定的に処理しています。

これで戦車の違いが認識できるようになりました。めでたしめでたし。
とはなりません。戦車のキャラクターを目一杯立てたあと、聖グロリアーナ女学院との練習試合で、旗上げてたら位置がバレるよね、という改造のデメリットによる撃破シーンを入れた上で、本大会では地味なカラーに戻しています。

しかし初期の話数から段階的な教育が施された結果、最終的には私でも地味なカラーの戦車が個別認識できるようになりました。先に書いたように私は自動車の区別もつかない人間なので、自分でも驚きました。

アニメらしい、または主人公チームらしい派手なカラーの戦車のままにしておかないのが面白いところです。

例えるなら、女の子がたくさん出てくるアニメで、ピンクやブルーなど色とりどりの髪の色でキャラクターデザインしておく。で、物語が進行して、キャラクターが立ち、視聴者に認知されたら、全員黒髪に戻すみたいな手法でしょうか。
つまり、作り手としては髪の色でなく、やっぱり人間そのもので見分けるようになって欲しい。
でも、それには視聴者へのキャラクター認知が達成できている、という自信が必要なはずです。
そうでなくては、わざわざ髪の色を分かりやすくしたあと、さらにわざわざ戻す意味がない。
私個人の体験を言えば、先に書いたようにこの試みは成功していると思います。

戦車道のルールとジャッジ


ちなみに戦車道というスポーツについても、まず校内での小規模練習試合。
その後、聖グロリアーナ女学院との5vs5の練習試合。
ここまでは、相手の戦車を全滅させた方が勝ちという分かりやすい「殲滅戦」。
その上で本大会では、1台のフラッグ車を決めて、それを撃破すれば勝ちという、駆け引きや戦略が大事になる「フラッグ戦」となっています。

公式試合では観客用の大型プロジェクタで戦場俯瞰図は出してましたね。
あれがほぼ唯一の、大会運営側が提供する情報でしょうか。

ジャッジについても白旗が出るから説明いらずですし、逆に言えばアナウンスなどがなく、あれだけが判断材料なので、見る方は着弾したときにぐっと注目して、白旗が上がるかどうかを見るんですよね。まさしくスポーツ観戦っぽく。
特にプラウダ戦や黒森峰戦のようなギリギリの決着では、白旗出るまでの演出的なタメが、審判団による映像確認や協議の末という感じでちょっと面白かったです。
(剣道モノでの、審判「一本!」「浅い!」「浅い!」のような)

もちろん時代的にも実況&解説役は視聴者に任せます、という所でもあるでしょうけどね。
実際、私ではよく分からないポイントがコメント付き動画や考察ブログで解消されたりもしています。
ただ、戦車道は戦争ではなく、架空の特殊なスポーツですからね。スポーツらしくオフィシャルによる正しい実況&解説を入れたくなる欲望はあったとは思うんですよね。
でも入れなかったのはすごいな、と個人的には思います。

もし『ガールズ&パンツァー』でひとつ、ちゃんとした記事書くとしたら、ミリタリー知識が全くないので、やっぱりこういう情報のコントロールについてになるかな、と思います。
ここに書いたことで概要は出きってますが、概要でしかないので、各話検証をしながら、全体を俯瞰する感じになるでしょうか。興味がある方はリクエストください(無いと思うので書かなくて済むと思うけど)。

『ウィッチクラフトワークス』のボンクラ☆アクティビティ


録画したままの『キルラキル』後半10話ぐらいを最終話まで一気に見ました。
後半はだいたい「セーラー服反逆同盟」というワードで説明したら何とかなる感じ。
(作品としての共通性ではなくあくまでワードから来る語感で)。
「少女コマンドーIZUMI」要素もないことないけど……いや、無いな。無いです。

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最後は地球レベル、宇宙レベルまで行ってしまうのですが、毎回、宇宙までスケールアップしていくのは脚本の中島かずきさんの特性(お約束)とTwitterで教えて頂きました。
ただ、この作品は宇宙規模までスケール上げないといけないのかな、としみじみ思ったのも確かです。

もちろん作品テンションがそれを許さないというのもあるけど、絵面(イメージ)が逆に限定されてしまう気がします。
特に最終回。ハイパーインフレでスケールアップするのは楽しいけれど、ゴールはどうしてもどこかで見た景色になってしまうかも知れないな、と感じました。

単に初期のドヤ街学園ものが好きだったということもあるでしょう。捨てゼリフで逃げて、また来る流子とか。第四話のような住民に襲われながら登校するだけの、どうでもいい単発のボンクラ話がもっとあると思っていたので。
これは私の好みによる勝手な願望にすぎませんので、作品に対する不満というわけではありません。

サタデー・ナイト・ボンクラーズ


その流れでいえば『ガールズ&パンツァー』の水島努監督による『ウィッチクラフトワークス』は、「街ひとつのスケールを舞台にしつつ、登場人物が全員ボンクラ」という楽しい作品でした。

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内なる力を持つ主人公・多華宮君を巡って、魔女たちが争い合うような作品なんですが、登場人物たちが見事に全員ボンクラ。だから、敵味方が同じ街、同じ学校で普通に同居して、生活できる。

いわゆる「海外の反応」系サイトで、この作品の感想を見た時に、海外の方が「誰か、一体誰が敵で味方で、誰と戦えばいいのか教えてくれ」と言っていて、笑ってしまいました。

確かに、主人公の自宅に異なる派閥の魔女が同居生活したり、敵対する魔女と組んで、味方である理事長(魔女)と戦ったり、暗躍する魔女とその理事長が敵対しつつも友達だったり、困惑するような状態がたくさん発生している。
敵味方を明快に分けて、敵を倒さないと物語が進行しないタイプの作品に思考が偏ると特に困惑するかも知れない。

海外の方の気持ちも分かりますが、私はこの枠組み、結構好みなんですよね。
昔、物語の「敵」について「システム」「自分」「隣人」の3つで整理することを考えていた時期があるけれど、『ウィッチクラフトワークス』はこの3つが上手く当てはまる。敵対する人たちも隣人で、一緒に暮らしていく。

ただ、敵と共生していくというのを、緊張のあるギスギスパターン以外でどう上手く処理するのがいいんだろう?と思っていたんだけど、『ウィッチクラフトワークス』は「登場人物全員をボンクラにする」ことで解決する、というパターンを教えてくれた。

『ドラゴンボール』にならないためには、舞台をペンギン村だけにして、ペンギン村の村民のみをキャラクターにすればいい、という感じだろうか。
それならば、大いなる力を秘めた孫悟空も、それを発揮することなく、ボンクラたちと楽しく暮らすだけになるかも知れない。

『キルラキル』だと、満艦飾マコが全てを無視できるボンクラでしたが、敵味方がはっきりしている作品なので、どうしても特殊なジョーカー扱いでした。
『ウィッチクラフトワークス』では全員がボンクラです。
主人公・多華宮君もそうですし、多華宮君を守る最強のチート魔女である火々里さんですらボンクラですからね。平等なボンクラワールドですよ。

だから、この作品では誰もがボンクラシーンの主役になれる。
特定のコメディリリーフとか、ひどい目に合うキャラ、バカなことをするキャラに業務委託するのではなく、画面に映るメインでもサブでも、強くても弱くても、どのキャラクターでもボンクラシーンの展開が可能になっています。

ひとりだけボンクラではない、真面目なウィークエンドさん


さて、一応敵対していて毎回バトルが発生するものの、全員アホだとアホすぎて決定的な戦争が起きない。
そのため、アニメの終盤では、根が真面目で用意周到の努力家魔女ウィークエンドさんがラスボス役として登場します。(原作はまだ連載中です)
彼女はこれまでの魔女と違いボス役をきちんと演じて、街を大危機に陥れるが、全員ボンクラなところに真面目な努力家が1人だけ混ざると、当然かわいそうなことにしかならない。

ウィークエンドさんはあえなく敗退しますが、何年もかけて作戦を準備した彼女がボンクラ共の気まぐれで敗れるさまはもはやコメディ。
1人ボンクラではないがゆえに、逆にボンクラに見えてしまうという悲劇、いや喜劇か。
全員がべろべろに酔っているパーティで、ひとりだけシラフな人間が右往左往する様がコメディであるように。

先ほどから「ボンクラ」という雑な言葉を使っていますが、バトルは毎回発生するが決定的なことを回避する、という意味で、キャラクターのボンクラさというか鷹揚さ、適当さは結構大事なことだと思っていて。

例えば、私は子供時代にケンカして別れた相手でも、次の日学校へ行くと気にせず話しかけていました。
これは私が優しく寛大な人間ということではないのです。単に昨日までの経緯を忘れていて、思わず話しかけてしまうだけなのです。
話しかけたあとで「あ、そういえばケンカしてたな」と、相手のリアクションで気づくこともありました。
つまりボンクラです。ケンカしてたなどの因縁が面倒になって、それより昨日見たTVの話がしたくなるのです。

経緯をきっちり覚えているタイプの友人からは、私きっかけで仲直りが出来るので良いとしつつも「こっちはきっちり覚えているのに、そういうB型的な適当でおおざっぱなところがイヤなんだ!」とDISられたりもしました。
B型は関係ないだろう、と思いつつも、でもこういうボンクラがいないとケンカ状態が長く続く、というのはあるんだろうな、とは思います。

ウィークエンドさんも敗北した後で、懲りずに何度でも繰り返すと宣言しておりましたが、真面目で努力家なので多分、きっちり覚えており、前回の反省を活かして、作戦をまた綿密に立てるんでしょう。
主人公・多華宮君はそれに対して、もしそうだとしても自分も何度も同じことをすると宣言していました。
でも、多華宮君はボンクラなので多分日常の中で忘れるでしょう。
許すでなく忘れる、というのは、ボンクラだからこそ発生する道です。

もちろん、包丁で刺された多華宮君と違って、私はあくまでもたわいもないケンカでの話ですが、相手を「許そう」とするのと「忘れる」というのは、結果は同じでも違いがあると思っています。
ていうか、私は単に「許さない」的な感情の維持が全然続かず、すぐに「どうでもいい」状態になるだけなんですけどね。伍子胥にはなれません。
ケンカでの怒りを忘れるのは悪いことだと思わないけど、覚えておかないといけないことも忘れるからな。
きっちり覚えたまま忘れないタイプの人は、しんどそうだけど感情の維持という意味で、すごいなと素直に思います。

……ええと、何の話をしてたんでしたっけ。(もう覚えてない)
そうそう『ウィッチクラフトワークス』は原作もアニメも楽しいので、宜しければボンクラ共のカーニバルをぜひ体験してみてください。
そして、その結果「自分にはこの作品は合わないな/楽しめないな」とあなたが思ったとしても、私は許しを請おうとは思いません。
ただ、忘れて下さい。忘却こそがこの世を平和にします。

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2013年は今日で終ります。

ブログを5記事 ご覧下さい。




ロボットアニメ第一話で、少年は子宮から出てロボットへ駆け出す


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母から旅立つためのG戦場シェルタードア <『機動戦士ガンダム』にみるロボットアニメ第一話の始め方>

ロボットアニメという虚構性の高いフィクションでは、ただロボットが存在しているだけでは、ロボットアニメとして成立しません。
『機動戦士ガンダム』第一話を改めて見直しながら、難しいロボットアニメ第一話の三要素を考えていこう、という記事。

『ZZ』は正直「ハマーンいじり」が全然足らないと思う


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空虚なハマーン・カーンを救うことは可能か<『機動戦士ガンダムZZ』感想戦>

Twitterでの『ZZ』語りを受けて、ツイートしたものを追加・修正した記事。
ハマーン・カーンのキャラクターについてと、彼女を救済する可能性について検討しています。「救済」というものがどういう意味を指すかは、ぜひ記事をご覧ください。
大筋はツイート時と変わっていませんが、かなり加筆・修正(脱線ともいう)して、ブログ記事として仕立て直しています。関連してぜひ読んでほしい、ツイートまとめ、ブログ記事へのリンク付き。

『ZZ』については、過去にいくつか書いた記事がありますので、順番に読んでいただくと、問題意識とどう整理したかの流れが分かりやすいかも知れません。

『ZZ』記事(1)
だから少女は、毎度コントロールされる。<富野アニメ 洗脳少女の系譜>

『ZZ』記事(2)
【2011年記事まとめ】好きあう真似事や傷を舐めあう道化芝居でもいいじゃない。だってにんげんだもの。

『ZZ』記事(3)
僕達は分かり合えないから、それを分かり合う。<『機動戦士ガンダム』シャアとハマーンのニュータイプ因果論>

キルラキル キねばキラレる何事も、キルは服のキレぬなりけり


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モブらはみんな生きている<『キルラキル』からはじまるモブキャラクター話>

『キルラキル』の背景をにぎやかす、本能寺学園のモブ生徒たちを中心に、マンガやアニメのモブキャラクター話。
いちばん書きたかったのは『宇宙英雄物語』のパートだと思う。

仕事できる魔王 それが 彼女の好み


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都会では、バイトする魔王が増えている<『はたらく魔王さま!』第一話の問題は今日の雨、傘がない>

『はたらく魔王さま!』第一話で引っかかりを覚えた、魔王から勇者への「傘渡し」のシーンについて。
第一話の難しさの話として、このアニメ見てなくても分かるような記事にしてますので、ぜひどうぞ。

ゲーム系のネタ・アイデアなど


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さあ、行こうぜ!「丘の向こう側」へ<『まおゆう魔王勇者』と『聖戦士ダンバイン』の世界干渉>

アニメ『まおゆう魔王勇者』の話……なんですけど、『まおゆう』の話全然してないね。
なんだろうねこれ(おまゆう)。
後半は、バイストン・ウェルをネタにしながら、異世界への干渉方法についてあれこれ。散漫に。



2013年の記事は以上です。

今年は、年末ギリギリにハマーン記事にエネルギーを注いだ瀬戸際の魔術師だったため、一年まとめ記事に注ぐ時間がありません。よって「ごっつええ感じ」最終回風にシンプルにお送り致しました。
記事タイトル後半は、皆さん当然お分かりのとおり『心はロンリー気持ちは「…」』です。
暦の上ではディセンバー。でもハートは80年代。

去年同様、記事数が少ないので、ボリューム増やすために2013年アニメのひとくち感想をお送りしようと思っていましたが、それも中止です。
ひとことだけ言うなら、『ゴールデンタイム』のキャンパスライフより、『のんのんびより』のにゃんぱすライフの方が私には快適だった、ということぐらいでしょうか。

あ、あれってハクビシン?的なことをいえば、今年のGWに実家に帰ったときのこと。
実家の父は、定年後の趣味として農業を始めて、野菜の世話を毎日してるわけですが、それを食べに来るハクビシンなどの攻撃から守るため、色んな対策を講じて日夜戦っている、と母に聞きました。
なにそれ?面白そうなソーシャル育成ゲームしてるなー、と思いました。
場合によっては、ホームセンターなどでの課金が必要らしい。
そんな農業びより。

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今年はここまで。
生きているからつらいんだ!生きているから!
キ・テ・イ・ル、といえば現在、大人気放送中のアニメーション作品『キルラキル』。
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私も毎週を楽しんでいるわけですが、特に好きなシーンはこれですかね。

とある病院の病室で、ベッドに横たわる少年と付き添いの母。

まさお「……ママ、どうせ僕、死ぬんだろ?」
母「怒りますよ、そんなこと言ってると!そう今日はね、グランドチャンピオンさんがお見舞いに来てくれるのよ」

そこへSPを伴って、ツカツカと病室に入ってくるひとりの少女。

少女「いやー、まさお君、神衣着用者、鬼龍院 皐月だよ」
まさお「あなたがグランドチャンピオン?」
少女「グラ……神衣着用者、鬼龍院 皐月だよ」
まさお「神衣って、極制服よりすごいの?」
皐月「ははははは。極制服よりすごいかだって?」
皐月「極制服は少しの努力で誰でも着られるんだよ。神衣というのはね、一つ星を着てー、二つ星を着てー、三つ星を着てー、天下に乳房を晒しても恥ずかしくない人間だけが着れるんだよ」

まさお「僕もいつか神衣が着れるかな?」
皐月「着、続ければね」

サラサラと色紙を書く鬼龍院 皐月。

皐月「着られる前に、着ろ」
皐月「人間はね、着る人間と着られる人間の2種類に分かれるんだよ。君には『着られたい男No.1』になって欲しいな」

書いた色紙を少年に渡す鬼龍院 皐月。

皐月「じゃあ鬼龍院 皐月は行くからね」

病室を出て行く鬼龍院 皐月。廊下から聴こえる声がだんだん小さくなっていく。

皐月「右足着てー、左足着てー、右手着てー、左手着てー、股間着てー、着続けるんだよ……」


こんなシーンなかったって?そんな瑣末なことにこだわっていたら大きなことは成し遂げられません。燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんやですよ。そら陳勝・呉広も乱起こすわ。

さて『キルラキル』本編については、今はただ楽しむことにして、今回は背景でにぎやかしを務めるモブキャラクター(群衆)のおはなし。

『キルラキル』本能字学園のモブたち


『キルラキル』に登場するモブ、その中でも特に物語の舞台となる本能字学園の一般生徒たち。
彼らは名もなく、個別認識もできず、背景として後ろをにぎやかす存在に過ぎません。

でも私はなぜか『キルラキル』のモブたちに懐かしさを覚えます。
彼らは自分たちがモブであることを自覚しながら、主人公たちが繰り広げるドラマをいちばん近くて面白いポジション(視聴者よりもエロい角度、とも言えるかも知れないが)で見ようとしている。
要するに物語の本筋とほぼ無関係に、モブが欲望を持っており、貪欲に行動しているんですよね。
もちろん、モブがそんなことをしたところでストーリーへの影響は全くないのだけれど、だからこそ好き放題やっているともいえる。

そんな『キルラキル』のモブ見て、個人的な懐かしさを覚えるのはなぜなのか?
それは、私の思春期に大きな影響を与えたマンガ『宇宙英雄物語』のモブたちを連想するからです。

『宇宙英雄物語』私立恒星高校のモブたち


『宇宙英雄物語』は、『キャプテン・フューチャー』をはじめとしてSFのオマージュ、パロディ盛りだくさんのスペースオペラ。

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モブが印象的だったのは特に物語前半、私立恒星高校を舞台としたドタバタコメディのころ。
『キルラキル』での本能字学園の生徒と同じく、恒星高の一般生徒たちがモブを務めます。
彼らは主人公たちのドラマや戦いを、まるで祭りや芝居でも見物するように楽しんでいて、私は当時、主人公ではなく、このモブたちに感情移入し憧れを抱いていた。

Wikipediaの『宇宙英雄物語』ページ内「恒星高校」の項目が、モブたちをよく紹介していたので、これを引用してみましょう。

私立恒星高校(しりつこうせいこうこう)

グリフィス財団旗下の私立学校法人。十字や咲美達の通う高校で物語前半の舞台。住所は東京都中野区茅古町1-1-1。グラウンドに星詠み号が封印されている。ロジャーが創立した、海外に三つの分校を持ち大学並の施設を所持する。
全校生徒、全教員がハイテンションでお祭り好き。騒動があれば報道部や映画研究会が駆けつけ、話が脱線すると演劇部が盛り上げ、面白いという理由で十字に付きまとい、女生徒たちは「物語はヒロインを交えて盛り上がるべき」としてヒロインの座を射止めるべく十字にアプローチをかけ、更に戦闘時にはサバイバル研究会が戦術を担当する。


彼らは物語をいちばん近くて面白い位置で見ることについて貪欲だ。必要とあれば(あくまでモブとしてだが)介入も辞さない。
引用内にもあるように、主人公たちが本筋から脱線しそうになったら演劇部女子が軌道修正したりしていたが、あれも物語進行上の要請というより、観客(モブ)としてより面白いものを見るためだったように私は感じていた。

つまり物語への奉仕というより、あくまでモブたちが面白がるための欲望ベースによる介入。
結果、彼らは物語をいちばん近くて面白い位置で見ていたと思う。読者である私よりも。

だから私は当時、モブになりたかった。より正確に言えば、モブの位置で物語を眺めて、背景で物語に参加したかった。時には爆発に巻き込まれて吹っ飛ぶ危険性があるにしても。
『お笑いウルトラクイズ』のにぎやかし参加芸人みたいなものかも知れない。決してメインにはなれなくても、米軍バズーカが飛んでくる○か☓の前にはいたいし、宴会場でのプロレスコーナーでダブル猪木が降臨するのを目の当たりにはしたい。

人によってはモブでもいいから入りたい学校が、例えば「友引高校」だったり「蓬莱学園」だったり「麻帆良学園」だったりするかも知れません。この辺りは、世代だったり好みだったりするでしょうね。

余談ですが、マンガ雑誌購読歴として思春期にコミックコンプ(『宇宙英雄物語』連載誌)を買うルートに入ったことがのちの自分の方向性を決定的にしたと、今から考えると思います。
これは冗談ではなく、そこのセーブポイントからやり直して、他の雑誌を買ってたりすれば、また違う人生があったはず。それが良いか悪いかは別として。

ジェラシーが止まらない。


『キルラキル』の本能字学園は、モブ生徒になるにしても過酷すぎる環境ではありますが、それでもモブたちは、主人公たちが進めている本筋のドラマとは全然関係なく、モブとしての欲望や面白さを自分勝手に追求しているところが良いですね。

物語に奉仕する気が全然ない結果、エロスの塊のようなモブも多くて、好印象を抱かない方もいるかも知れません。実際『キルラキル』モブに対して否定的な発言もネットでは見受けられたましたが、画面を見てる視聴者より、画面内の名もないモブの方が絶対楽しんでるはずなんです。むしろそこに嫉妬すべき。

少なくとも私は嫉妬を感じますね。やつらが私より楽しんでいるさまを見て感じるのは嫌悪感ではなく嫉妬。ジェラシックパーク開園です。

『あしたのジョー』のホセ戦でドヤ街の子供たちが試合を見に来ることができなかったように、『キルラキル』も今後の展開によっては、のんきなモブなど出る余地も無い展開になるかも知れません。個人的には学園と生徒モブたちに何らかの出番があればな、とは思いますが。

純粋に作業コスト的な意味でもモブ大活躍が無くなるかも知れないけれど、できれば背景で爆発に巻き込まれて彼方へ吹っ飛んで欲しいと願ってやまない今日この頃です。

呼びかけよう名前を すばらしい名前を


『宇宙英雄物語』のモブといえば、もうひとつ大好きな場面がありました。
主人公に「吉田」と名前を呼ばれた友人役のモブキャラが「そうか、俺、吉田かぁ」と感動するシーン。
名もない彼はこれにより「吉田」というキャラクターなったわけです。

私たちは全員が、一人ずつひとつのビュリホーネーム(ゴダイゴ)を持っているわけですが、物語世界のキャラクターは必要でなければ名前が与えられない。
しかし主人公が「吉田」と、名前を呼んだ瞬間に、そのキャラクターは「吉田」であることが確定します。まさに、名前それは燃える生命(いのち)。

私の大好きなマンガ家のひとりである那州雪絵は昔、キャラクターを命名する時に「そのキャラクターが他の誰かに名前を呼ばれる(イメージ)からつけることがある」みたいなことを言っていました。
創作手法としてなるほどな、と思った覚えがありますが、これも誰かに名前を呼ばれることで、名前持ちの個別キャラクターとして確定されるパターンと考えることもできますね。

量子将棋のプレイヤーではないですが、主人公が行動することによって物語世界が確定していく。
モブキャラに名前を付けて呼んだことで「名前付き脇役」として確定されましたが、さらに「お前確か野球部だったよな?」と言えば、彼はその瞬間、野球が得意となるでしょう。
「お前んち、ラーメン屋だよな?食べに行こうぜ」と言えば、ラーメン屋の実家と店主である両親が生成されるはずです。

で、この「主人公が物語世界を生成する」というネタを考えていくと、これが結局『涼宮ハルヒの憂鬱』なんだということに気づき、基本構造の優秀さを改めて思い知ったりするのでした。

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)
(2003/06)
谷川 流

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『彼氏彼女の事情』のモノクロモブ


アニメのモブ全体を俯瞰して語れるわけではないので、あくまで個人的に印象に残っているモブが出てくる作品をいくつか。
贅沢で上手なジブリのモブとかではなく、むしろ演出処理上の理由で(あえて)いびつな処理をしているようなものの方が印象に残りますね。

『彼氏彼女の事情』がアニメになったときには、教室内のクラスメイト(モブ)がモノクロ処理されていたのが印象に残っています。手元に映像がないのでまさに記憶の印象だけなのですが。

彼氏彼女の事情 VOL.1 [DVD]彼氏彼女の事情 VOL.1 [DVD]
(2005/02/09)
榎本温子、鈴木千尋 他

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モノクロモブは、純粋に省力化だったり、このアニメのテーマのひとつである、コミックっぽさを表現する手法のひとつだったりするのでしょうが、何より恋愛が大きなウェイトを占める作品として効果的だったように思えます。

つまり少女マンガ世界では「わたし」と「あなた」は華やかに色づき、それ以外はグレースケールでいいんだな、と、背景に溶けこむモノクロモブ学生だった私は感心したりしました。

他の作品、特に少女マンガ原作の作品では他にも同手法がありそうですが、私はそれらの作品をあまり見ておらず、『彼氏彼女の事情』も正直、庵野監督&ガイナックスだから見たというぐらいなので、どれくらい普遍的な処理なのかは分からないですが。あくまで自分にとって印象的だったのが、カレカノだったということですね。

『輪るピングドラム』のピクトグラムモブ


『輪るピングドラム』ではメインキャラクター達以外のモブたちが、ピクトグラムの域まで抽象化されていました。

Penguindrum Collection 1 (輪るピングドラム) [第1話‐12話] [Blu-ray] [Import]Penguindrum Collection 1 (輪るピングドラム) [第1話‐12話] [Blu-ray] [Import]
(2012/12/31)
Penguin Drum

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シーンの都合上、人間の姿でなければならない場合は、ちゃんと人間のキャラクターにしていましたので、あくまで演出上の処理としての記号、ですね。

これを見た時に思い出したのは、学生時代の友人でした。
彼は一緒に街を歩いているときなどに「今、通り過ぎた女の子、かわいかったな!」みたいなことをよく言っていました。
下手すると一瞬で通り過ぎる車の中の女の子にまでチェックを入れていたりして、全然、他人の顔を見ておらず、覚えてもいない私は「よく見てるなそんなとこまで」と、ある種、感心していたのでした。

彼が周囲をそこまで見ていられるのは、もちろん単に「女の子だいすき!」ということもあるだろうけど、通り過ぎる他人と自分の人生が無関係だと思っていないんだな、と私は感じました。
行き交う人々は赤の他人に過ぎませんが、例えば、女の子に話しかければ一緒にお茶に行けるかも知れないし、居酒屋でとなりのサラリーマンと意気投合するかも知れないし、路地のネコと一緒に散歩するかも知れない。

私はそういう世界認識ができない人間なので、行き交う人々の顔は目に映っていると思うけれど、自分に全く関係がないものとして脳が処理をせず、何も覚えていない。
極端にいえば『輪るピングドラム』のピクトグラムモブのような処理を脳内でしている。すれちがう人の存在自体は認識していて避けて歩くけれども、顔がない。

もちろん雑踏で全ての人を個別認識するような人はおらず、みんな適度に解像度を落としていると思うけど、それこそ程度問題で、自分は抽象化がひどいな、と感じた。
少なくとも社交的だったこの友人は、自分のように知り合い以外を全てをピクトグラムにはしていなかったのだろうと思う。

『輪るピングドラム』は物語上選ばれた演出なので何も問題はありませんが、私のこれは自分が無意識に選択した世界の見え方で、閉鎖性や非社交的なところがよく出ていると思う。今は多少解像度が上がったかな?

そんな記憶もあって、この作品のピクトグラムモブが、とても印象に残ったのかも知れないですね。
せっかく記号化されているのですから、物語を進行するメインキャラクターたちに集中すればいいものを、なぜかピクトグラムのモブに関心が向いてしまうという。

みな自分自身の物語の主役である一方、誰かにとっては単なる背景のモブであったりします。
フィクションのモブが何らかの意図を持って演出されているのと同じように、あなたの世界の見え方も脳内が演出処理した結果なのかも知れません。

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